もし今、未修1年目に戻るなら...【後編】*2024.3.28追記
はい皆さんこんにちは。もう名乗り口上が無くなってきた凡骨でございます。
前編に引き続き、後編では刑訴・民訴・商法・行政法・倒産法の教材を紹介していきたいと思います。
前編はこちらからどうぞ。↓
刑事訴訟法
刑訴は力を入れた割に最後まで点が伸びなかった悔いの残る科目ですね。
その主な原因は、理論偏重の学習に走りアウトプットが不足していたこと、調べものに時間を割きすぎて判例の基礎的な理解が中途半端になっていたことの2つであろうと考えています。
特にアウトプット不足は致命的でした。知識を増やせど使えなければ無いのと同じな訳で、文献を渉猟するなら更に実際に使う訓練を積むまでを一つの勉強の区切りにすべきだった思います。せいぜい論証に反映させる程度で使える形の勉強をしたと思っていた私の学習方針では、結果的に断片的な知識を溜め込むことに終始していたと言わざるを得ません。
勉強をやり直す際の方針としては、まず定期的に起案してアウトプットを増やすのは当然として、論点の理解を深める限度(調査や勉強のゴール)を司法試験レベルに設定し、調べものに使う時間に歯止めをかけることが必要になろうと思います。
①仮に今から未修1年目に戻ったら利用するであろう教材
基本刑事訴訟法Ⅱ 論点理解編
アウトプットに必要な知識は基本刑訴で押さえ、理解できない部分があれば本書より詳細な文献ではなくストゥディアで確認します。
少し固めな記述ではあるものの、刑訴で混乱するのはストゥディアに記載されている理屈の理解が曖昧なことに起因していたと思います。
司法試験体系的問題解析 刑事訴訟法
本書の内容が理解できることを上限に調べものに歯止めをかけるでしょう。
答案例付きなので起案の答え合わせにも適しているほか、解答の前提となる基礎知識の解説が下手な入門書より遥かに分かりやすく(特に伝聞法則)、更に巻末に簡易論証集が付属しているのも嬉しいポイントですね。過去問だからと先送りにせず初期の段階から着手しておきたい一冊です。
判例講座刑事訴訟法
判例の確認と調べものは基本的にこれで済ませると思います。未修1年目からゴリゴリ読み進めるものではないので、あくまで適時参照ですね。
重問
基本刑訴と相性がいいものの反町刑訴があるのでどこまで使うのかは不透明ですが、論点を補完したり答案例を参考にしつつ手軽にアウトプットの訓練をする分には非常に有用なので持っておくと思います。
②当時は利用していたが今なら手に取らないであろう教材
刑訴の場合は本当にどれも重宝していたので、理解の妨げになるからではなく他に優先すべきものがあったり時間的な制約から利用を断念せざるを得ないという書籍が多いです。
エクササイズ刑訴
捜査から証拠まで満遍なく論点が盛り込まれた事例問題に、端的で答案にそのまま使えるような解説が魅力的な一冊です。非常に薄く回しやすいのも嬉しいポイントですね。知識量が十分な状態で使えば爆速でアウトプットできるんじゃないでしょうか。
私の場合は本書の前提知識を固めたり過去問を起案するだけで精一杯なので、ちょっと手に取る余裕はないと思います。
事例演習刑事訴訟法
巷では毀誉褒貶が激しいものの、なんだかんだでみんな持ってますよね。私も大混乱した頭を整理するのに何度も本書を頼ったり授業対策で参照することが多かったので割と気に入っています。とはいえこの怪しい三人組の議論に乗るとマクベスよろしく破滅しそうなので残念ながら手には取らないでしょう。
刑事訴訟法の思考プロセス
こちら隠れた名著です。誰でも知っている重要論点について正確な理解に至るまでの道筋を基礎知識から緻密に説き起こしていくというもので、しっかり学べば相当な実力が身に付くんじゃないでしょうか。刑訴の書籍の中でもかなり好きな一冊ですが、私には活かしきることはできませんでした…。
入門刑事手続法
酒巻先生の熱意が凝縮された執念の一冊です。あくまで刑事手続の全体像を把握することに重点を置いており、入門といっても初歩的な論点解説書というわけではありません。とはいえ刑訴法の初めの一歩は手続の把握にあるので、重要な教材であることに変わりはないでしょう。
執筆の経緯をきくと使用しないのが申し訳なくなりますが、今は基本刑訴1があるので…(〇すぞ!というお声が聞こえてきそう)
民事訴訟法
最初こそ迷走してましたが、判例学習に注力して論点を具体的な事案とセットで考えるようにしつつ、事例問題に取り組む際のポイントを押さえたら一気に安定しました。他方で、民訴は必要以上に論点を網羅するより、重要論点を判例とは異なる事例や立場から多角的に検討するべきだったと思われ、論点潰しは程々にして早期に司法試験の過去問に着手した方が良かったかもしれません。
①仮に今から未修1年目に戻ったら利用するであろう教材
基本判例から民事訴訟法を学ぶ
