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優しさに触れること

心が弱っている時。
悔しい思いをした時。
1人で何かを抱えている時。
そんな時、誰かの、優しくて味方でいてくれる一言に、自然と涙が出てきて止まらなくなることがある。

今まで何度もそんなことがあった。
「こんな時に優しくされたら泣いちゃうよ」と
泣きながら笑って言ったこともある。

弱い時には、誰かの優しさを倍以上受け止めてしまう。

けれど、昨日優しさを違う形で感じた。
心が弱っているわけではないのに。


いつものように、彼と過ごす週末。
寝る前に彼に初めて本を読み聞かせをしてもらった。
新しくわたしの本棚に仲間入りした本。
荒井良二さんの『ぼくのキュートナ』


一回すでに読んだのだけれど、彼に読み聞かせしてもらいたくて、「これ読んでー」と子どものようなお願いをしても、いいよと読んでくれた。

この本は、男の子から女の子に向けての手紙をコンセプトに書かれている。

低くて柔らかい声と、穏やかで温かい目線から優しさを感じた。
涙が次々に溢れてきて、内容より彼の横顔に見入ってしまった。声をただ聞いていた。

涙が止まらなくなるから、涙が出ていることを悟られてしまうから、
「もう読むのおしまいでいいよ」
と伝えても
「もういいの?もっと読むよ。じゃああと1ページ読んだらね。」とさらに読んでくれる。

話は変わるが、読み聞かせをしてもらっていた幼少期。
もっと読んでほしいとせがんでも、もう寝る時間だからおしまいと読んでもらえないことも多かった。仕事で忙しいから、疲れてるからしょうがないよなと子どもながらに諦めながらも少し寂しかったのを覚えている。

けれど、彼は嫌な顔ひとつせず、もっと読んでくれようとする。
彼の子どもになる子は幸せだろうなと思った。
そう思うと、さらに涙はこぼれた。


ただその人から滲み出る優しさに触れた。
ただその人から溢れ出る温もりに触れた。

ほんとうの優しさに触れた時、温かい涙があふれること。
その涙がまた、心を温めてくれること。

隣にいるだけで温かくて穏やかな気持ちになれるあなたの隣で、これからも眠りにつかせてね。



そして、「続き読むよ」
とあなたの声で読むキュートナへの手紙をわたしは今日も隣で聞く。

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