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【動物園水族館訪問記】その3 ネオパークオキナワ~人気者がいなくたっていいじゃない!動物園で自然環境と出会う~

皆様こんにちは!連日猛暑日が続く中、いかがお過ごしでしょうか?今回は沖縄遠征編、第2回目です。訪れた施設は『ネオパークオキナワ』。大型哺乳類こそ飼育していませんが、広大な園内には生息域を再現した巨大な湖や熱帯地域の絶滅危惧種を中心とする保護センター等、魅力が盛り沢山。1日あっても足りないくらい充実した施設でした。

その他の沖縄遠征の記事は以下のリンクからご覧ください。


1.ネオパークオキナワはこんな施設!

ネオパークオキナワ(名護自然動植物公園)は沖縄北部、名護市にある大型の郊外型動物園です。初代園長は東京農業大学名誉教授である故・近藤典生(こんどうのりお)伊豆シャボテン動物公園や長崎バイオパークの設計・創設にも関わった、日本の動物園の歴史に無くてはならない人物です。彼の「人と動植物の共存を体感してほしい」という基本理念のもと、1992年12月1日にネオパークオキナワは開園しました。

ネオパークのネオ(NEO)はNature(自然)、Environment(環境)、Oasis(オアシス)の略で単に珍しく美しい動植物を集めるだけでなく、それらを出来る限り地域別にゾーニングし、同じ地域の動植物を組み合わせる、いわゆるランドスケープ(=景観)を意識した空間作りがされています。

ネオパークオキナワ外観。これから未知の世界へ足を踏み入れるワクワク感が味わえる。
園内マップ。アフリカを「フラミンゴの湖」、南米を「アマゾンのジャングル」、オーストラリアを「オセアニアの花鳥」と名付けた3つのゾーンが設けられている。その他にも生き物達と触れ合える「ふれあい広場」や希少種の飼育繁殖を目的とした「種保存研究センター」が点在する。
エントランスにあるトイレ横に設置されているコインロッカーはネオパークで出会える動物たちが描かれているオリジナルデザイン。

2.各エリアの紹介

■エントランス

入り口入ってまず最初のエリアではスナネコ達がお出迎え。砂漠地域に生息するネコ科の動物で日本においても人気ですが、近年は絶滅の危機に瀕しています。

生息域が再現されたスナネコ舎。この日は「サディーカ」、「マシュリク」の誕生日だったのでお祝い仕様、誕生日を祝う特別映像も公開されていた。
誕生日プレゼントで与えられた骨付き肉。
ペット目的として違法輸入もされている本種。園内には気性が荒く、ペット飼育には適してない旨を伝える掲示物も設置されている。

■フラミンゴの湖

エントランスを抜けて広がるのは「トートの湖」。アフリカ大陸・ケニアにあるナクル湖をモデルとして作られた広大なエリアです。エリア内には国内最大の飼育数を誇るアフリカクロトキ国内唯一飼育のアフリカトキコウ、大型のモモイロペリカンやシュバシコウ等、数多くの鳥類が暮らしています。ここは四方が囲まれており天井にはネットが張られているフライングゲージ形式、いわゆる巨大な鳥かごのような施設なので、来園者は柵やネット等の隔たりなしの状態で間近に動物達を観察することが可能です。エサやり体験もでき、一斉にクロトキ達が群がる姿は迫力満点です。

巨大なフライングゲージ内には無数のアフリカクロトキが暮らしている。飼育数は国内最大で繁殖賞の受賞実績も。
トートの湖には大型のモモイロペリカンやシュバシコウといった大型の鳥類も。多種多様な鳥類が混合飼育されている。
色鮮やかな顔とクチバシが美しいアフリカトキコウは国内で唯一、ここでしか飼育されていない希少な鳥類だ。
来園者と動物たちの間には柵もネットもないため、時折動物たちが来園者側通路を横断することも。どの鳥達も自由気ままに散策している。