これだけで入門から判例学習までまるっと対応している素晴らしい一冊です。冒頭で前提知識を確認してから判例解説に移る構成をとっているので、常に具体例を把握しながら学習を進めることができ、民訴の学習状況が劇的に改善しました。民訴総合の期末でも大活躍してたので、本書を完璧にしたら授業はともかく試験は普通に乗り切れるんじゃないでしょうか。
ロースクール演習民事訴訟法
民訴では多くの演習書が単なる学説の陳列場と化しているなか、本書では事例問題を解く際の思考手順が徹底的に可視化されています。
それまで知識自体はあっても実際に事例問題を解くと論点として認識できず何を書いて良いか分からないといった最悪の状態だったので、どのように事実関係を分析すれば論点を発見できるのかが分かったのは本当に助かりました。
惜しむらくは出版元が廃業しているため、今ではほとんど手に入らなくなっていることですね…。これがなければローは生き残れなかったので本当に残念です。
長谷部由起子 民事訴訟法
少々記述は端的ですが情報量の割にはかなり薄くて非常によくまとまっているので、調べ物にもちょっとした知識確認にも幅広く使える一冊です。
もっと薄いものならストゥディア、一本芯の通った理解が欲しければ高橋民訴概論を手に取ると思います。
最新重要判例250
本格的な判例学習としては百選か本書のどちらかを選ぶことになるでしょう。本書は掲載数も多く解説も山本先生お一人で書かれているので統一感があり非常に分かりやすいので私はこちらを採用すると思います。ただ、司法試験には絶対に関係のない判例も多いほか、紙面の都合でどうしても解説が短くなってしまうので、百選の方が無難かもしれません。
重問
一応挙げてはいますが、私の場合は上記のロー演で事足りていたんですよね。民訴ではそこまで答案例が重要だと思えず、また網羅性は魅力的なものの司法試験との関係ではロープラで充分な気もします。いずれにしても、民訴の問題集は横並びになっているイメージで、任意の一冊を終えたら早々に司法試験の過去問に着手した方が良かったです。
②当時は利用していたが今なら手に取らないであろう教材
民訴は特に自分のニーズと教材の強みが上手く嚙み合ってないことで思うように学習効果が得られないことが多いんじゃないでしょうか。まずは自分が何に悩んでいて、その原因が何かを考えることから始めるべきでしたね。
事例で考える民事訴訟法
事例演習民訴を平易にしてロー演民訴を組み合わせたような一冊ですね。解答に至るまでの事実の分析と学説整理が非常に丁寧なので、思考過程がよく可視化されています。前提知識の解説も充実しているものの、あくまでその程度は知っているのが前提という体裁であり、不足する知識を補いつつ使おうとか思っていると永遠に読み終わりません。
おそらく本書の使用に適したレベルになる頃には既に司法試験の問題が普通に解けていると思われ、余程の余裕がない限り手には取れないと思います。
ロジカル演習民事訴訟法
答案例まで付属しててレベル感もちょうどよく、解説のコンセプトからしても絶対に有用な一冊だと思うんですが、なぜか上手く活用できませんでした…。ただ、本書の言う答案が書けない人というのは、事例から論点は見つけられても知識を整然と論述できない人を指しているように思え、私のようにそもそも論点が発見できない人間にはミスマッチだったかもしれません。
実戦演習民事訴訟法
実践演習シリーズの民訴版で、予備を目指すなら答案例のためだけにも持っておくべきかもしれません。ただ、解説がレジュメ調で簡潔なのが難点で、なんだか辰已のえんしゅう本みたいな解説文でした。また、知識整理は非常に優れているものの、事例を分析して論点を抽出する過程が可視化されているようには見えなかったので、私には合わなかったですね。
解析民事訴訟法
藤田先生が旧司法試験の問題を利用して論点解説をしているというので手に取手はみましたが、解説らしい解説が少なく、少し古くなりすぎているのと何より重厚すぎたので今一つ活用しきれなかったですね。
商法
かつては酷い会社法アレルギーを発症しており、最も教科書選びに難儀した科目です。
私にとって会社法は手続法的な側面が強くて民訴並みに抽象度が高く感じられたので、今なら判例学習に注力して会社法上の諸制度が具体的に機能する場面を押さえることから始めるでしょう。また、条文構造を把握するのも大切で、そのためには条文を引きまくる前に判例集や問題集で処理手順にかかる思考枠組みを確立し、各条文の会社法上の位置づけを理解するように学習を進めると思います。
①仮に今から未修1年目に戻ったら利用するであろう教材
手にとるようにわかる会社法入門
私のような会社法アレルギー人間にも難なく読めた素晴らしい入門書です。条文コピペしてこんな制度がありますはい終わり、ではなく、その制度の特徴を平易な言葉で説明したうえで、必要に応じてその意義やメリットなど条文の背景も解説してくれています。また、ストーリー調だったり嚙み砕きすぎて法律書の体を成していないような入門書とは異なり体系に沿った記述なので、基本書を用いた学習への移行もスムーズに進められると思います。
会社法判例40!
