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書評:チェーホフ『桜の園』

チェーホフから読み解くロシア農奴解放後の心境とは?

今回ご紹介するのは、ロシア文学よりチェーホフ『桜の園』。

本作は、農奴解放後に没落せんとするある地主一家にて起こる、所有地「桜の園」を手放すことを巡る顛末を描いた作品である。

時代と環境に流されるままの、善良なだけの女主人。
旧時代的偏見に囚われたままの兄。
忍従だけが取り柄の長女。
楽天的な未来志向の次女。
旧時代の奉公心を保ち続ける老従僕。
礼儀を失した新時代的な従僕。

様々な人間が短編の中で交錯しあう劇作品となっている。

中でも私がこの作品で光る存在と感じたのは、実業家ロパーヒンだった。彼は、百姓の出でありながら時代の流れを的確につかみ、成功した人物として描かれている。その成功による傲然たる側面を持ちながらも、かつての主人格であった女主人の破滅を見過ごすことができない側面も合わせ持っている。彼は最後まで、現実的な方策を打つべしと奉公的な助言を続けるのだった。

人の持つ現実的な利害感覚と、利を超えた感情との矛盾とバランスを見事に体現させた形で描かれた作品である。

全体的に登場人物が何かしら魅力的で、劇で見てみたいと思う作品でもあった。

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さて、以下は雑談。

多くの日本人が桜を愛するのに漏れず、私も桜が大好きである。

学生時代は東京の三鷹市に住んでおり、井の頭公園が近くだった。井の頭公園の中央には東西に長く伸びた池があるのだがある春の早朝、この池の西端にある小橋の上を通ったところ、池の東端の向こうから朝日が昇る瞬間を見ることができた。北岸と南岸から池を覆うように咲く満開の桜のトンネル(誇張しすぎ)を切り裂くように昇る太陽という構図が美しく、しばらく立ち尽くして見ていたことがあった。

また社会人になってからは、毎年新宿御苑の桜を見にいくようになった。新宿御苑は有料(200円)でお酒の持ち込みも禁止なので、花見というよりは桜観賞・散策といった感じだろうか。

今年はコロナ禍の影響もあり行くことができず、残念である。

今年は桜絡みで久しぶりに珍しい光景を見ることができた。東京では、桜が咲いた時期に雪の降る寒さの日があったのだ。私の記憶では、学生の頃に一度そうした光景を見たことがあったのだが、その際に写真を撮ることができなかったことがずっと残念だったので、今回はご近所であるが写真を撮ることができ、満足である。


読了難易度:★★☆☆☆(←短編だが戯曲調なので)
ロシア版戯曲の特徴出てる度:★★★★☆
「チェーホフ」と「チェ・ホンマン」を混同しちゃうとか言うヤツは流石にネタなので信じちゃいけない度:★★★★★
トータルオススメ度:★★★☆☆

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