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小説

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2019年9月の記事一覧

星の箱

星の箱

 箱をこじ開けると、悪魔が飛び出た。
 星雲とブラックホールを混ぜ合わせたような靄は響く笑い声とともに渦を巻き、ヒトの形を成していく。掌に乗るほど小さな箱の上に、先の尖った靴が揃えて乗った。重さがまるでない。ホログラムでないのなら、悪魔だ、と青年は思った。
「眩しい!」
 細身ので長身すぎる、真っ黒な服に身を包んだ男は、近すぎる照明に退いた。
「箱を地面に置くかなにかしてくれないか」

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あそこにベンツが停まっていますねから始まるBL 2

あそベン2

 広い。高級なにおいがするミスト。応接間でも座ったことのない質のいい革のソファー。流石にドラマで見たような果物はなかったが、高瀬の足元にワインの瓶の影が見えた。
 高橋は目ばかりを忙しく動かす。どこに行くのかもまるで尋ねる暇もなく成り行きで乗りこんだリムジンは、一体どこへ向かうのだろう。
「……あの、すごい、ですね……」
「リムジン?」
「はじめて、乗りました……」
 恐縮しきる高

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「あそこにベンツが停まっていますね」から始まるBL

あそベンBL

「失礼。煙草いいですか」
 顔色の悪い、よれたスーツを着た男から声をかけられた。ぼんやりと座っていた眼鏡の男は、少し慌ててあたりを見渡した。公園には子連れの親が数人いたが、距離は離れていた。
「ええ、どうぞ」
 身を縮めて、ベンチの隣を空ける。
 顔色の悪い男が首にかけているストラップが、同じ会社のものだった。
 見たことがない。階か部署か、異なるのだろう。
 男はどっかりと腰を

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