各章冒頭のイントロダクションで前提知識を確認しつつ解釈に争いのあるポイントを指摘して関連判例の解説に移るという構成で、判例集というよりは具体例が豊富な初学者向けの論点解説書みたいな一冊ですね。
学習初期は基本書で制度概要をのっぺり眺めるよりも、本書を教科書代わりにしても良かったかもしれません。有名なブログ「だいたい正しそうな司法試験の勉強法」でも”基本書型判例集”というカテゴリで紹介されていますね。
基礎知識のインプットにも会社法上の各種制度が運用されるイメージを掴むにも有益だったので、アレルギーが劇的に改善した奇跡の一冊です。百選に入る前の準備学習にも最適でしょう。
【追記】
会社法入門で大枠を確認したら、以下の会社法の考え方か基礎から学ぶ商法のいずれかで理論面を詰めていくと思います。
山本先生は会社法の考え方を言葉を駆使して”基本法理”から説き起こすというスタンスで執筆されており、条文の根底に存在する規範がかなり可視化されていると感じました。条文や定義の列挙に終始しがちな会社法の教科書の中では珍しく、良い意味でドグマチックな一冊ですね。
ちなみに、本編310項という薄さの割に種類株式や株式分割、自己株式取得などの分野の記述も充実しており、事例演習教材2部の事前学習にもちょうどいいんじゃないでしょうか。
基礎から学ぶ商法
こちらは会社法に加えて商法と手形法までセットになっている割に項数も多くなく、手短に商法全体のアウトラインを掴むのにちょうどいい一冊です。
理屈の説明を重視するなら山本考え方、レイアウトとコスパなら基礎からといったところでしょうか。
【追記終わり】
基本書は今でも正解が分かりません。無難なのは紅白本でしょうか。
しかし、今振り返ると巷で言われるほどは使いこなせてなかった気がするんですよね。というのも、本書は文体こそ丁寧で柔らかいものの意外と情報量はギッチリで読み込むのに骨が折れるうえ、レイアウトも詰め込みすぎていて欲しい情報が探しにくかったり今一つ頭に残らないことがあったりしました。
その点、項数の割に読みやすかったのは岡先生の会社法です。
本書は条文の趣旨から遡って各種制度を解説しており、まさに知りたいことが書いてあった一冊です。高度な議論が多い訳ではありませんが、解説を付した多数の判例を長めに引用しているのもあって、江頭が必要な場合でもなければ情報量としては十分でしょう。
しかし、やはり重厚すぎて取り回しが悪く、特に全体像を掴む前に本書を読み込むのは理解が空中分解を起こす危険もあると思います。
このように私の場合は決め手になる一冊がないので、ひとまずは先述した会社法入門と判例40!を下敷きに会社法の考え方で理解を確認しつつ、問題集や判例集などで論点学習を進めて条文知識を増やしていくと思います。
そんな勉強で大丈夫か?って感じですが、どのみち2年目の商法総合で会社法事例演習教材と江頭を使って勉強していると自然と一定のことは理解できるようになるんですよね。
なので、1年目の段階では2年目以降の下地を固めることと、以前のように入門段階で躓かないことを最優先にして、無理に本格的な基本書に手を広げないというのが基本的な学習方針になるんじゃないでしょうか。
LawPractice商法攻略講義
京大ローが誇る英傑、望月さんのロープラ解説講座です。以前は重問と事例演習教材に注力しておりロープラ自体あまり使っていませんでしたが、今思えばロープラ掲載の問題文が適切に処理できるだけでも司法試験対策の負担が大きく変わっていたので、こちらの講座の答案例がある以上は間違いなくメイン問題集にしていたでしょう。
なお、事例演習教材は素晴らしいですが1年目の段階で着手できる代物ではないので、私ならまずはロープラで基礎固めですね。また、重問もかなり出来が良く論点処理の思考枠組み確立にも役立つと思うものの、こちらの講座があるうえに2年目以降は事例演習教材にシフトしてしまったので利用を見送るかもしれません。
会社訴訟の要件事実
