見出し画像

心理的安全性を高める工夫【DEI#32】

こんにちは。中小企業診断士のさとうたろうです。
ダイバーシティに関するトピックを紹介しています。

先日、ある企業のダイバーシティ担当とMTGをしました。

 先方:ダイバーシティ経営について何から取り組むべきか?
 私 :Inclusion、心理的安全性について取組むべき。
 先方:心理的安全性を高めるためにはどういう方策があるのか?
 私 :部門横断的なプロジェクトをつくることが有効だと思います。
    あとはCEOからの情報発信。失敗を許容する文化をつくることも
    大切。

まさにタイムリーな心理的安全性の話題。エイミー・C・エドモンドソン氏の「恐れのない組織」で学んだ事例も活用しながらご説明しました。
noteを用いてアウトプットをしていると、いざという時もスムーズに答えられるものですね。

さて、同書の第5章「フィアレスな職場」では、
「心理的安全性を生み出すための企業の取り組み」について触れています。その中で気になった二つの事例を紹介したいと思います。

ピクサー社:ブレイントラスト

トイ・ストーリーなどで有名なピクサー社では、「ブレイントラスト」というミーティングをを導入しています。

数名が数ヵ月ごとに集まって、製作中の映画を評価し、忌憚の無い意見を監督に伝え、創造的問題の解決を手伝うブレーントラストは、1999年に生まれた。(中略)監督たちとストーリーづくりに関わる人たちが、直近に作られたシーンを一緒に見て、ランチをともにし、その後、面白いと思うところと思わないところについて監督にフィードバックするのである。

「恐れのない組織」

ブレインストーミングの発展系というイメージ。どのようなルールをで運営されるのでしょうか?

第一に、フィードバックする際には建設的に、そして個人ではなくプロジェクトについて意見を述べなければならない。同様に、監督は批判に対して過敏になったり個人的なものとして受け取ったりせず、事実を告げる声に喜んで耳を傾ける姿勢を持つ必要がある。第二に、トップダウンにしろその逆にしろ、相手に強制することはできない。監督は作品について最終的な責任を負っており、提案された解決策を採用も却下もできる。第三に、率直なフィードバックは「あら探しして恥をかかせること」ではなく、共感の観点から行わなければならない。

「恐れのない組織」

「個人ではなくプロジェクトについて意見を述べること」
「共感の観点からフィードバックすること」は、ミーティングにおける基本的なマナーであり、「強制されないこと」、「採用も却下もできること」は、お互いにとって意見の交わしやすさにつながりそうです。

ブレイントラストは、中立的で自由に動ける「一団」と言ってよく、個々のメンバーの総和以上の存在と考えられる。人々が安心しひらめきや意見や提案を言うことができると、部屋のなかのナレッジが飛躍的に増える。これが起きるのは、個々の見解や提案が互いをもとにして進化し、新たなものを形づくったり今までと違う価値を生み出したりするためである。

「恐れのない組織」

尚、そんなピクサーでも、残念ながら、ハラスメント問題やその後のMeToo運動により、心理的安全性が崩れてしまったという点も触れられています。「心理的安全性は脆く持続しにくい」という点もtake noteしておきたい事柄です。

グーグルX社:賢い失敗のすすめ

もう一つの事例は、グーグルX社。
グーグルの親会社アルファベットの社内独立部門として活動するこのX社では、ブレイクスルーを生み出す観点から「賢い失敗」が推奨されています。

X社のCEO、アストロ・テラー氏は、2016年のTEDトークで以下のように述べています。

Xでは、安心して失敗してもらうために全力を尽くしている。駄目だという証拠がそろったら、チームはさっさとプロジェクトを中止する。同僚からは拍手してもらえる。マネジャー、特に私からはハグとハイタッチだ。昇進もできる。プロジェクトを打ち切ったチームには、(中略)一人ひとりにボーナスが出る。

「恐れのない組織」

テラーが注目しているのは、失敗することが、わけても職場で、どれほど嫌なものであるかという点である。人は誰しも、周囲の目や解雇されることを心配に思う。そのため、もしリーダーが明確かつ積極的に、失敗を不安なくできるものにしないなら、人々は失敗を避けようとするだろう。

「恐れのない組織」

お蔵入りになってしまった試作品はオフィスに展示され、従業員が体験談を述べる機会が提供されるそう。

テラーとXは、失敗を完全に受け入れているため、プロジェクトで成功したことについては全く話をしない。代わりに話すのは、「賢く失敗できないこと」についてである。

「恐れのない組織」

心理的安全性を考える機会があるか?

あなたの組織では、心理的安全性について立ち止まって考える機会が設けられているでしょうか?
残業が常態化している職場や、パフォーマンスに追われているチームでは、中々心理的安全性を考える機会は得られないでしょう。
トップやリーダーのコミットメントも重要です。

心理的安全性は脆く持続しにくいものです。余裕や遊びが存在して初めて成立するものであることだと考えています。

【参考・引用】
恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす
エイミー・C・エドモンドソン (著), 村瀬俊朗 (著), 野津智子 (翻訳)
出版社 ‏ : ‎ 英治出版
発売日 ‏ : ‎ 2021/2/3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?