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【動物園水族館訪問記】その4 沖縄美ら海水族館~「世界最大級」は水槽だけじゃない!世界に誇る保全活動と飼育繁殖実績~

皆様こんにちは!最近、台風やゲリラ豪雨がよく発生していますね。自然災害なので発生することは致し方ないですが時折、災害による公共交通機関への影響や動物園水族館への被害が起こってしまう時があります。重大な事故が起こってしまった後ではどうしようもありません。。。(特に民間ですが)以前は台風や災害が起こってでも無理して営業するという園館がありました。しかし、最近は台風が上陸する前に休園館のお知らせを提示する施設が増えてきたように感じます
これからも来園者、園館で暮らす動物、そして園館ではたらく職員さん全員が安全を確保できるような仕組みになってくれればなと願っております。
さて、沖縄遠征の第3回目です。訪れた施設は『沖縄美ら海水族館』。言わずもがな、日本で知らない人はいないんじゃないと思うくらい有名な大規模水族館です。テレビや雑誌等でよく紹介されていますが、「まだ行ったことない」「ジンベエザメが有名ということしかわからない」という読者も多いのではないでしょうか?
今回は館内の雰囲気を紹介しつつ、メディアではあまり紹介されていないマニアックな見所や研究・教育活動等もご紹介できればなと思っております。

沖縄遠征のその他の記事は以下のリンクにまとめてあります。まだ見てないよーという方がいらっしゃいましたら、是非こちらもご一読下さい。

☆DMMかりゆし水族館

☆ネオパークオキナワ


1.沖縄美ら海水族館とは?

沖縄美ら海水族館は沖縄県国頭郡本部町にある世界最大級の水族館です。海洋博公園内にありジンベエザメやマンタ、アメリカマナティー等数多くの生き物が飼育されています。また、サンゴの飼育繁殖も有名でサンゴの海の大水槽では約80種440群体の造礁サンゴが展示されています。日本のみならず世界中から観光客が訪れており、2024年8月16日(金)に総入館者数6000万人を達成しました。

沖縄美ら海水族館の入り口にあるジンベエザメモニュメント。たくさんの観光客がこぞって記念撮影をしていた。
水族館本館を南側から見た様子。外装が堅固で迫力のあるつくり。
「黒潮の海」の大水槽。世界最大級の水槽にはジンベエザメやマンタが泳ぐ。沖縄美ら海水族館といえばコレ!と思う人は多いだろう。
水族館から見られる美しい風景。白い砂浜とエメラルドグリーンの海が広がる。

2.館内の紹介

沖縄美ら海水族館は「沖縄の海」をテーマに沖縄とその周辺に暮らす生き物達を飼育しています。館内は数多くの展示エリアがありますが、今回は私がすごい!面白い!と思った展示をピックアップして紹介していきたいと思います。

■3F サンゴ礁への旅

4階にあるモニュメントを抜けたあと、3階の入り口に進んだらまずお目見えするのはサンゴ礁に暮らす生き物達を飼育するエリア。自然光を取り入れたサンゴ礁の大水槽や沖縄を代表する生き物達をじっくり観察できる個水槽等数多くの見どころがあります。

・サンゴの海の大水槽

沖縄といえば、サンゴ!沖縄美ら海水族館は開館当初からサンゴの保全・研究を積極的に行っています。研究報告は逐一館内の掲示物や公式サイトで発信されており、来館者は気軽にサンゴの最新研究を知ることができます。

水槽上部は屋根がなく、太陽光を直接取り込めるような仕組みになっている。 水族館の目の前の海から絶えず新鮮な海水を供給するオープンシステムを採用することで、サンゴの大規模飼育を可能にした。
約80種440群体の造礁サンゴは圧巻。サンゴ礁を展示する水族館は数多くあるがこれほど多くの種数を一度に展示しているところは少ない。
館内に掲示されている「クイックコーラルガイド」。サンゴとはどういう生き物なのか?性別はあるのか?等、サンゴをまったく知らない来館者でも楽しめるようわかりやすく解説されている。

・色鮮やかで危険な「イラブー

沖縄では食用としても親しまれているエラブウミヘビ。現地の言葉では「イラブー」と呼ばれています。大人しい性格ですが、歯に神経毒をもっており、噛まれると非常に危険です。

青と黒の縞模様が美しい「エラブウミヘビ」。沖縄では「イラブー」として親しまれ、伝統的な食材としても利用されている。
エラブウミヘビは爬虫類のため、もちろん肺呼吸。通常30分~1時間ほどで息継ぎをする。
性格は非常におとなしいが、歯にエラブトキシンと呼ばれる神経毒をもつ。その毒はハブの70-80倍の強さと言われており、噛まれると非常に危険。

・ちょっと変わった珍しいクラゲ

沖縄美ら海水族館では他の水族館ではあまり見られない珍しいクラゲを飼育しています。これ本当にクラゲ?と思ってしまうような姿かたちのクラゲ達に皆さんも会ってみませんか?

