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【エッセイ】作者の気持ちを答えよ。(1143文字)

問. 次の短歌を詠んだときの作者の気持ちを答えよ。

答. お肉が食べたい。

怒らないでください......
お腹がとても、空いていたんです。

***

小学校〜高校のテストで幾度も出会ってきた、このような設問。
私はこういった問題が大・大・大得意でした。

「このときの筆者の気持ちは分からなくても、先生が求める回答は分かるでしょう? それを答えてね」という声がテスト用紙から聞こえてきます。
テスト用紙には必ず回答の根拠が載っているので、それらをピックアップして、繫げて、体裁を整えるだけ。
なんて簡単なんだろう、と思っていました。

一方、数学はてんでダメ。
どれだけ頭を捻っても、覚えていない公式や理解していない計算方法は出てこない。

得意不得意がはっきりしていた学生時代の私ですが、国語(現代文)が得意という自負だけは持ち続けていました。

でも、昨日ふと思いました。
あの設問に"本当に"正解できるひとは一体どれだけいるんでしょう。
少なくとも私には、こう答えてほしいという先生の気持ちは分かっても、作者の真意は分かりません。

泣きながら幸せな物語を書かざるをえない作家もいれば、笑いながら不幸を描いて楽しむサイコパスもいるでしょう。

文字を通して人の本当の気持ちを理解するなんて不可能に近い。
だから、理解できなくていいし、されなくてもいいと思うんです。

むしろ、作品が世に出た時点ですべてが読者に委ねられ、自分では思いもよらなかった解釈が生まれるほうが、ずっと面白い。
個人的には、そう思います。

***

さて、冒頭の短歌。

「あなたから 柔軟剤が 香るたび 負けた気がして 息を吐く」

この歌を詠んでいるときの私の気持ちは「お肉が食べたい」でしたが、まあそれは置いておいて、私はこの短い一文の解釈が、人によってどれだけ異なってくるのか、とても興味があります。

ここでは一旦、詠み手を女性、「あなた」を男性と仮定します。

問.次の短歌を詠んだときの作者の気持ちを答えよ。

①男性であるにも関わらず「あなた」からいつもいい香りがするので、自分の女子力の無さを否応なく実感させられ悔しく感じている。

②自分は「あなた」に心を乱されっぱなしなのに、柔軟剤が香る「あなた」は心を乱されることもなく整った日々を送れていることを感じ、切なさを覚えている。

③柔軟剤の香りによって、「あなた」の洋服を洗濯しているであろう女性の存在を意識させられ、そもそも土俵にも上がれていない自分が勝負に負けた気になっていることに恥じ入り、落ち込んでいる。

***

皆さんがどんな受け取り方をしたか、良ければ教えてください。
ちなみに、①~③は私があり得そうだと思った回答です。

思いもよらないストーリーに出会えることを楽しみにしつつ、洗濯機を回す土曜の夜。
ちなみに私は柔軟剤は使わない派です。
あまり違いが分からない……


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