【読書感想】「十角館の殺人」綾辻行人/「殺戮にいたる病」我孫子武丸

最近「ほんタメ」というYouTubeのチャンネルを見ている。
ヨビノリたくみさんと齊藤明里さんの読書家二人による本愛に溢れたチャンネルだ。

ほんタメ

プレゼンがとても上手いので、紹介される書籍は思わずメモを取ってしまい、次の日は本屋で探していた。

近所の本屋で手に入ってのは、「十角館の殺人」と「殺戮にいたる病」だ。
どちらも二十年以上も前に発行された作品である。それでもロングセラーとして書店に置かれているのだからすごいな……。
多少の価値観の差はあれど、傑作の二作だと思う。

◾️以降、雑記であり、ネタバレはあまりしない…つもり

【十角館の殺人】
綾辻行人のデビュー作。名前はよく見ていたが読んだことはなかった。ミステリーの文体は硬いものが多く、さらに普段読書でも頭を使うのに謎にまで頭が回らず、読み切る自身がなかったのだ。
それでも著名作家は読むべきだと思っていたので、十角館に触れる前に、「暗闇の囁き」を読んだ。これがかなりサクサク読めたので、この文体ならばいけるかもなと思い手に取った次第である。
実際登場人物は多いが、章で視点の固定と書き分けのうまさがあったので、サクサクと読めた。

率直にいうと、私は見事に驚いた。私が読んだのは新装改訂版なので、例の一文がページを跨いでそこにある。それをほんタメでもプレゼンで紹介されていたので、読むのが楽しみだった。そして前ページを読み返した。

今手元にないので雑観であらすじを語る。
大学のミス研トップ連中が、曰く付きの孤島の十角館につてで連泊をすることになる。一方本土では元ミス研の江南の手元に妙な手紙が届いており、どうやら孤島へ行っている連中の起こしたとある事件と関係がある怪文書だった。江南は協力者とともに、この文書について調べることになる。
そして孤島、十角館では、第一の殺人が始まった。

孤島で起きる事件と、本土でそれと関連するとある事件を探る場面が交互に描かれるので、追う謎が多くなる。その分考えることも多く惑わされる、というか、探偵役の一説に騙される、納得してしまうのだ。私は大人しく騙される側でいようと思う。ラストシーンも好きだ。あれはもう、なんだろうな、作者の慈悲だよな、と思う。

【殺戮にいたる病】
我孫子武丸著。これも二十年前の作品である。シリアルキラーを題材にした作品だ。
読んでいる時に、私が小学生かくらいの時の、ミステリードラマの再放送画質で映像がたびたび浮かんだ。で、現代版にしたらどうなるのだろうな、ということも考えながら読んだりした。
結果、これ映像化無理やな……となった。
叙述トリックというか、これもどんでん返しなわけで………。
いや演出家の人が頑張ってくれればいけるかもしれない。頑張って欲しい。

構成はドキュメンタリーっぽいなと思った。というのも、最初に犯人の名前がわかってしまうし、逮捕されてしまう。どうしてそうなったのか、といろんな視点で後追いしていくので、ドキュメンタリーや再現Vを思わせる。素人考えでいうとスリルやハラハラ感というよりもシリアルキラーの心理だとかに焦点を当てた構成だと思う。

蒲生稔が、定年退職した元刑事、樋口の通報によって逮捕された。
なぜ彼は凶悪な事件を起こしていったのか？　当時センセーショナルだったであろう殺人事件と絡め、シリアルキラーの心理と凶行が描かれていく。

犯人の名前は、冒頭で明かされるのでネタバレとはならない、と、思う。

作中に「この事件を本にする」と発言している登場人物がいるので、この本自体もその登場人物が記したみたいな気持ちになる。作中現物。そんなつもりはないのかもしれないが、ニクいな〜と勝手になる。

正直おすすめは人にはできない。なぜなら描写がめちゃくちゃエグくてグロい。面白かったよ！　というと倫理が疑われる気がする。「すごかった」というのは、許されるだろうか？

あとのちに有料部分で言いたいんですけど、ある有名な歌手の歌詞がめちゃくちゃ引用されてくるんですよ。許されるんか？

◾️まとめ

どんでん返しミステリーで、どんでん返されなかったらどうしようと思っていたりした自分が馬鹿であった。ロングセラーやぞ。小説という文章と構成、作家の意匠を凝らしたギミックが面白くないわけがない。小説ならではの仕掛けが素晴らしかった。最近のどんでん返しものも読んで見ようかなと思った次第である。
おすすめがあったらぜひ教えて欲しい。

以上、読書感想文である。

以降は、ネタバレをバッチバチしている所感である。ネタバレ書くともう布教にできないけど書きたかった。ので有料とさせていただく。購入されると次の本代の糧になります。