2019年12月に新種記載された「デイゴハナガサクラゲ」。沖縄本島沿岸に生息しているため、沖縄でポピュラーな「デイゴ」の花から名前がつけられている。
昼間はじっとしていることが多いが、夜間に動きが活発になることが判明。夜行性のクラゲとして沖縄美ら海水族館が研究・発表した。
国内では沖縄美ら海水族館でしか見られないオオツクシクラゲ。一般的なクラゲとは異なる形状で面白い。
オオツクシクラゲは餌の捕獲や消化、遊泳や繁殖等それぞれの役割を持つ個体(個虫)が集まってひとつの群体を形成している。長いものでは体長2mを超えるという。

■2F 黒潮への旅

世界最大の暖流である「黒潮」。そんな黒潮に生きる生き物達を集めたのがこのエリアです。総水量7,500㎥にも及ぶ黒潮の海の大水槽をはじめ、太平洋を泳ぐ大型の生き物をメインに飼育されています。

・黒潮の海

沖縄美ら海水族館を象徴する「黒潮の海」の大水槽。世界最大級の巨大アクリルパネルに覆われた水槽内にはジンベエザメの「ジンタ」をはじめ、優雅に泳ぐマンタや食卓でおなじみのクロマグロ、シイラやロウニンアジといった厳つい顔つきの大型魚等、数多くの生き物達が飼育されています。

黒潮の海の大水槽。巨大なアクリルパネル越しに大きな魚たちが泳ぐ姿を見ることができる。平日にも関わらず多くの観光客でにぎわっていた。
大水槽は側面からも観察できる。こちらは館内レストラン側。
大水槽の側面「アクアルーム」と呼ばれるエリア。上部もアクリルが張られており、時折ジンベエザメが通過する。観覧用ベンチから水槽眺めるとまるで海の中に入ったような感覚を味わえる。

・黒潮探検

1日2回、特定の時間だけ大水槽を上から見学することができます。横からだとわかりにくいオニイトマキエイとナンヨウマンタの違いを比べてみたり、生き物の搬入口を見ることができたりとまた違った楽しみ方ができますよ。

黒潮の海の大水槽を上から見た様子。水槽内の照明や飼育員の通用口が設置されている。
別の角度から写した様子。写真奥側には新規個体を入れたときに使う搬入口がある。大型魚を搬入する際に使うクレーンも上部に設置されている。
館内で飼育されている2種類のマンタの見分け方。元は同種とされていたが、それぞれが別種と判明。2017年に2種類に分類された。

ここで紹介した「黒潮の海」の大水槽に注目した記事を番外編として書いておりますので是非こちらも併せてご覧下さい!

・サメ博士の部屋

沖縄美ら海水族館はジンベエザメだけではありません。他にも多くのサメを飼育しています。「サメ博士の部屋」では様々な研究資料や標本が展示されており、サメについて深く学ぶことができます。迫力ある大型サメの展示水槽もあり、見どころ満載です!

「サメ博士の部屋」の床面は全面フローリング張り。他のフロアとはまた違った落ち着いた雰囲気だ。
水槽内では国内では美ら海でしか飼育されていないツマジロや愛らしい顔つきが特徴のトラフザメ、現地の言葉で「ナカー」と呼ばれるクロトガリザメ等数多くのサメ類が飼育されている。
様々なサメ類の肌について紹介している展示コーナー。皆同じサメ類だが住んでる地域や場所によってサメ肌の形状が大きく異なる。
サメ肌の構造は競技用水着や飛行機の部品といった製品づくりの参考に利用されている。

■1F 深海への旅

1階は深海魚がメインに展示されているエリア。沖縄の海といえばサンゴ礁をイメージする方も多いと思いますが、実は水深200m以深の深海エリアも存在します。ここでは採取・飼育が難しい貴重な深海魚達を数多く見ることができます。

