書評:シェイクスピア『リア王』
シェイクスピアに見る人間の醜悪性による悲劇
今回ご紹介するのは、イギリス文学よりシェイクスピア『リア王』。
『リア王』は、シェイクスピア四大悲劇の1つとされる作品であり、私が恐らく一番好きなシェイクスピア作品である(「恐らく」なのは私の中で『マクベス』と拮抗しているため)。
本作が他の悲劇作に比して際立った点は、超人間的(神的、または霊的)な要素が全く登場しない点、つまりは全てが人間による人間の悲劇であるという点にある。
その意味において、人間に対し最も辛辣な風刺的要素を備えた悲劇はこの作品と言えるかもしれない。
本作では、虚飾、盲目、裏切り、絶望・・、といった人間のあらゆる汚点が無尽蔵に噴出しては登場人物らが互いにそれらをぶつけ合う。善良な魂であってもその怒涛に抗うことはできないストーリーとなっている。
正直、身も震うような思いをする作品だ。
さて、その内容的な読みごたえは言わずもがななのだが、この作品には構造的な面でも傑出した点が見られる。
一言で言うと、人間同士のぶつかり合いが複層的な構造を持っているという点だ。
◯リア王とその娘たちという層
◯娘たち同士という層
◯リア王と臣下という層
◯グロスターとその息子たちという層
◯息子たち同士という層
と、驚くほど裾野は広がっていきます。
「こんなに物語を拡散させて大丈夫なのか、収拾はつくのか」などと一介の読者でしかない私ごときが心配でハラハラするほどであった。
それがわずか200ページ弱という短編の中で見事に収斂されていく。この手腕には脱帽としか言いようがなかった。
『リア王』、恐るべしである。
読了難易度:★★☆☆☆(←戯曲な分だけ)
人間の醜悪度:★★★★☆
構成の完成度:★★★★★
トータルオススメ度:★★★★☆
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