あなたが生きた証を残そう
12月に入り、主治医から余命を告げられた。
「年は越せないと思います」
胃癌で、ごはんも食べられなくなり、点滴も血管が細くて針が入らない。
首にある血管や、鼠径からの血管からの点滴方法もあるけれど、そこまではやらないという考えだったのかな。
メイバランスという栄養剤を、1日1〜2本飲んで、命を繋いでいた。
穏やかに、時は流れていた。
そうしているうちに、年明けを迎えた。
余命を告げられた日から、
彼の生活はなんにも変わっていない。
緩和病棟へうつることになった。
でも、彼の生活は、なんにも変わらなかった。
そうして、ご自宅へ退院することができた。
桜の季節を迎えて、お花見にも行くことができた。
やがて、体が病気であったことを思い出したかのように、彼の体は弱くなっていった。
病院に戻り、命の終わりを迎えた。
年を越せないと告げられても、
病気であることにとらわれていなかった。
日々をのんびりと、ただ穏やかに生きていた。
最期にお花見に行くことができて、よかったね。
病院で、たくさんの患者さんと関わってきました。
この時期になると、この患者さんのことを、なぜか思い出します。
わたしも、病気にとらわれずに、生きていきたい。
過敏性腸症候群や、社会不安障害があっても。
強くなんてならなくていいから、穏やかに生きていきたいな。
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