個水槽のエリアでは地元・沖縄の深海で採取した貴重な生き物達が飼育されている。
飼育員による今月のイチオシ生物を紹介する掲示。深海の生き物は長期飼育が難しいため、展示種は頻繁に入れ替わるそう。
深海サメの代表的な存在である「ミツクリザメ」。その見た目から「ゴブリンシャーク」の異名を持つ。
水深200m-375m付近に分布するリンゴカワリギンチャク。リンゴのような色合いと形状がかわいらしい。
リンゴカワリギンチャクは2023年6月に新種として記載された。沖縄美ら海水族館による調査・研究で新種が発見されることは少なくない。
蛍光イエローに光るバラハナダイ。こちらは青色照明を当てた姿。白色照明下では桃色と黄色の鮮やかな体色をしている。

■水族館外のエリアも充実!しかも無料!

沖縄美ら海水族館の館外も展示・資料が充実しています。愛らしいウミガメやマナティー、イルカショー等、なんとすべて無料で見学すること可能です!じっくり見ていたら1日あっても足りないくらいの充実度。。。水族館館内ももちろん広いので時間配分に気を付けて見学するのをオススメします。

・総合休憩所(美ら海プラザ)

沖縄美ら海水族館の館内を出て直後にあるこのエリア。休憩所と称していますがかなり充実した博物館のエリアでもあります。貴重な標本をはじめ、沖縄美ら海水族館で行っている調査・研究、手で標本や模型に触れることのできる体験コーナー等、無料とは思えないほどの充実さに驚きました。

触れる模型もあり目の不自由な来館者や小さな子供も楽しめるような工夫がされている。
巨大なメガマウスザメの液浸標本。全身標本が見られるのは貴重。半身は脊髄や内臓といった中身が見える状態で保存されている。
巨大なウバザメの液浸標本。ジンベエザメに次ぐ大型のサメで頭部のみの展示されていた。
「ジョーズ」のモデルとして一躍有名となったホホジロザメ。こちらは2014年8月に沖縄県本部町近海で捕獲された前兆3.2mのオス個体。

・マナティー館

人魚のモデルとなったアメリカマナティーが飼育されています。国内で見られるマナティーが見られる水族館はたった4箇所(※1)のみ。その中でもここ沖縄美ら海水族館では4個体のアメリカマナティーに会うことができます。もちろん、貴重なマナティーを無料で見学できるのは日本でここだけです。

太陽光が差し込むマナティー水槽。水面にはエサのレタスが散らばっている。
飼育下繁殖が難しいとされるアメリカマナティーだが沖縄美ら海水族館ではこれまでに3度成功している。国内初繁殖を賞して1990年には繁殖賞も受賞。

※1 国内で見られるマナティーの飼育園館一覧
熱川バナナワニ園(@静岡):アマゾンマナティー
鳥羽水族館(@三重):アフリカマナティー
新屋島水族館(@香川):アメリカマナティー
沖縄美ら海水族館(@沖縄):アメリカマナティー

・太陽が差し込むウミガメ館

ウミガメ館ではタイマイ、アカウミガメ、アオウミガメ、ヒメウミガメ、クロウミガメの5種類が飼育されています。館内は水槽上から観察できる場所と、階段を下りて水槽横から観察できる場所があります。水槽上は太陽光が直接差し込む構造になっており、ウミガメ達が沖縄の海で泳いでいるかのようです。沖縄美ら海水族館はこうした希少なウミガメ達の飼育繁殖を継続的に行っています

産卵用の砂場もある一番大きな放飼場。上から観察することができ、大きなアカウミガメ達が優雅に泳いでいる。
ウミガメは水中観覧エリアからも観察できる。水槽前に来てくれることもあるのでたくさんの来館者が記念撮影をしていた。

・水族館の人気者!イルカもいるよ

水族館の人気者といえばイルカ。沖縄美ら海水族館でもオキゴンドウミナミバンドウイルカの2種類が飼育されています。この日はイルカショーを行っているオキちゃん劇場が施設修繕のため閉鎖中。代わりにイルカラグーンでイルカショーが行われていました。

美ら海でも大人気のイルカショー。この日は「オキちゃん劇場」が施設修繕中のため「イルカラグーン」で行われていた。
体長6メートルにもなるオキゴンドウのジャンプは大迫力。

・水族館から行ける!美しいビーチ!

