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掌編つめあわせ

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3000字以下の掌編(文字数ちょっとオーバーしてるのもあるかも)
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#掌編小説

掌編小説『見つめる者たち』

 数年前に起きたM県O町採石場での崩落事故は局所的な大雨が原因だった。当時土砂災害警戒警…

砂東 塩
13日前
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掌編小説『蠢く黒子』

 夕飯の準備をしていたサヨは、恐る恐るトマトの断面に顔を近づけ、小さな悲鳴とともに仰け反…

砂東 塩
2週間前

掌編『波音とエンジン音』

波音とエンジン音 「……しょっぱっ」  そう言って口元を拭う僕を、彼女はクスクスと笑いな…

砂東 塩
1か月前

掌編/フィクション

 悟がくしゃみをした。厚手のカーディガンを着ているし、風邪かもしれない。 「のど飴いるか…

砂東 塩
2年前
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掌編/彩

彩「色は捨てたのですか」と問うと、女はわずかに口元に笑みを浮かべた。 「捨てた? 捨てる…

砂東 塩
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掌編小説/潮目

 境目というのは案外はっきりと見えるものなのかもしれません。  海岸沿いに車を走らせ、展…

砂東 塩
4年前
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掌編/ホットドッグを食べに

 僕は『魔法薬大全』という教科書を机に立て、居眠りを決め込んだ。  月桂樹の葉を0.5mgとか、雀の糞を0.02mgとか、細かい作業は頭がゾワゾワする。  何度も薬の調合に失敗し、挙げ句の果てに有毒ガスを発生させてしまった僕は、先生にも匙を投げられた。 「ジラはこれだけ覚えろ」  魔法薬入門と表紙に書かれた薄っぺらい冊子を寄越し、先生は僕の居眠りを黙認する。  ということで、僕は午後からの飛行訓練に備えて夢の中だ。箒にまたがり、現実では時速60キロ制限のところ、夢だ