正しいスキンケアなんてやっていられない!エステティシャンの登山旅行
エステのお仕事を始めて20年以上のわたし。
お客様には「毎日のクレンジングが大事」「丁寧な洗顔が大事」と鬼のように指導を繰り返してきました。
わたし自身、究極のところスキンケアとは「自分の肌を、毎日どのように洗うのか?」ということだとさえ、思っています。
洗顔する時に、どのアイテムを選び、どんな気持ちで、どのような扱い方で洗うのか?
という様々なポイントが、あなたの肌を決めています。
例えば「すすぎは30回」というのも、重要なポイントのひとつです。朝晩の洗顔時にこれを意識するだけでも肌の透明感は変わります。なんとなくやると7〜8回で終えてしまうすすぎを、優しく顔に水を当てるように30回。洗面所も自分の腕もビショビショになります。
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私事ですが、毎年夏山に登ります。親友のお陰で10年以上続いている登山旅行。1年の中で最も楽しみな休暇です。しかし山の中では悠長に洗顔などやっていられません。
山頂では水は貴重です。洗剤料など菌を殺したり山の環境を汚したりするものを排水するのは極力さけるのが常識です。そのため山小屋では、最低限の水で手を洗い、軽く顔や口をすすぐだけです。
汗だくになった身体は、ウェットシートで拭きます。当然ですがシャワーなどありません。汗や雨でギシギシになった髪は山を降りるまで洗えませんし、日程によっては数日間そのままです。
説明するまでもありませんが、トイレは水洗ではありませんし、紙を便器に捨ててもいけません。
山の強い日差しを1日浴び、ダクダクの汗で流れた日焼け止めは、果たしてどこまで効果があったのかなかったのか。1日を終えると、肌は熱を持ってジンジンとします。
スキンケアもそこそこに、就寝します。山小屋の夜は早く、遅くとも21時には消灯です。扉も仕切りのない屋根裏部屋のような部屋で、見知らぬ人と並んで、シーツもない布団を床に敷いて寝ます。傍には、地面に置いたり雨に濡れたり、背中の汗をたっぷり吸ったリュックを置いて…。
山小屋ではいつもの常識が通用しません。
食事においてもそうです。
私はエステティシャンであると同時に、ファスティングや食育の指導もしています。普段は玄米食ですし、「まごわやさしい」食事を意識しています。しかし山小屋ではそんな贅沢なこと言っていられません。
もちろん登山前にファスティングしてみたり、登山中にファスティングドリンクを補給したり、アミノ酸、ビタミンCをこまめに摂取したり、気をつけることはたくさんあります。しかし限られた資源と環境で作られる山小屋の食事は、揚げ物や加工品も多く、新鮮な野菜やオーガニック食材など多用できるはずもありません。時には、普段なら絶対食べないだろうな…というものも出てきます。
それでも、私にとって山の中でいただく山小屋の食事は、最高の食事です。
また、山小屋の食事は時間も限られていて慌ただしく、ゆっくりいただく、という感覚はありません。イスもパイプ椅子だったり、テーブルも簡易なものだったりして、どこかガタついています。窓を見ると、土や埃で汚れていて、そこによく分からない小さな虫がはりついています。(山小屋によってレベルは違いますが…)
それでも、山小屋で過ごす時間は、どんなラグジュアリーなホテルより贅沢だと思います。窓から見える美しい山の稜線、刻々と表情を変える雲海、何もなくて全てがある、そんな時間は、山頂でしか味わえません。
ちなみに山小屋で缶ビールを買うと、350mlで600円、500mlで800円位します。その缶ビールを買って、山小屋の外に出て、岩に寝そべりながら飲むビールは最高です。
Mountains teach that not everything in this world can be rationally explained.
山は、この世の全てが合理的に説明できるわけではないということを、教えてくれる。
多くの方のスキンケアやファスティングをサポートしてきて思うのも、美容も健康も合理的に説明できるわけではないなぁ、ということです。
エステもファスティングも、大切なのは正しい知識とそれを実践する毎日の習慣。しかしそれが「〜ねばならない!」「〜してはいけない!」とネガティブなルールに縛られるようになると、本末転倒です。
正しいことを貫くことも大事だけど、美しいと感じる心を1番に大切にすること。
それが人を幸せにする健康法や美容法じゃないかな。そんな風に感じています。
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