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AIで復活する『新作ブラックジャック』の感想

今回、コミック作品『TEZUKA2023ブラック・ジャック 機械の心臓―Heartbeat Mark II ―』(以下、『新作ブラックジャック』)の感想を記します。画像生成AIと生きよう(6)

当作品は生成AIによって手塚治虫の新作を製作するプロジェクトの成果として公開されたものです(当然、手塚治虫本人は不在)。

当プロジェクト自体がまるで手塚治虫の描いたSFマンガのような企画であり、その点についても面白いと思いました。

※今回、身内から依頼を受けて書いたのですが、あまり良い感想が書けず、あくまでわたし個人の感想にすぎないもので、これは作品の評価や評論ではありません。

また、わたしはAIに詳しくないので、あくまで「漫画の感想」としてのみ記し、生成AIそのものに関する記述もないことご容赦ください。

『TEZUKA2023ブラック・ジャック 機械の心臓―Heartbeat Mark II』(著(原作):手塚治虫、著:TEZUKA2023プロジェクト)(週刊少年チャンピオン2023年52号内掲載)(2023)秋田書店


(動画引用元)『手塚治虫作品を学んだAIでよみがえる…新作「ブラック・ジャック」 制作現場に密着(2023年12月7日)』(Youtube: ANNnewsCH 公式)


(動画引用元)『「ぱいどん」 人とAIで描いた未来の全軌跡』(Youtube: KIOXIA-JP 公式)


(1)生成AIについて

全く知らない方からすると、当『新作ブラックジャック』は生成AIによって作成されたかのように思うかもしれませんが、そうではないようです。

漫画に添えられた解説をみると、生成AIの主な役割はキャラクターデザイン、シナリオ、及びプロット等の原案の提供に留まり、それらの原案を受け取って最終的に人のクリエイター(映画監督、シナリオライター、漫画家)が完成させるとゆう工程のようです。

本著に引用する動画をご覧いただけると、より解りやすいかと思います。

※なお、動画の中でつのがい先生ご自身の生の声やクリスタによる執筆場面などが視聴できるので、わたし個人としてはそれが視れて嬉しい。

(2)全体的な感想

ブラックジャックの新作として完成されていて、マンガの出来は良かったと思います(知らない方が、当作品を手塚治虫による作品と紹介されても疑いもなく信じてしまうのでは)。

『新作ブラックジャック』がさほどの違和感もなく読める理由は、元々『ブラックジャック』とゆう作品はテーマ性(医療技術や生命)やストーリー(患者がいてブラックジャックが手術で治す)自体が、かなり明確であり、

また、連載を通じた主役であるブラックジャック(あるいはピノコやドクターキリコ)についても、外観や性格などのキャラクター性が元より分かりやすく、固定的であるため、

手塚治虫以外のクリエイターが2次的に創作しても、あまりオリジナルからぶれることなく、比較的作りやすいためと考えます。

(3)つのがい先生の絵について

上記の説明にあったように、最終的に人のクリエイターが完成させているため、絵に関しては、AIと手塚治虫の差異とゆうよりも、人のクリエイター(つのがい)と手塚治虫との違いをお話することになります。

(注)実際はつのがい先生以外の多数の方が原画執筆に携わっているのかと思います。よって、本著で「つのがい」とありますところは、当プロジェクトに係わった漫画の絵を担当した方もいくらか含めたものとして、読み替えいただければと思います。

作品を見ていただけると分かるように、つのがい先生による絵は本当に手塚治虫にそっくりで、まるで今現在に手塚治虫が新作を書いているように感じられるほどです。

これも意外に思えるかもしれませんが、晩年の手塚治虫の絵は線が震えたり、安定せず、あるいは崩壊気味になる場合があり、つのがいのブラックジャックの方が読者の思う「ブラックジャック」像に近かったりします。
(特に『ミッドナイト』作中に登場するブラックジャックの絵が分かりやすいです。

(4)つのがいと手塚治虫との違い

わたしが思うつのがいと手塚治虫の絵における差異は、絵に備わる「エロティックさ」の強弱です。

これは手塚治虫のキャラクター全般(あるいはその行動や感情などの表現)に通ずる特徴として独特の「エロティックさ」があります。

ここで言う「エロティックさ」とは、大人向きの絵、あるいは性的表現とゆう意味ではありません(少し説明が難いです)。

この特徴がキャラクターの可愛らしさや生命感を感じさせ、手塚漫画の魅力になっているように思えます。

晩年に絵に衰えの兆しがあっても、その特徴だけは衰えていないように思えます。

一方、つのがいのキャラクターは手塚治虫の絵に本当にそっくりなのですが、どこか手塚キャラクターのような「エロティックさ」が薄い気がします。
これは、それぞれ作家が自身のキャラクターに求めるものが異なるためなのではと推測しています。

つのがいの漫画は基本的にギャグ漫画であることも影響しているのではと推測しています。

『ぱいどん』では「エロティックさ」の欠如がかなり明瞭でしたが、『新作ブラックジャック』では薄いもののブラックジャック、ピノコ、ドクターキリコには多少は入っており(ところが患者側にはみられない)、読んでいて気にならないほどでした。

(5)ストーリー

『新作ブラックジャック』のストーリーはほとんど問題ないほど完成していると思います。

ただし、オリジナル『ブラックジャック』と比較すると、若干ストーリーの主軸がぼやけてみえるように感じました。その主な原因は『主人公の欠如』であると考えています。

原作『ブラックジャック』では患者側が副主人公(各話における主人公)となり、各話におけるストーリーをけん引します。

対して『新作ブラックジャック』では、手術対象となる女性患者とその父親はいずれも主人公のように描かれておらず、あくまで脇役に留まります。

ブラックジャックの視点で話が進行しますが、かといって彼は主人公といえばそうでもなく、
事象(病理や人工心臓)に対しては、外側の立場から描かれており、深くストーリーに入り込んでいるように見えないのです。

AIと人工臓器、及び本間博士の関連性も説明では解りますが、どこか、つながりが一本の線のように明瞭ではなく、全体的にぼんやりしてしまっています。

なにより、物語の中心である患者本人(少女)の言動がなく、物語の進行のうえで彼女に重心が置かれていないことも、ストーリー全体をぼやけさせている要因のように感じました。

もし、手塚治虫であるならば、主人公及びテーマを一つに定め、それを中心に据える構成によって強いストーリーを作り上げ、読者をより引き込むのではと考えます。

また、『新作ブラックジャック』には思ったほどテーマ性やオブジェクトに真新しさが感じられないとゆうこともありました(いずれも、どこかで見たことあるような)。

逆に、手塚治虫の過去作オリジナル『ブラックジャック』の方が、エピソードによっては未来的であり、驚きや新しさや発見があるのです。



扉絵:ブラックジャック(手塚治虫):模写(鈴原ジータ)


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