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第三十三回文学フリマ東京(21/11/23)成果物報告①(桃鞜2021秋号)

文学フリマ訪問


こんにちは。少し前の出来事ですが、21年11月23日(火・祝)に開催された第三十三回文学フリマ東京に行って来ました。半年前に東京で開催されたのに続き2回目の訪問です。前回訪問した時には、「買おうかなー」と思いつつ、結局買わずに後になって「買っておけばよかったかも・・・?」と思うものも多かったので、「なにかしら引っ掛かったものは買う」という方針で臨みました。

積読本はたくさんあるのに・・・

事前にチェックしていた「こもれび」と「桃鞜」以外はすべて「引っ掛かった」もののはずだけど、1週間以上経ってこの写真だけみると何に「はて・・・、何に引っ掛かったか?」と思わないこともないのですが、事前に目をつけていた「桃鞜」について感想を書いてみたいと思います。

出展している「桃鞜社」(とうとうしゃ)とはゲイの読書サークルを母体とした、2020年秋に設立されたサークルだそうです。前回の2021春号も事前にTwitterでその存在を知り購入、楽しく読むことができたので今回の新作も楽しみにしていました。(なお、「桃鞜社」とは平塚らいてう先生の「青鞜社」から拝借しているとのこと。)文芸フリマでのサークルもピンクが目を引きます。毎回、テーマを設けて数人が執筆しており、今回の2021秋号は「浮気するゲイ、されるゲイ」というテーマで5篇の短編が収録されています。ということで各篇ごとの感想です。

愛のてりやき

てりやきバーガーが好きでもたまにはビックマックを食べたい、浮気なんてそんなものとする「俺」。そんな「俺」が見たものは・・・

主人公の「俺」って、簡単に浮気する。1回だけの関係なんて、なんとも思っていない。そういうゲイは多い(とは聞くけれど、私の周りにそういう人はあまり多くないので、まあたくさんいる、ということで)のだけれども、主人公の「俺」が彼氏とつきあうまでの過程は、すごく時間がかかってる。
純朴ですよね。だからこそ、彼氏不在の間に簡単に浮気してしまう「俺」ってものすごく軽い存在である。軽薄である。そしてとっても自分勝手。多分、この「俺」と私は友達になれないと思う。でも、そういう軽薄で自分勝手に振る舞って、最終的に恋人からラストの言葉を言われてみたいなぁ、とも思ってしまう。そんな自分が、少し悔しい。

浮気代行

浮気をされて振られた主人公がアプリを開くと「浮気代行します」というメッセージが・・・

まず、「浮気代行」というタイトルを見て、昔見た「世にも奇妙な物語」の「復讐クラブ」という話を思い出した。調べてみると1991年放送とのこと。30年前。1991年。平成3年。H3。話変わるけど、若い子が年齢を書くときの「H●」っていう表記、あれなんなんですかねぇ。(そんな私はS5●)素直に年齢書けばいいじゃない。昭和生まれに対するマウンティング?

閑話休題。

タイトルのとおり、浮気を代行するお話。浮気相手を特定する際の、SNSをしらみつぶしに調べる描写がやけにリアル。うん、でもやるとなったらSNS総当たりだよね。ラストシーンの「僕」の最後のセリフに対して、「いやいや、お前は絶対・・・」というツッコミを入れずにはいられない。

定義

とある傷害事件。被害者、加害者それぞれの言い分は・・・。

被害者と加害者のセリフだけの展開は、恩田陸の「Q&A」かのよう、と私が何を思い出したか、最早どうでもよい。いや、これとにかく問題作だと思いますよ・・・。

下手に感想を言うのも憚られる作品なのですが、よく言えば「みんな違ってみんないい」なのかもしれないけれど、違いすぎる故に・・・(とここまで書いて本当に頭がジンジンしてきたのでここまで)。

手紙

彼氏が海外勤務となり、遠距離恋愛になった啓介。彼からはときおり手紙が届くが・・・。

私の心をえぐってくる作品である。出会い頭にぶつかって、ブルーになるし、辛くなる。「桃鞜」2021春号にも同様に心をえぐってくる作品があったので、これは何かのルーティンなのでしょうか。

この2人、完全に冷め切っているけど、遠距離を理由に「なぜか」別れない。ズルズル。そこがゲイっぽいと思ったのだが、よくよく考えたらこれってゲイに限らず、子供のいない男女間でもあり得ることだよね。そのズルズルっぷりにものすごい人間臭さを感じるのでした。

次回作では私はどのように心をえぐられるのでしょうか。

二十二階からなにも見えない

彼氏持ちの碧人(あおと)は、なぜか自分を好いてくれるツイドル、そしてタワマン住まいのセフレとの関係を保っているが・・・

憧れである。いや、ツイドルから好かれるとか、タワマン住まいのセフレがいるとかそういうことではなく。彼氏と「コツコツ積み上げてきた今の関係」があること自体が。いやぁ、いいよねぇ。それ。

しかしですよ、「コツコツ積み上げてきた今の関係」を「好きだ」と言いながら、どうしてツイドルとデートをするのか、セフレのことをそんなに気にかけるのか。

所詮、人間はないものねだりであり、欲望を満たされることはないのだろうか。勝手に求め、そして勝手に「しんどく」なってしまうのか。満たされたい、という欲望は決して叶えられないのか。

否、そうではないのだろうと思う。「二十二階からなにも見えない」のではない。「見ようとしないから、何も見えない」のだ。

きっとそれはあなたの近くにある。私はメーテルリンクか。

終わりに

ということで「桃鞜」2021秋号の感想でした。いろんな読み方ができる短編があり、次回作が楽しみです。尚、最終ページに「ゲイ用語解説」というものがあり、ウブなゲイに対しても詳しく(必要以上に?)解説が掲載されています。2021春号と見比べてみましたが、内容に応じて更新されていました。芸が細かい!

ということで今回の記事はここまでです。お読みいただきありがとうございます。ではまた。

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