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見送るということ #01

父の最期を病院で見届けると、すぐに病院の一室へ仮安置された。
さっきまで病室のベッドでチューブや酸素マスクを着けられていた父の身体は看護師さんたちによってきれいにされ、新品の浴衣に着替えさてもらった。
ありがたい事だ。

やがて、葬儀屋と思しき二人の男性が担架とともに入ってきた。
父の遺体と僕に深く一礼し手を合わせた後、丁寧に担架に乗せる。
僕らは病院の裏口から出るらしい。
人気の少ない出口へ向かうと、白衣をなびかせながら医師がやって来た。
父の最期を見てくれた医師だ。医師と看護師さんたちが深く一礼して父を見送ってくれた。
入院中はわがままや暴挙で看護師さんを困らせたはずなのに。
僕は胸の中で「ありがとうございました」の言葉を父に代わって医師と看護師さんたちに向けた。

父を乗せたクルマは葬儀会場の控室へと向かう。
死亡診断書がないとクルマで遺体を運べない、という事を初めて知った。
知らなかった。

これから当分の間、初めての事ばかりが続くんだろうな。
悲しみが欠落した僕はそんなふうに思っていた。

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