司法試験に出題された重要論点を要件事実で整理しようというものです。各種手続規定の会社訴訟での位置付けが可視化されることで、平坦に見えた会社法の条文を立体的に捉えられるようになりました。いきなり1年目から着手できるものではありませんが、知識整理のために機を見て手元に置いておくと思います。2年目以降では事例演習教材1部との相性が良かったですね。
会社法判例の読み方
難易度は高めで1年目から着手できるものではありませんが、判例学習には必携の一冊です。通読はせず、理論的に複雑で理解が難しい論点を具体的な事例に落とし込んで整理する用途で適時参照すると思います。
②当時は利用していたが今なら手に取らないであろう教材
ストゥディア会社法
薄くて回しやすく表現も比較的柔らかいので初学者に最適な一冊のはずなんですが、会社法アレルギーな私にはどうも平坦で条文コピペな部分が多いように思えてしまい最後まで話が頭に入ってきませんでした。げに恐ろしきは苦手意識よの…。
リークエ会社法
今でこそ端的でよくまとまっている一冊だと思うものの、以前なら本書を読むのは春先の杉林で深呼吸するのに等しい苦行でした。アレルギー真っ盛りな時分に戻ってまた読んだらアナフィラキシーで死ぬんじゃないですかね。
神田会社法
未修を狂わす特級呪物。これを一冊目に進めてくる教授には人の心とかないんか?
とはいえ、勉強が進んだ後の総復習に使うなら非常に有益だとは思います。先述のような基本書事情からすると、案外本書を中心に辞書本や参考書を用いて肉付けしていくのが最適解な気がしなくもないです。ただし、最近はもう分厚くなりすぎてるので、既に読み慣れた基本書があればそちらを読み直す方がいい気がしますね。
田中亘 会社法
リークエ会社法の行間を言語化しつつ更に発展的な内容までを網羅的かつ平易に解説した素晴らしい一冊です。会社法が好きな人(苦手でも理論チックな一冊が欲しい人)なら、なまじリークエを読むよりずっと高い学習効果を得ることができるでしょう。私も今なら本書をメイン教科書にするかもしれません。
ではなぜそんな良書がここにいるのかといえば、若干使う人を選びそうなのと、会社法アレルギーだった当時の私にはリークエから乗り換えてもスギ花粉がヒノキに変わっただけだったからですね。
ひとりで学ぶ会社法
通称ぼっち会社法。適度な難易度の演習形式で徹底的に条文を引く訓練ができるので、早期から着手すれば会社法では必須の条文操作がしっかりと身につきます。身につくはずでした。
でも、そうはならなかった。
ならなかったんだよ、凡骨。
だから、この話はここでお終いなんだ。
…まぁ実際のところ本当に素晴らしいコンセプトだし多くの人には絶大な学習効果があると思うんですが、私の場合は中途半端にやりこんだ矢先に事例演習教材で地獄のように条文を引かされた結果いつのまにか普通に条文操作ができるようになってたので、敢え無くお役御免となりました。
むしろ未修1年目では論点処理の思考枠組みを把握する前に条文知識を増やしても機械的な暗記になり苦しいだけだったので、まずは判例40!で基本的な論点の理解を優先するんじゃないでしょうか。
行政法
行政法は好きな科目だったので楽しく勉強してましたが、あまり細かい理屈を煮詰めたりせず、もっとマクロな視点で知識の整理にも注力しておくべきだったなと若干後悔しています。
①仮に今から未修1年目に戻ったら利用するであろう教材
私の場合は授業担当だったSD先生お手製の講義資料とドリルが驚異的にわかりやすく他に文献を参照する必要はあまりありませんでした。もし入手できなければ、入門書はストゥディアで手短に済ませ、早めに(何なら同時並行で)基礎演習行政法に着手し、本格的な問題演習に進みたいところです。欲を言えば基礎演習のさらに一歩手前のものが欲しいんですけどね… 。
あとは基本行政法メインで演習までいくんでしょうけど、これらのラインナップも少し悩ましいところです。
いや悩む要素ないだろって感じですけど、基本行政法は試験で使える知識を身に付けるには最適なものの私には基本書というより問題集に近く、事例と関連法令の引用で重厚に見えるだけで本文自体はむしろ薄めにすら思えたので、その前提にある原理的なことが知りたいときや論点同士の相互関係を確認したいとき少し不便だったんですよね(そして塩野とか参照して無限に時間が溶けていきました)。