■アマゾンのジャングル

アマゾンを再現したエリアでは色鮮やかなショウジョウトキや人懐っこいバリケン、国内では珍しいクロエリサケビドリなどが飼育されています。のんびりとした表情のアメリカバクやアマゾンに住む巨大魚もおり、また違った雰囲気を楽しむことができます。

広々としたアメリカバク舎。園内を一周する沖縄軽便鉄道がアメリカバクの頭上を走る。
アメリカバクのリン♀。この日の午前中は日陰でじっとしていたが日が傾いた夕方ごろから活動し始めた。
少しだが魚類の飼育も。アマゾン川を模した濁った水槽にコロソマの影がぼんやりと浮かぶ。
人懐っこいバリケン。園内のあちこちにエサやりできるエリアがある。
国内で見ることは珍しいクロエリサケビドリは鮮やかな朱色の脚が印象的。なんとこのエリアで放し飼いにされている。ネオパークオキナワは本種をはじめ、希少な鳥類を数多く飼育している。
アマゾン川を切り取ったかのような1枚。動物だけでなく自然環境も展示。。。なんともネオパークらしい写真を撮ることができた。

■ふれあい広場

園内の一角にある「ふれあい広場」ではカピバラやヤギ等、大人しい生き物達と直接触れ合うことができます。このエリアの入園には追加料金が必要ですが、間近で多くの生き物と触れ合うことができるので課金して損はありません!

「ふれあい広場」は追加料金が必要。入るには入園ゲートで「ふれあい広場」付き入園券を購入するか現地で現金払いする必要がある。
琉球犬のしゅり♀。古くから沖縄に土着している本種は現地の言葉で「トゥラー」と呼ばれている。第二次世界大戦の沖縄戦時に絶滅の危機に瀕したが、その後1990年に保存会が発足。現在は飼育数を増やし800頭にまで増える。1995年沖縄県指定天然記念物に指定。
他園でも大人気のカピバラ。ゴワゴワとしたブラシのような毛並みが特徴。
このエリアを見学途中にスコールのような雨に降られた。幸いなことに数分後に雨は止んだが、突然の滝のような大雨にびっくりした。
大雨が降っても何食わぬ顔で過ごすアルダブラゾウガメ。

■レムールの島

園内を散策すると突如現れる「レムールの島」ではその名の通り広大な池の中島にレムール(キツネザル科の総称)達がのんびりと暮らしています。

自然に近い環境で整備されたレムールの島。島の周りにも植物が生い茂っているので自然と溶け込んでいる。
島内ではレムールの一種であるワオキツネザルたちが暮らしている。

■ペッカリー牧場

国内最大級の放飼場内にはクビワペッカリーが数多く飼育されています。日陰や岩場、ぬた場のようなエリアがあり、ペッカリー達のいろいろな行動を観察することができます。群れで生活する本種、仲間同士がコミュニケーションをとる様子を観察できるのも見どころです。

ペッカリー牧場の入り口。観覧側にも日陰があるのはうれしい。
広々としたクビワペッカリー舎には青々とした草原が広がっている。放飼場内には低木やぬた場のようなものもあり、彼らにとって過ごしやすい工夫がされている。放飼場奥には沖縄軽便鉄道が走っており、列車からも観察することが可能。
群れで暮らすクビワペッカリー達。鼻を鳴らしてコミュニケーションをとったり、仲間同士で体をこすりあったり、土を掘り起こしたりと思い思いに自分達の時間を過ごしていた。

■オセアニアの花鳥

「オセアニアの花鳥」のエリアではオーストラリアで暮らす動物をメインに飼育されています。

池畔にたたずむコクチョウ。ブラックスワンとも呼ばれる本種はオーストラリアの固有種だ。
「世界一危険な鳥」としてギネスブックに記載されているヒクイドリ。国内でも見られる動物園は少ない。

■国際種保存研究センター

「国際種保存センター」ではレムールをはじめ、数多くの希少動物種の飼育・繁殖を行っています。(詳しくは後述「3.保全センターとしての役割」にて記載)