水族館だけではありません。沖縄美ら海水族館は館外にあるビーチも見所です!水族館のすぐ近くに白い砂浜とエメラルドグリーンの海が広がっており、すごく感動しました。遊泳は禁止ですが、誰でも自由に砂浜に降りて遊ぶことができます

美しい砂浜と海が広がる沖縄の海。水族館のすぐそばに広がっている風景とは思えない光景だ。ここは遊泳できないが誰でも自由に砂浜に降りて散策することができる。

3.充実した教育資料と保全繁殖実績

沖縄美ら海水族館の見どころは水槽展示だけではありません。充実した教育コンテンツや世界に誇れる飼育繁殖実績といった「環境教育」「調査研究」においても魅力満載です。

■教育コンテンツの充実

沖縄美ら海水族館には生き物の解説が書かれている種名板はもちろん、生き物の調査研究についての掲示物環境問題を啓発する掲示物といった教育コンテンツが充実しています。水族館で「生き物」を知って好きになったその先に考えてほしいことが書かれている「メッセージが強い」掲示物が多い印象でした。掲示物は館内のあちこちにあるので、気になる内容があったら是非一度立ち止まってじっくり読んでみてください。

琉球列島のウミヘビについて書かれた解説板。種類の解説だけでなく、沖縄の歴史文化についても書かれている。
深海の生物採集についての掲示。深海魚が遠い海から水族館にやってきて来館者の前で展示されるまでの過程が書かれている。
深海魚を採取し治療をする際に使われる機械の展示。
出口付近にある特設コーナー。生き物の特殊な能力についての解説や、きれいな海を守っていくにはどうしたらよいのか等、夏休みの自由研究にはぴったりの内容が充実していた。
掲示物はイラストやキャッチ―な文章が豊富で小学生にもわかりやすい。
沖縄美ら海水族館で行われている研究もわかりやすく紹介されていた。

■輝かしい飼育実績

沖縄美ら海水族館は数多くの飼育繁殖実績があります。館内入り口付近には日本動物園水族館協会(JAZA)が制定している繁殖賞の過去の受賞歴が掲示されており、圧巻です。またジンベエザメやマンタの長期継続飼育も有名です。

館内入り口付近に掲示されている繁殖賞。数多くの受賞歴があるのは流石、沖縄美ら海水族館といったところ。
館内入ってすぐ左手にある掲示。沖縄美ら海水族館で発見した新種・初記録種について紹介されている。
沖縄美ら海水族館は2022年に「認定希少種保全水族館」に認定された。これは希少野生動植物の生息域外保全、環境教育および普及啓発を目的に、各々の希少種の保護や増殖について一定の基準を満たす動植物園等に対して環境大臣が認定する制度で、沖縄美ら海水族館は全国の動植物園等の中で11番目に認定された。
黒潮の海の大水槽横にはジンベエザメとイトマキエイの掲示が。オスのジンベエザメ「ジンタ」は29年と長期にわたり飼育されており、長期継続飼育からオスジンベエザメの性成熟過程も解明されている。
沖縄美ら海水族館はオニイトマキエイやナンヨウマンタの長期飼育も有名。飼育下繁殖実績もある。

■地域社会と連動した保全活動

沖縄本土を含む琉球列島は固有種・希少生物種の宝庫として有名です。しかし近年は外来種持ち込みや環境破壊、自動車による事故等によって個体数が減少しています。沖縄美ら海水族館でもこれら琉球の希少動物の保全活動を継続的に行っています。

水族館出口付近にある琉球列島に生息する生き物の展示。琉球の希少生物の野生下における現状を伝えるポスターも掲示されている。
琉球列島固有種のリュウキュウヤマガメ。ペットしての利用を目的とした密漁や別種との交雑問題が深刻で絶滅危惧種に指定されている。沖縄美ら海水族館では環境省の依頼を受けて本種の保全活動を行っている。

4.まとめ

沖縄美ら海水族館、いかがだったでしょうか?ジンベエザメの泳ぐ水槽は有名ですが、他にも魅力的な展示世界に誇る飼育実績・研究といった数えきれない程多くの魅力があります。掲示物や展示をじっくりみていたら1日あっても足りないくらいです。観光地としてももちろん有名な場所ですが、国内の水族飼育・研究をけん引する存在としてより多くの人に知ってもらいたい場所だと感じました。自信をもっていろいろな人にオススメできる水族館です。
行ったことのない方はもちろん、一度訪れたことのある方も是非、次回は違った視点で沖縄美ら海水族館を楽しんでみてはいかがでしょうか?

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