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書評:シラー『群盗』

ドイツ文学で戯曲作家と言えば?私はこの人編

今回ご紹介するのは、ドイツ文学よりシラー『群盗』。

シラーはゲーテと並び称される巨匠であるが、単純な個人的好みとして私はシラーが好きである。

『群盗』はシラーが18歳の時の作品で、後年シラー自身が「若さゆえの未熟さがあった」と振り返ったそうだが、確かに例えば戯曲としてはセリフが長く冗長かなと感じる部分などもあったものの、私はむしろ冗長大歓迎派なので、充分に読み応えのある作品だと感じた。

以下、概要。

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主人公カアルは、弟フランツの姦計により盗賊の頭に身を落とすこととなる。
ストーリーは以下のような要素が並走する形で進んでいく。

・カアルを取り巻く盗賊どもの仁義・忠誠や嫉妬
・姦計により権力の座についたフランツの孤独・猜疑心
・カアルを愛しながらもフランツの姦計に甘んじ、自責の念に煩悶する父
・一途な愛を貫き通す嘗てのカアルの恋人アマリア

これらが見事に立体的に構成され、作品のクライマックスにおいて全てが一気に集約され、悲劇的な結末を迎えることになる。
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シェイクスピア的な悲劇性もあるものの、高潔な精神、正義感、そして責任感を彷彿させてくれる作品であった。

余談であるが、この本を古本で買ったのはちょうど復刊が未定だった時期であった。まだまだ読書駆け出しだった当時の私にとっては、レアな本を買うことができたような気がするちょっと嬉しい買い物となった。その感覚を今でも引きずっており、この作品に対して愛着のようなものを感じているのも事実である。

以上、簡単な感想であるが、こういう作品、好きだ。

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さて、以下は雑談。

私がドイツという国を知ったのはいつの頃のことだっただろうかと、ふと振り返ってみた。

思い出したのは、子供の頃夢中で見ていたサッカーアニメ『キャプテン翼』で初めてドイツを意識したということであった。

確か、翼くん達が中学生の設定の時だっただろうか、ジュニアユース編みたいなのがあり、世界各国の代表チームと戦うのだが、その話の中で西ドイツ代表のエース、カール・ハインツ・シュナイダーというキャラ(子供の頃に印象に残った名前ってフルネームで覚えてたりするよね)が、皇帝とか呼ばれちゃってて(幼き日の私は「こーてー?」だったが)、めちゃ最強という設定で、なんだか興奮してしまった。

翼くんのテクニックと日向小次郎のパワーを兼ね備えた男、みたいなノリのキャラで、友達たちと「やべー奴がいるぞ」とか「志村けんと加藤茶が一人みたいな?」とか、想像しては震え上がったり全然震え上がらなかったりしたものだ。

その後、ドイツに関して子供ながらに衝撃だったのは、やはり1989年のベルリンの壁の崩壊である。この時もまだ子供と言って良い年齢であったが、ジャンプとファミコンのことしか知らなかった私にとって、海外で起こっている現実の事件というものに初めて目を奪われたのがこの事件だったように思う。
(壁に登ってツルハシを振り下ろす青年の姿が目に焼き付いている)

とは言えアホだったので(当時の私にあだ名をつけるなら、さしずめ「鼻水泥男(はなみずどろお)」と言ったところだろうか、鼻垂れ小僧的な感じで)、ベルリンの壁は東ドイツと西ドイツの国境線上にめちゃ長いのがあるものだと勘違いしていたという恥ずかしい思い出でもある話だ。

芸術分野にもようやく知識が増えてきたのは中学以降だろうか。
中学くらいになると周りにヘッセとか読む奴が現れ出して(私はジャンプ読んでて)、高校になるとカントとか読む奴も現れて(私はジャンプ片手に受験勉強で世界史を勉強し始めて)、ドイツに対する人として最低限度の知識を得るようになった。

ドイツの文学や哲学を読むようになったのは大学からである。

読了難易度:★★☆☆☆(←短編ですが戯曲なので慣れていないと読み辛さあり)
戯曲の良さ度:★★★☆☆(←シェイクスピアの方が上でしょうね)
トータルオススメ度:★★★☆☆

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