江戸時代の旅について書いた卒論
無事提出を終えた卒業論文。ほどほどにやる、とか言いながら結局必死になって書いてしまったけれど、文字数では2万字くらい。笑
大したことのない研究だったけれど、せっかくやったんだし、ここにも載せちゃう。
他のnoteにもあるように、旅が好き。そして、日本史も好き。
なら、それを研究しちゃえ~って安易に決めたのが卒論のテーマ。
歴史って覚えることたくさんで、苦手な人もたくさんいると思うんだけど、教科書で出てくるような言葉はほぼ出てこないので安心して読んでください。いくつかコトバンクに飛ぶリンクも貼ったので、それも参照しつつよんでもらえれば!
ちなみに、研究したテーマの内容は、伊勢参りの道中日記からの考察みたいな感じ。後半に詳しく!!!
ざっくり江戸時代の旅
2000年くらい日本という国がある中で、江戸時代を選んだ理由。
それは、旅の原点だから。
縄文時代とかも、まぁ言ってしまえば旅みたいなものなんだけど、歴史学の中での旅の定義は、定住している場所から離れてどこかに行くこと。
今の日本にいるノマドは今の歴史学の中では、旅人には入らないっていうイメージ。
ってなると、平安時代も鎌倉時代も旅したっていいじゃん、ってなるかもしれないんだけど、ここで重要なのは定住。
実は日本に住んでる人、特に百姓レベルまでの人が定住するようになったのが、江戸時代あたりで、他の時代はそんなに決まった家!っていう感じではなかったらしい。
江戸時代になると、世の中が平和になってきて、農業のレベルも上がって、定住することが可能になった。
だから、家からどこかに行く旅っていうものが、歴史学上の定義の中で生まれる。
他にも、江戸幕府のおかげで五街道(東海道、中山道、日光街道、甲州街道、奥州街道)が整備されたこと、参勤交代とかのおかげで宿がたくさんできたことも旅ができるようになった要因のひとつ。
それまでは山賊とか動物とか道がないとかで、ふらふら移動はできなかったみたい。
そんな江戸時代の旅。
教科書に出てくる言葉だと、伊能忠敬とか松尾芭蕉とかが有名な旅人さん。旅関連では、東海道中膝栗毛とか富嶽三十六景とか東海道五十三次とか。その辺の時代。だいたい日本史の折り返し手前くらい。
この辺が研究していた対象の時代。
もう少し詳しく言うと、1800年くらい、寛政の改革とか天保の改革とか、文化文政とか、そういうとこ!笑
ちょっとちゃんと江戸時代の旅
江戸時代の旅は、ほとんどが三重にある伊勢神宮に行くこと。
場所にもよるけど、関東から行くなら往復で最低でも1ヶ月はかかる。
それ以外の旅は、参勤交代とか温泉に行くこととか、松尾芭蕉みたいな物書きの人が行くとか。色々あるけど、割合としては少なめ。
人生のうちに1回は伊勢神宮に行くっていうのがこの時代のスタンダードだったみたい。裏を返せば、1回きりしか行けない人もいるってこと。
江戸時代はほぼ歩いて移動していて、たまに駕籠に乗ったり、馬に乗ったり。川には橋が架かっていないことも多いから、船に乗って渡ったり。
荷物は少なめ。服2枚くらいと草鞋と帽子と。
とそんな江戸時代の旅のことがたくさん載っているおもしろい本があるので、ちょっと紹介。1810年に八隅蘆庵さんが書いた『旅人用心集』には、旅でこんなこと気をつけようっていう内容が書いてあるの。おすすめ。
旅の前日にお酒飲みすぎないように、とか荷物は少なめに、とか現代に通ずるものがあれば、関所通る時は気をつけてとか山賊いるよとかそんなことも。
庶民のみなさんは、旅に出るのも色々なことが。
行くのはだいたい正月に出発して、3月頃に帰る。
この時期は、農業が忙しくない時期で旅に行ける。
女の人はほとんど行けない。
「お蔭参り」っていう単語に聞き覚えあるかなぁ。とにかくとんでもない人数が伊勢参りに行く年が、60年に1回くらい突発的に起きる。この時は、あまりにもごちゃごちゃしすぎて、女の人も行けるんだけど、それ以外は結構難しい。
行けても、閉経後のおばあちゃんが大半。女の人って色々大変なんよな~。
江戸時代。旅が庶民に広まったとはいえ、わりと大変。
しっかり江戸時代の旅
ここまで江戸時代の旅とはどんなものなのかっていうのを書いてきて、きっと昔勉強したことと照らし合わせて、めちゃ大変じゃーんって思ったと思う。
もちろん大変そう。
文字でしか見ていないけど、結構大変。
ただ、大変な中でも旅をすごく楽しんでいる。
伊勢参り行ってるよ~なんて言いながら、色んな寺社を巡って、温泉にも入って、遊郭なんかで遊んじゃって。
これも江戸時代の旅の事実。
つまり、旅人向けの商いも賑わってる。
有名な東海道と中山道には、たくさんの宿があって、宿のネットワークとか客引きとかもしっかり。
参勤交代のために整備した五街道は、旅人にとっても移動しやすくなる道。
日本中どこにでも宿があるような時代ではないので、この道を通るのがほぼ必須。
冒険は旅の中に求めるんじゃなくて、旅そのものが冒険の時代。
今と同じところがあれば、全く違うところもある。
勉強しがいのある時代な気がする。
こんな江戸時代には、旅行案内書、今でいう地球の歩き方みたいな本があった。『江戸名所圖會』とか『東海道名所圖會』とか。他にも『江戸名所記』とか。
