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東樹 詩織 / Shiori Toju
2016年9月13日 03:09
冷たい風に吹かれる度に、胸の奥がきゅっと縮む。秋の始まりではなく、夏の終わりなのだと言い張りたい。喪失感ばかりが募って、足が止まる。ギラギラと眩しい黄色や深いブルー、瑞々しく弾ける赤と風にはためく白、そんな色に満ちた日常がみるみるうちに遠ざかる。冬の世界には鮮やかさがない。日本茶、灰色の薄いホットカーペット、除夜の鐘。みっしりと物が詰まった小さな部屋で、縮こまりながら夜をやり過ごす。暖房