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各国の路面電車マグネット

乗り物、特に電車の描かれたマグネットは数多くありますが、今回は国内外各都市のシンボルとして路面電車(トラム)が描かれているご当地マグネットに絞っていくつかご紹介します。

そもそも路面電車の歴史ですが、発達の仕方としては
① 19世紀頃すでに街が栄えている
② 馬車が増える
③ 馬車鉄道に切り替わる
④ 電気式に切り替わる
⑤ 自動車が増え渋滞の原因となる
⑥-a バスや地下鉄に切り替わって滅びる
or ⑥-b 観光用に残される
という経緯を辿るケースが多い模様です。実は東京都電(現在「さくらトラム」という名称)もこのパターンです。
さらには近年日本では、
⑦ 地方都市で人口増加したが今さら鉄道は敷けないので安価・低環境負荷なものをライトレール・トランジット(LRT)と称して設置する
などの事例も見られます。(国交省が2005年からLRTの整備を推進する事業を支援するため「LRTプロジェクト」を創設しています。)


サンフランシスコ・ケーブルカー

サンフランシスコ・ケーブルカーのマグネット

「路面電車って言ってたのに、のっけからケーブルカーか」という点はご容赦ください。丘の街、アメリカ・サンフランシスコの坂道を登ったり下ったりする、有名な、実質的に路面電車(ただしケーブル方式)です。
サンフランシスコを縦横に走る3路線があります。車両自体に自走力は無く、約150年前からずっと、地下をぐるぐる動くケーブルを各車両が掴んだり離したりしながら走る方式が変わりません。乗務しているのは、車掌と「グリップマン」。グリップマンはレバーを操作し、てこの原理でケーブルを上手く掴んで走行します。これがなかなかの職人芸であり、テストに合格した人でないとグリップマンにはなれません。構造上、一方向にしか走れない車両を使う路線の終着点(フィッシャマンズワーフ等)にはターンテーブルがあります。係員がここで「よっこらしょ」と力技で車両の向きを変える光景が観光名物になっています。
なお今では観光需要が主になり、地域の物価高+観光価格で、1回乗車で$7もします(1日フリーパス割やアプリ割等はあり)。
うかつにカッコよく飛び乗ると、はい1,000円。


クライストチャーチ・トラム

クライストチャーチ・トラムのマグネット

現在このニュージーランドのクライストチャーチのトラムも観光需要がメインです。ワンデイパスが大人NZ$40=約3,600円か…と先に料金に目が行ってしまいましたが、運転手が気の利いた観光地案内アナウンスもしてくれるそうなので、その分を考えれば()
このトラムも約150年前の登場ながら、経緯としてややイレギュラーなのは、当初の蒸気機関方式から一旦馬車方式に変えた時代があったというところと、完全廃線から観光用に復活させたというところでしょうか。かつては網目のように張り巡らされた路線も、現在は変形8の字状に市内観光名所を巡るする1路線のみが残ります。
マグネットについてはニュージーランドのコーヒブランド、Gregg'sの広告入り車両になっています。


リスボン・トラム

リスボン・トラムのマグネット

ポルトガルのリスボンを走るトラムのマグネットです。地元ではエレトリコ(elétrico)という愛称で親しまれています。典型的な、「馬車鉄道からの電化、その後バスや地下鉄への置き換わりで縮小」というパターンを辿っていますが、まだ5路線残っています。電化は1901年です。現代は実用&観光用の兼用。近代的な新型車両が主力になりつつ、観光資源としてマグネットのようなレトロな「改修車」もしっかり走らせています。観光でせっかく乗るなら改修車がいいですね。別途街中を走るケーブルカー路線もあります。
鉄分情報としては、架線がありパンタグラフで給電される方式なことと、「ガントレット(単複線)」と呼ばれる『狭いところを相方向に走れるよう、線路が重なっているけど分岐ではない線路』の構造があるということでしょうか。(伝われ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%98%E8%A4%87%E7%B7%9A
気になる運賃は、車内で払うと€3.0ですが事前購入かプリペイドなら€1.5(約250円)で、まさに実用的という感じです。


メルボルン・トラム

メルボルン・トラムのマグネット
メルボルン・トラムのマグネット
メルボルン・トラムのマグネット
メルボルン・トラムのマグネット

24路線の総延長250km、停留所数1700以上、在籍車両数475両以上という世界最大の路面電車ネットワークを誇るメルボルン・トラムのマグネットです。こちらは現在でもガッチリ実用交通網。観光者向けの伝統的車両もあります。ちなみに総延長250kmは、東京メトロや西武鉄道や大阪市営地下鉄よりも長いです。
2時間で豪$1.5から乗れて、さらに市街地ゾーン内のみならなんと無料。乗りこなすと便利ですが、無料ゾーンと有料ゾーンを跨ぐときの料金支払いはどうするんだろうとか、やや予習が必要かもしれません。


香港・トラム

香港トラムのマグネット
香港トラムのマグネット

屋根付き2階建の香港トラムです。横に倒れてしまわないかと心配になるほどノッポの車両。その車体側面はマグネットで描かれているようにベタっとしていますが、近年は広告てんこ盛りです。とてもカラフルなのですべてを並べて眺めてみたくなります。
運賃はなんと香港$5=90円。安いのは、並行する別会社の地下鉄(MTR)と激しく争っていることと、広告費だけでけっこうな収入源だからではないかと推測されます。伝統的なオープントップ(はとバスの2階建バスと言えば解る人には解る)の車両が走っていて、観光でこのオープントップに乗ろうとすると別途ツアー料金が掛かります。


江ノ電

江ノ電のマグネット
江ノ電のマグネット
江ノ電のマグネット
江ノ電のマグネット

鎌倉の江ノ電=江ノ島電鉄株式会社です。
詳しい方は、「江ノ電は併用軌道(道路上に敷いた線路)の区間もあるけれど、法律上は軌道法に基づく路面電車ではなく、鉄道事業法に基づくれっきとした鉄道である」ということをご存じかもしれません。ただし実は、江ノ電は1900年の開業当初は路面電車でした。これが第二次世界大戦中、「東海道線が被害を受けた場合の迂回路として利用できるように」という国のご都合主義的判断で、鉄道への変更が行われました。(結局タイミングは終戦後)
だからといって違法に道路上を走り続けているというわけではなく、「鉄道線路の道路への敷設の許可手続を定める政令」に基づいて、国から特別の許可を受けています。

江ノ電、初乗り200円、1日乗車券800円とお得になっております。


長崎電軌

長崎電軌マグネット
長崎電軌マグネット

長崎電軌鉄道は長崎市内を走る路面電車。バラエティに富んだ車両があって、そのうち3種類の車両が連結できるようになっているマグネットです。
地元では、ちんちん電車または単に電車と呼ばれているようです。路面電車を電車、JRを汽車と呼び分ける地方都市あるあるがここにも。1945年8月9日の原爆投下による全線不通も乗り越えて走り続ける、市民の大切な足。


おまけ

気になったので、日本の路面電車(都市)を並べるだけ並べてみました。

札幌市
函館市
宇都宮市
都電(東京都)
東急世田谷線(東京都) ※ただし供用軌道区間無し
富山市
豊橋市
福井市
高岡市
京阪大津線(京都市、大津市)
京福嵐電(京都市)
阪堺電軌(大阪市、堺市)
岡山市
広島市
高知市
松山市
長崎市
熊本市
鹿児島市

けっこうありますね。マグネット化意欲は少ないみたいですが。