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書評:ウィリアム・H・マクニール『世界史』

文庫で読む世界史通史(ベストセラー)

今回ご紹介するのは、ウィリアム・H・マクニール『世界史』という著作。

世界史というのは、高校生くらいまでだと暗記が多く大変だったり、年号が無機質で楽しくなかったりと、向かい合うのが難しかった科目だという思い出を持つ方も多いのではないかと思うことがある。

かく言う私KING王も、受験勉強という必要性から人一倍勉強した部類の人間だとは自認しているが、正直最後まで苦手意識を拭うことはできなかった。

しかし、歴史を知りたくなってくるのは大抵世の中のことや専門的なことを知ってからであったるするのだが、そんな時に、高校の教科書や資料集を引っ張り出して学び直すのも相当難しい。

読み物としての歴史本が、いつの時代も良く読まれるのはそんな理由からではないだろうか。

さて本著であるが、10年程前に良く売れていた著作だ。

繰り返しですが、通常世界史と言えば、大学受験ではまず語彙量がベースとして必要で、膨大な数の用語を片っ端から頭に詰め込まなければならない。このような状況は止むを得ないにしても、これで世界史の流れを掴むことは非常に難しいことだ。

本著は、そうした語彙の散乱から極力解放された内容となっている。世界史の流れへの影響が薄い固有名詞を極力排し、徹底した文明史観で世界史の流れを把握できる構成となっていると言って良いだろう。

読み物として非常に読みやすい著作だ。

更に、本著の良い点はそれだけではない。

それは、文明の揺籃から衰退までの「契機」の分析が徹底している、という点にある。

これによって、「何故」「どのように」が強調されることになり、正に「流れるように」世界史を把握できた気分で読み進めることができるのだ。

年代は約500年区切りで纏められている。

古代史に上巻の約半分を費やすというバランス感覚も、「大局を読む」という本著の目的に如何にも適合していることが伺える点だろう。

文明の起こりと衰退。
そして次の1000年へ。

世界システムと呼び得るものは確かに存在し、ある程度は我々の未来の方向性に影響を与えることだろうと思わせてくれる。

しかし、本来文明とは多元的なものです。文明間の相互浸透のダイナミズムから次の覇権が決定していくはずだ。

本著においては、覇権文明のパワーと浸透力は確かに確認することができる。しかし、対抗勢力のカウンターパワー(覇権文明が外部から受け取り込んだ影響)の重要性は少々看過されているかもしれない。

特に現代という時代を考えると、大局的に見渡した時、地球規模の問題群はいずれもこのカウンターパワーの変調の結果と見れるのではないかと私は考えている。

確かに人類史という観点では、カウンターパワーはいつの時代もマイノリティであり、最終的には封殺されてきたのが事実かもしれない。しかしそのことは、現在我々が直面するカウンターパワー契機の問題を黙殺して良いことを些かも意味するものではない。

ただ、この点は本著のテーマを大きく超えるものだ。

カウンターパワーとマイノリティの問題は、読者が各々の問題意識のもとに取り組むべき課題として、本著により投げかけられているという捉え方もできるかもしれない。

読了難易度:★★☆☆☆
世界史の流れ把握度:★★★☆
覇権文明重視度:★★★★☆
トータルオススメ度:★★★☆☆

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