そこで、まずはプラクティス行政法を使うのもありだと思います。
少し独特な構成で文体も硬めに見えるので取っ付きにくそうですが、全体に一本の筋が通った記述で不思議とさくさく読めるうえ、断片的だった知識が繋がっていくような感覚を覚えました。また、訴訟類型や要件の整理が特に秀逸であり、重要判例が非常に端的にまとまっているのも相まって論点同士の繋がりやその救済法上の位置づけも把握しやすかったです。
案外、最初の一冊をストゥディアでなく本書にして基本行政法と往復するのも手かもしれませんね。基礎演習や基本行政法を頑張って読んだのに訴訟選択でミスしそう(した)って人には一読の価値があると思います。
問題演習には行政法解釈の技法を使います。
予備過去問と事例問題攻略のノウハウがまとまった一冊です。予備行政法は良問揃いなので、本書前半の処理手順を確認しつつ問題演習に使いますね。重問でもいいんですが、私は予備過去問の方が勉強になったのと行政法にそこまで時間を割きたくないのとで、どちらか一冊を選ぶなら本書かなと思います。
なお、同様に予備行政法を用いた演習書に実戦演習行政法があります。
技法と双璧をなす一冊ですね。クオリティはいずれも素晴らしく、両方使うのはさすがに無駄なのでどちらかを選ぶものと思います。技法のように前半で前提知識と処理手順をまとめて後半で予備過去問を解く構成ではなく、年度順に予備過去問を解きながらその都度必要な知識を確認していくのが好みなら本書ですね。私の場合は復習が容易なまとめ本的なものが欲しいので、単純に構成の違いで技法を採用しました。
新版 行政法解釈の基礎
司法試験直近6年分と改題したH20,21,23を入れた9年分の解説だけを目当てに使いました(最高でした)が、それ以外でも個別法にとことん向き合い言葉を尽くして解釈の道筋を示してくれているので、過去問演習にも司法試験に向けた総仕上げにも最適だと思います。特に、2章の時間軸に沿った仕組み解析で扱う土地区画整理法と都市再開発法の解説はかなり参考になりました。
基本行政法判例演習
もう判例学習にはこれ一択ですね。素晴らしいと言うほかありません。
②当時は利用していたが今なら手に取らないであろう教材
ケースブック行政法
非常に定評のある判例集ですが、授業で指定されて買ったものの自分でもびっくりするくらい使わなかったです。ちゃんと使えれば重宝するんでしょうが、これの設問でソクラテスやると言われない限り手には取らないんじゃないですかね。
事例研究行政法
行政法の事例演習といえばこれという素晴らしい演習書なんですが、特にロー内では凄く評価が分かれていました。というのも、難易度と分量からしてどの学習段階で使うべきか判断が難しいのと、他にもっと手頃で実用的な問題集が続々と登場して選択の幅が広がっているので、かつてと異なり必携の一冊とまでは言えなくなっているのではないでしょうか。
私の場合も事例の分析と訴訟選択にかかる思考過程の記述は非常に参考になったものの、基礎演習や技法(or実戦)を先に利用していれば本書より司法試験過去問への着手を優先すると思います。
演習行政法
古くなってしまっているものの、個別法解釈の解説には参考になるところが多く、税法や社会保障法などの分野別の骨太な演習問題に加えて論証例や答案例も付属しているなど問題集として素晴らしい完成度を誇る一冊です。
ただ、それゆえに本格的な作りになりすぎていて、本書を完全に消化しようとすると相当しんどいと思います。時間の制約から本書を手に取ることは困難でしょう。
倒産法
選択科目なので1年目から勉強を始める余裕があるかは分かりませんが、倒産法は少し勉強量が多く、問題演習も司法試験過去問を何度も解くことになり時間もかかると思われるので、可能な限り早めに着手したいところです。