「熊猫」とも呼ばれるジャコウネコ科のビントロング。訪れた日は気温がかなり高く、とても暑そうにしていた。
マダガスカルに生息するクロキツネザル。オス(左)とメス(右)で体色が異なる。
センター内で放し飼いにされているオニオオハシ。人懐っこく、時折エサ場で果物をついばむ様子が観察できる。

■その他の施設

その他にも広々として視界の開けたバードショーエリアや快適な室内で観察できるレッサーパンダ舎、ワオキツネザル舎など見どころ満載です。

広々としたバードショー会場。観覧ベンチも多い。
バードショーではお馴染みのハリスホークやキバタン等が活躍、毎日開催しており午前午後各1回ずつ開催されている。
お土産コーナーの隣にあるレッサーパンダ舎。常時室内で展示されているので夏の暑い日も快適に過ごせる。
レッサーパンダのさくら♀。数量限定でエサやり体験もできる。
園内の軽食コーナー横はワオキツネザル舎。ガラス越しに間近で観察できる。
美味しそうにパイナップルを頬張るワオキツネザル。

3.保全センターとしての役割

ネオパークオキナワには「ネオパーク国際種保存研究センター」と呼ばれる施設があります。ここは地元沖縄をはじめとする、世界の熱帯地域、亜熱帯地域に生息する希少野生動物の繁殖・研究を行う施設として開設されました。館内では希少鳥類やレムール、沖縄の固有種など数多くの動物達に出会うことができます。

国際種保存研究センター(希少種の森)外観。外周をコンクリート塀とネットで囲んでおり、バードホールのような作りになっている。
センターの見取り図。こちらの施設も四方をコンクリート塀とネットで囲っているバードホールのような作りだ。中央には池があり、小さな島でジェフロイクモザルが飼育されている。
センターの周囲を囲うように配置されている獣舎。写真はビントロングやサイチョウがいるエリア。反対側のエリアではレムール達が飼育されている獣舎がある。
外周に配置された獣舎は室内からも観察可能。雨でも安心して観察できる。
「オオコノハズク」の固有亜種である「オキナワオオコノハズク」。写真の個体は保護されてネオパークにやってきた。
センター内に飾られている繁殖賞の数々。アフリカクロトキをはじめとする鳥類が多い。
特別天然記念物に指定されているヤンバルクイナの繁殖賞を受賞しているのもこの園。(現在は飼育されていない)
繁殖賞に関する掲示。「動物園の役割」の1つである「種の保存」についても書かれている。

4.人気生物がいなくたっていいじゃない

みなさんは『動物園』といったら何の動物を想像しますか?

ゾウやキリンといった大型哺乳類
それともライオンやトラのような肉食動物

ネオパークオキナワではそれらの動物達を一切飼育していません。もしかしたら、大型哺乳類がいなくて正直つまらないんじゃない?と思っている方もいるかもしれません。。。しかし、決してそんなことはありません。ネオパークオキナワはいわゆる「動物園の人気者」がいなくてもたくさん魅力があります!ここでは私がおすすめするネオパークオキナワの見どころを紹介します。

■世界的にも珍しい希少種

ネオパークオキナワでは国内でも見ることが珍しい動物達を多く飼育しています。国内唯一の飼育動物や沖縄の固有種といった希少な動物達に会ってみませんか?

