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アフターデジタルとジョブ理論

先週、今話題の書籍「アフターデジタル」著者の藤井さんと対談し、以前より参考にしていた「ジョブ理論」の重要性をあらためて実感。これからマーケティングは状況ターゲティング、ジョブターゲティングの世界に。

アフターデジタルとは何か

アフターデジタルとは、(株)ビービット東アジア営業責任者であり、上海支店でUXを中心としたコンサルティグを行う「藤井保文」さんが主著者として書かれた、オフラインがデジタルに包括される世界で企業がいかなる戦略を取るべきかのヒントを与えてくれる書籍です。

最早、日本のはるか先を行くデジタル先進国となった中国での取材を中心に、モバイルやセンサーが偏在し、人のあらゆる行動がオンラインデータ化され、オフラインがデジタル世界に包含された社会において、どのようなユーザー体験を企業は構築する必要があるのかを、デジタル先進国である中国企業の事例等を中心に紐解き、日本企業がデジタルトランスフォーメーションを進めていけば良いのかが描かれています。

デジタルに関わる人の間では、いま大変に話題となっており、私個人としても今年読んだビジネス書籍の中で、最も感銘を受け、またヒントを頂いた書籍でした。

アフターデジタルの時代における重要キーワード

アフターデジタルで何が書かれているのか、その詳細はぜひ書籍を読んで頂ければと思います。アフターデジタルの世界では「モバイルやセンサーが偏在し、人のあらゆる行動がオンラインデータ化され、オフラインがデジタルに包括されている」状態を前提としていますが、これから5Gの導入が始まりIOTが急速に進化していく日本は、近日中にこの状況に突入していきます。

その時代において、我々はどのように進化しいくべきなのか、盛りだくさんの情報の中から、自分としては特に以下の2つのキーワードを最重要キーワードとして選びました。

・テックタッチ、ロータッチ、ハイタッチで定義されるOMOモデル
・状況ターゲティング

OMOモデル(テックタッチ、ロータッチ、ハイタッチ)

藤井さんは書籍の中で、オフラインがデジタルに包括されるデジタル先進国で成功している先進企業は、「オンラインとオフラインを分けるのではなく、一体として捉え、これをオンラインにおける戦い方や競争原理から考える」事を基本としていると語っています。

そして、O2Oのように、一方通行の考え方ではなく、OMO「Online Merges with Offline」、デジタル接点もリアル接点も相互にリンクし一体となって顧客体験を作る状態を前提として、マーケティング面だけでなく、企業のバリューチェーン自体が「体験」を中核として設計されている事が重要であると指摘しています。

その中で、具体的に「デジタルで接触する(テックタッチ)」、「店舗や人々が集う場としての(ロータッチ)」、「店員や人との濃いリアルコミュニケーションである(ハイタッチ)」と、顧客接点を分類した上で、それぞれのタッチポイントが顧客体験上でどのような役割を果たし、全体として一貫した顧客体験を形作るのかを、具体的な事例にあてはめて解説してくれており、書籍の中で事例として語られる先進的な成功企業は、このOMOを駆使し、「製品」では無く「製品も含めた包括的な体験」を、そのコアな「提供価値」とする事で成功している、という事が語られています。

状況ターゲティング

アフターデジタルを理解する上で、書籍内で紹介されている中国のBtoC向けECでシェア第2位のJD.com(京東)の無人コンビニ担当のトップに会いに行った際のお話が非常に参考になります。「何故オンライン企業が無人コンビニも出すんですか?」という藤井さんの質問に対し担当者は以下のように回答してます。

「オンライン、オフラインとチャネルで分けるのは、企業目線の考え方だと思うんです。ユーザはその時一番便利な方法で選びたいだけなんです。水をECで箱買いしていても、のどが乾いたらコンビニで買いたい。オンラインとオフラインはもはや融合しているので、その選択肢を広く提供することが、より幅広く価値提供するために重要だと思っています。そもそも、我々にとって無人コンビニはただのUIで、モバイルやPCと同じなんですよ。無人コンビニでは、個人が認証されて買い物をするわけですから、購買データやその人の挙動は全てIDにつながって獲得できるわけですよね。それってモバイルやPCで買い物するのと、何か変わりますか?」

この話は非常に重要な示唆を含んでいます。自己流に要約すれば、「ユーザーは、ある状況において、解決したい(何か)を達成する為に、最適な方法を選ぶだけであり、デジタルデータとして全ての行動データを把握できる世界においては、その状況に合わせた解決方法を企業は提供、体験価値を高めるべき」であると言っているわけです。

そして書籍の中で藤井さんは、企業が提供する「価値」が、「製品」から「体験」へとシフトし、センシング、IoT、モバイルが発達、人間を状況単位で捉え、その状況に最適なコミュニケーションが可能になった事で、企業は顧客ターゲットの考え方自体を「属性」から「状況志向」に変えていく必要があると語っています。何故ならユーザーが求めているのは、「自分が特定の状況において解決したい(何か)を、最適な手法で解決できる方法を求めており、それ自体が体験」であるからです。

つまりアフターデジタルの世界では、従来の趣味志向やデモグラなどの顧客ターゲティング手法では通用せず、顧客の状況をターゲティングできなければ、勝ち抜く事は出来なくなるという事です。

状況ターゲティングとジョブ理論

この状況ターゲティングの説明を読んだ時に、真っ先に頭に浮かんだのが、クレイトン・クリステンセン教授の著書「ジョブ理論」でした。ジョブ理論では、まさに、「人がある状況において解決したい何か(ジョブ)を達成する為に、どのような製品やサービスを選ぶ(雇用)するのか、そしてそれを雇用する背景に、どのような情緒的・社会的背景があるのか」を、論理的に把握する為の方法論を説明しています。

アフターデジタルの世界において、「状況をターゲティング」していく為には、単にデータとして行動や結果を把握できたとしても、それはデータの収集でしか無く、体験としてはフィードバック出来ません。

データや行動観察を通じて、ユーザーの置かれている「状況」、そこで「何を解決したいと思っているのか(ジョブ)」、そこでユーザーに「選択してもらうには何が必要か(雇用)」、そしてそれにより体験価値として「どのような情緒的・社会的なご褒美」を提供するのかを、綿密に計画し設計する必要があります。そしてデータを用いて、その体験を磨き上げていくPDCAを高速に回して行く事が競争力に繋がると考えられます。

また個人的には、この「ジョブ」を把握する為には、人間の持つ優れた「直感力」や「妄想力」が必須であり、それを利用するには定量化されたデータだけでは限界があり、行動観察を通じた定性的な分析とデータを使った定量的な分析の両方を融合させる「右目・左目分析」が、必要になると考えています。

「右目・左目分析」については、自分の作った造語ですので、そのうち、Noteにて詳しく書きたいと思いますが、興味のある方は、原作を担当しておりますコチラの漫画「デジマはつらいよ」にて描いているので、興味があればご覧ください。


アフターデジタルの世界を生き抜く為に

アフターデジタルの世界で、我々マーケターは、企業のデジタルトランスフォーメーションの推進役となっていく事が求められると思います。その中でデータを活用した状況ターゲティングを実現していく為に、その一つの地図として、あらためて「ジョブ理論」を学び直す必要があるのではないでしょうか?

デジタルトランスフォーメーションにおける、マーケターの役割については、こちらのNOTEで書いてますので、よろしければ、合わせてお読みくださると幸いです。(すごく長文になってしまいすいません)


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