なお、問題集は今では重問がありますね。倒産法では貴重な答案例付き問題集であり、しかもサンプルを見る限り非常に使いやすそうな一冊だと思いますが、私は使用したことがなく手に取るか否か判断ができないので、ここでの紹介にとどめさせてもらいます。
①仮に今から未修1年目に戻ったら利用するであろう教材
ストゥディア倒産法
具体例が豊富で、かなり噛み砕いた記述ながら要点はしっかり押さえられているので、さくさく読み進められると思います。ただ、倒産法はとにかく条文知識がないと話にならないので、本書を無理して条文を引きつつ読むより通読を優先し、早めに下記の野村先生の教科書に移りたいところですね。
なお、入門書なら山本先生の倒産処理法入門が定番中の定番(しかも念願の改訂!)ですが、とにかく手短に倒産法を概観するなら本書、基礎からしっかり勉強するなら入門だと思います。後述のように私は教科書読むだけでは何も覚えられないので、問題演習のための最低限の知識だけ仕入れる分には本書で十分でした。
野村倒産法
野村先生は倒産法講義も執筆されていますが、こちらはまた別の教科書です。講義の方を使用したことがないので比較が難しいのですが、勉強し初めの頃に先輩から伺った話によれば、講義の方は少しレジュメっぽく、より教科書っぽいのが本書ということだったので、こちらを採用しました。
かなり司法試験を意識した作りなっているように思え、過去に出題された論点には大抵言及されているうえに非常にコンパクトなのもあって重宝しています。
本書に移行後は六法片手に読み進めつつ、司法試験の過去問を解いて一元化教材的にも利用すると思います。
アガルート 論文過去問解析講座
ストゥディア通読後に野村倒産法とほぼ同時に利用すると思います。条文知識はもちろん、論点の処理手順も漫然と教科書を読んでいては全く頭に入ってこなかったので、必ず早期から過去問を用いた問題演習に着手したいですね。
おそらく当初と同じく最初はわけわからん状態で進めざるをえなくなるでしょうが、ちゃんと教科書や百選で知識を補完して繰り返し解き続ければ普通に司法試験も解けるようになったので、しばらく我慢して本講座に取り組むと思います。
判例百選
倒産法には百選くらいしか判例集がないのと、司法試験でも民訴並みに百選掲載判例の理解が前提になっており特に重要性が高いと思います。基本的には過去問で頻繁に問われる論点の確認用に使いますが、条文の規定が運用される具体的な場面を把握するのにも有用なので、判旨だけでなく事実までしっかり読みん込んでおきたいですね。
②当時は利用していたが今なら手に取らないであろう教材
基礎トレーニング倒産法
非常に定評のある演習書で、入門書を読んだらすぐにでも着手できる手頃な難易度が魅力的な一冊です。しかし、私は早々に司法試験過去問に移行して特に不都合もなかったので、時間節約のために本書は手に取らないと思います。
*おそらく最も王道的なのは、山本入門→倒産法講義&百選&基礎トレor重問→司法過去問、という流れなんでしょうし、私もそれが安心だと思います。ただ、私のように演習しつつ知識を仕入れる勉強が肌に合っていたり時間の猶予が無い場合でも、上記のような勉強で少なくともローの試験はクリアできたので、あり得る選択肢の一つを提示する趣旨で書き綴った次第です。
終わりに
教材紹介は以上です。長々と2回にわたり私の一人語りにお付き合いいただきありがとうございました!
ここまで様々な教材を紹介してみましたが、どれも著者の先生が心血を注いで作成した珠玉の一冊というべきものばかりです。結局のところ教材選びで最も重要なのは、自分の弱点や課題点を正確に把握したうえで、その克服に適した一冊を選択することだと思っています。
その意味では、使えない教材なんてものは存在せず、あるのは使い手のニーズと教材の強みとのミスマッチだけなのではないでしょうか。
恥晒しな失敗談ばかりで本当にお目汚しもいいところでしたが、拙稿が皆様の学習の一助になれば望外の喜びとするところです。将来的には、更に司法試験を終えてから今回の記事の内容を振り返った投稿ができたらいいなと考えています。
ではまたいつか。