先生の言葉と事後性
事後性とは過去の経験や記憶が、新たな経験によって修正され、意味や心理的な影響をもつようになること、とされている。
この「事後性」を話してくれた教授がいた。
「私の話は今の君たちには役に立たない、君たちが卒業し、臨床という現場にたった時にもう一度考えて見てほしい。」と。
かなり頑固そうな教授であった。
昨年定年退職なされた。
僕はこの事後性について教授に詳しく聞いた。
なんとなく興味が湧いたのだ。
その教授は僕の脚を触っただけで過去にどんな怪我をしたのかを見抜いたこともあり、僕は信頼を置いていた。
「言葉の意味なんてものはその人の環境や立場によって変わる、何を学んで、何を見て来たかによっても変わる。」
僕は確かにと感心しつつ聞き続けた。
「今君は大学生に入り、中高の時の先生と、自分で判断してなんでも出来るという点では同じ、大人になったわけだ。今その時の先生が言っていた言葉をもう一度思い出してみたら当時感じていた意味とは別の意味に聞こえてくるはずだ。」
今と昔では自分の立場が違う。
だから意味も変わってくということだろう。
僕は、ハッとしたのだ。
中学の時の先生が言ってくれた言葉だ。
「君の見ている世界はあまりにも小さい、もっと大きな世界を見てから選びなさい。」
高校受験をやめてプロゲーマーになるという僕に対して言ってくれた言葉だ。今考えれば勉強から逃げるという浅はかな考えだったと思う。
結局僕は少し大きめの世界(高校)に進んだ
そのおかげで医療という道に出会い、僕の道は開けた。
高校で勉強も恋も学んだ。
大学で社会や色んな人に出会えた。
本を読むようになって世界はガラリと変わった
僕はあの時の先生の言葉をやっと理解出来た。
「君の見ている世界はあまりにも小さい、もっと大きな世界を見てから選びなさい。」
確かにあの時の世界はあまりにも小さかったと今では心の底から思える。
ただ、こう思えたのは教授から教えてもらってから半年後の事だった。
事後性について分かりましたよ。
と言える教授はもう退職していない。
当時、教授に中学高校の時の先生の言葉を思い出せと言われてもスっと思い出せるものではなかった。
教授に言われて半年たった頃、部屋の断捨離中に中学の卒業アルバムが出てきて読み返している時に僕の頭にあの言葉が出てきた。
先生から貰った言葉と教授が言っていたことが見事にリンクしたようだった、アハ体験的な、何かを感じた。
言葉を思い出してみろ
言葉を思い出して、ハッとする。
そして理解する。
これが事後性かと。
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