情報源は、口コミと書物だけだから、本はすごく大切なもの。
この本には、箱根には温泉があることとか、日坂ではわらび餅が美味しいとか、文字と絵でそんなことが書いてある。
こんな感じで本が広まったのは、庶民の識字率の向上と印刷技術の向上と。それもあって、全国的に色んな人が旅に行けるようになった。
色んな要素が組み合わさって、旅が広まったのが江戸時代なんです。
と、ここまで江戸時代の旅について勝手に語ってきたしおんが個人的におすすめな2冊。
読みやすくて、江戸時代のことを網羅している本。
ざっくり江戸時代の旅について、扉開いてみたい方におすすめ。
江戸時代だけじゃなくて、歴史を勉強するときには、教科書で勉強したような知識を引き出しつつ照らし合わせつつ勉強するのがおすすめです。
例えば、旅は江戸時代の人々にとって生活必需なものではない。
つまり、江戸幕府の力が強くて、庶民をしっかり支配できていた時には行きにくい。しおんが研究した1800年頃は、旅人が増えて史料も多い。それは江戸幕府の力が徐々に弱まっているから。
農具の技術があがって、たくさん作物を作れてお金を作れているから。
余力があれば、試しにネットで最初の方にあげた旅関連の出版物とか絵を調べて見て欲しい。だいたい同じくらいの年代だから。
歴史は縦のつながりだけじゃなくて、横のつながりもある。
これを理解しつつ学ぶと、頭に入りやすいのでは?と思ってます。
卒論で研究したこと
ざっくり江戸時代の旅について、だらだらと書いてきたわけですが、結局しおんは何をしたのかと。
伊勢参りに行った人たちが書いた道中日記から、江戸時代の伊勢参りってどんな感じだったんだ?っていうことを考えた!
たまたま教授が関わっていてしおんも関わらせてもらった場所で、道中日記が発見されて、先生が活字になおしてくれたから、そこから考察したって感じ。江戸時代のくずし字は結局ひらがなしか読めずに終わった。笑
伊勢参りに行くのには、お金がかかる。
それに行きたくて勝手に行くなんてことはできない。
だから伊勢講っていう、お助け団体みたいなのを作って、みんなでお金貯めて代表者が旅に行くっていうことをしていた。
いつかは自分に回ってくるから、お金出すよ~みたいな。
それ以外は、コミュニティのような役割も果たしていて、日常の情報交換とか助け合いとかもしてた。
道中日記っていうのは、今で言うとトラベラーズノートみたいな感じで、旅の道中で寄った場所とか使ったお金とか宿のことが書いてある。旅日記、道中記とも言う。
江戸時代において、紙に書くことはめんどうだから、わざわざ書くには理由があるらしい。
例えば、お金についてめちゃ細かく書いてあるのは、帳簿的な。
伊勢講で捻出してもらったお金で旅をしてるから、お金の出所をちゃんと記しておく必要がある。
宿について細かく書いているのは、次行く人のため。
宿にランク付けして、上々宿とか下宿って記している日記もある。
自分の旅の記録をするためではなく、何か目的があって日記をつけている。
まっそんな研究をして分かったことはふたつ。
ひとつめは、宗教的な目的の旅ではなかったこと。
伊勢参りっていうと、伊勢神宮という天照大神が祀られている神社に行く、宗教的な旅のケースがある。
でも今回読んだ道中日記には、観光的な要素が多くて、そのんなに伊勢神宮に対しての思いは見えなかった。
ざっくり言えば行く先ざきでの寄り道の多さ、書いてある文章の内容から観光って感じだった。
ふたつめは、次のひとのために書かれた日記だってこと。
しおんが読んだ道中日記には、場所の情報と休憩した宿やお茶屋さんの名前、旅で起きたハプニング、観光地で見た景観が書かれていた。
一方で、使った費用、宿のランクはあんまり。
これは全体的にみると、次以降に行く人のために書いた記録書であり、旅のマニュアルみたいな感じなんじゃないか、と。
どんな場所を通って伊勢神宮まで行ったのかはすぐに分かるし、どんな場所で休憩したのかも分かる。これを読めば、同じルートで旅に行ける。
自分たちで作った自分たちのための案内書。
同じ地域から行く旅人たちと宿とのつながり、毎年お世話になっている人、今回お世話になった人、これは自分たちでしか分からない。
旅で起きたハプニング。例えば道中で馬から落ちたとか、ご飯の準備ミスったとか。
これにはほとんど、それをどう解決したのかまで書いてある。
同じことが起きた時のための対処法が。
今回の記録というよりは、次の人たちのための記録なんじゃないか~っていう結論。
この道中日記をはじめて研究したのがしおんだったから、これでいい感じの研究になっているらしい。(教授曰く)
おわり
興味のあるテーマを勉強するのは、読みにくい古文ばっかりでも楽しかった!好きなことを勉強に生かせるっていいね。
卒論やる前の自分に言いたいことといえば、史料ちゃんと集めておけっていうことくらい。
せっかく旅について研究して、旅好きな人が周りにいるので、みなさんが歴史について興味を持つきっかけになれてたら嬉しいな。
長い文章ここまで読んでいただきありがとうございました~!
サポートしてもらったことないから、してほしいな