国内で唯一、ネオパークでのみ飼育されているマレーヤマアラシ。現在飼育されている2個体が国内最後のマレーヤマアラシだ。
鮮やかな体とパンチパーマのような頭が特徴のアオコブホウカンチョウ(♀)。野生ではコロンビア北部のみに分布する希少な鳥類だ。
過去に繁殖賞も受賞しているクロエリサケビドリ。現在も継続的な飼育繁殖に成功している。
こちらも国内でネオパークのみ見ることのできるカブトホロホロチョウ。頭の形が「兜」のようになっているのが名前の由来だ。アフリカクロトキと同じエリアに飼育されており、日中は中々姿を現さなかったが、夕方のエサの時間にひょっこり顔を出してくれた。

■群れで暮らす動物達

約2000坪(東京ドーム約5個分)の敷地面積を有するネオパークオキナワ。その広大な敷地内を生かした放飼場にはたくさんの動物が暮らしています。生き物を単独ではなく、一つの群れ(コミュニティ)として着目しながら観察できるのもこの動物園ならではです。

「トートの湖」内で見られるアフリカクロトキのコロニー。野生では群れで暮らし、集団で営巣して繁殖する。継続的な飼育繁殖ができているのはこの野生下に近い環境のおかげなのだろう。
群れを成して移動するクビワペッカリー達。野生では通常6~7頭の小さな群れを形成して暮らしている。
エサの時間に群がるクビワペッカリー達。食事時間は群れの中の序列関係や仲間同士のコミュニケーションを観察するには絶好の時間だ。

■生息域を再現した飼育環境作り

生き物だけではありません。ネオパークではまるで生息域をそのまま切り取ったかのような景色を見ることができます。ただ生き物達を観察するだけでなく、彼らが住む地域環境にも思いを馳せてみませんか?

木の上に佇むアフリカクロトキ。彼らの生息地は湿地や湖、サバンナをはじめ耕地や都市近郊にもあり多岐にわたる。
「2.各エリアの紹介」内でも掲載したがお気に入りなので再掲。アマゾン川を切り取ったかのような1枚を撮影。フラミンゴが作る波紋が美しい。

■沖縄らしさを感じる園内

園内のあちこちには沖縄を感じられるものがたくさんあります。現地の環境や特産を感じられるのも地方の動物園ならではです。本州とはまた違う、熱帯地域特有の気候や雰囲気を全身で感じてみませんか?

タコノキの仲間。熱帯地域に広く分布している常緑樹で沖縄本島でも数多く植栽されている。
絶滅危惧II類 (VU)に分類されているリュウキュウヤマガメは沖縄のみに生息している固有種。もちろんネオパークオキナワでも保全繁殖に取り組んでいる。その地域特有の希少固有種に出会えるのも動物園ならでは。
ワオキツネザルに与えられているのはゴーヤとパイン。どちらも名護市の名産品で初夏~夏にかけてが旬。おそらく地元の農家から譲ってもらったのだろう。

5.まとめ

ネオパークオキナワ、いかがだったでしょうか?私は今回初訪問してその広大な飼育施設と施設の理念、そして何よりも生き生きとした動物達の姿に感動しました。「人と動植物の共存を体感してほしい」という基本理念のとおり、この美しい地球が「私たち来園者」「野生動物」「自然環境」が共生することで成り立っていることが感じられる良い施設だなと肌で感じました。
一般的に動物園は飼育する「動物」だけに注目されがちです。しかし、生息域外保全においてはその動物たちが暮らす「自然環境」や私たち「人間との関わり」も重要になってきます。ネオパークオキナワを訪れることで一人でも多くの来園者が野生動物達が暮らす環境を知り、野生での現状や私たち人間と今後どう共存していけば良いのかを考えるきっかけになってくれればと思います。

この動物園には一般に「動物園の人気者」と呼ばれる動物達はいません。しかし、他の動物園にはないたくさんの魅力で溢れています。「ちょっと変わった動物園に行ってみたい」「動物達が暮らす飼育施設や自然環境にも興味がある」という方はもちろん、名護方面の観光地を探している方、熱帯地域の生き物に興味がある方などにも自信をもって薦められる施設です。筆者自身も「本当に来てよかった」と沖縄遠征を終えた今でも思っています。行こうか迷っている方や沖縄の園館に興味がある方は記事を参考に、是非ネオパークオキナワへの訪問を検討してみてください。

【参考】
琉球犬|ペットいっぱい 犬種図鑑


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