世の中にはさ、2種類の天才がいると思うんだよ。よくいう天才は音楽とか絵とかスポーツとか、何かの能力がずば抜けているやつのことでしょ。でもさあ、努力できるやつも天才って呼ぶべきじゃない?努力できない奴なんてそこら中にいるじゃん。 俺がどっちかって?どっちでもねえよ。え?そこはどっちかって言うとこだろって?いや違うんだよ。もうわかってるだろ。俺は俗に言う器用貧乏ってやつでよ。ある程度のところまではなんとなくでできちゃうけど、それ以上は本物の天才に越されちゃうんだよ。 何
魔王が復活した。魔王は遥か昔に討伐されたと口伝されてきたが、実は封印されていただけだったようだ。 最初は封印が解けたばかりで、力を思うように振るえていなかったようだった。しかし、徐々に力を取り戻していく魔王に打ち勝つため、多くの勇者パーティーが魔王討伐に出かけたが、討ち倒せずに逃げ帰るか殺されるかした。 そんな中、ある勇者は討伐隊を引き連れて魔王城に向かっていた。彼はどこまでも真っ直ぐで、正義感の強い人だった。まさに主人公キャラである。 「魔王が国を荒らしているん
技術が発展して、人間が働かなくていい時代になった。生活に必要なものの生産は全てロボットが行い、サービスも全て人型ロボットが担った。政治や法での統治もAIに一任するようになった。お金は平等に支給される。だから働く必要はない。 これ以上発展する必要がないところまで発展し切った技術を、さらに発展させようとする人はいなかった。 芸術家を名乗る人間のみがあたかも「働いている」かのような社会になってしまった。音楽家、画家、小説家、漫画家…。エンタメを提供する配信者なんかもその部
僕の住んでいる街は色々とおかしい。 お兄ちゃんがいる子は、必ず忘れ物をしてお兄ちゃんが自転車で追いかけてきてくれるし、お姉ちゃんがいる子は、姉妹で別方向に池の周りをぐるぐる回って何回顔を合わせるか数えている。 ご近所さんの中にはウサギの番の数を数える人がいたり、パイナップルを見て興奮する人がいたり、5回に1回の確率で帽子を忘れてくる女の子がいたりと、とにかく変な人が多いのだ。 テレビでやっているのはいつも3つのドアから景品のあるドアを選ぶゲーム番組である。出演者
※『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』から着想を得ています。 ※作者は星に詳しいわけでは全くありません。間違っていたらごめんなさい。 〜本編〜 「織姫、其方はもう二度と夏彦と会ってはならない!連絡を取ることも許さない。わかったな。」 「え……お父様?そんな……」 「其方らが仕事をしなくなったことによる弊害が天界のあちらこちらで出ているのだ!夏彦が処分されるのが嫌なのであれば大人しく従いなさい。」 周囲の悪意に満ちた視線。謁見の間の豪
私はある人から相談を受けた。相談に乗ることなど滅多にない。これが記念すべき初めてではないだろうか。 その人とは大して親しいわけでもない。お互いのことはあまり知らない。 霧雨の中、彼は傘もささずに歩いてやってきた。別段、重い足取りというわけではないが、その目には何も映っていなかった。 「僕はいつ間違えてしまったと思いますか。」 最初に出たその質問は、何よりも切実に彼の苦しみを表していた。その思いが単なる人間にありきたりな愚かな後悔などではないことは、誰の目にも明
「明日死ぬって言ったらどうする?」 「何言ってんだ、俺たちもう死んでるじゃないか。」 そう、僕たちはすでに死んでいる。 死んだら地獄に行くと思っていた。僕もこいつも。でも実際死んでみると、生活はほとんど変わらなかった。死んで起きた時にいた場所からあまり遠くへはいけないし、食欲も物欲も何もないが、灼熱に焼かれることもなく、平穏に暮らしている。2人で何気ない会話をしながら。 この世界は生前のそれと変わらず、天候が移り変わるらしい。周りに同じように生活している人間もい
「星に願いを」なんて言ったのは、いつの時代の誰だろうか。人間はいつしか、夜空の星を見上げることを忘れ、己が立っている星すら顧みなくなっていった。 時は流れ、地球はゆっくりと滅びる方向へと進む。木々は枯れ、動物たちは逃げ惑って消え去り、皮肉にも知恵のある人間だけがなんとか生き延びた。 それでも、いずれ限界が来ることなど誰もがわかっていた。せめて、自分の代だけは生き残ろうと、そうやって細く繋いできた命だ。残酷にも、新たな命を生み落しながら。 今になって、皆夜空に浮か