なぜ日本にてQアノンが猛威を振るうようになったのか


2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した。それまで、保守系の言論人を含めた多くの人が「いくらプーチンはウクライナが憎くても全面戦争は流石にしないだろう。」と考えていたが、この事件がきっかけに戦争が起きた。



ロシアは圧倒的な軍事力とクリミア半島やドンバスの「独立させた」こともあり「ウクライナなんて屁でもない」と考えていたかもしれないが、ウクライナ側の粘り強い軍事力アメリカなどの西側諸国のウクライナに対する軍事支援及びロシアに対する経済制裁などもありウクライナ側が有利になっている。そのことをロシアも理解しているのか、最近ロシア国内においてウクライナ侵攻の自分らの主張をそのまま垂れ流したプロパガンダそのものである教科書を発表した

最早ロシアによるウクライナへの侵略を正当化する人間は余程の逆張りをしている変人ぐらいだと思われるが、実はインターネットではロシアを擁護する言論人気取りや陰謀論者が未だに多くいる。所謂Qアノン系統の投稿者だ。



特に酷いのはニコニコ動画で、検索履歴からある程度動画の流れがきまるYouTubeとは違い、ニコニコ動画では様々なジャンル別のランキングが存在するが、社会・政治・時事のランキングの大半が反ワクチンや親ロシアの巣窟と化していたこの手の人間はYouTubeでは排除されたが規制が緩いニコニコ動画に移住したのだろう。言わばQアノン系統のプロパガンダ機構と化しているのだ。今回はなぜ、この様な思想が最近影響力を持ったのかそして日本でもQアノンが流行ったのかを解説する。


Qアノンの概要


Qアノンはアメリカ発祥の思想で、その源流は5chのアメリカ版である4chやそこから分離した8chを拠点とするアメリカ版ネトウヨとでもいうべきオルタナライトと呼ばれる新規右派層で、Qの部分は「Qクリアランス(国家機密にアクセスできる権限)の愛国者」なる政府高官を自称する人物で、アノンの部分は元々は所謂「ななし、匿名」を意味していたハッカー集団アノニマスからきている。因みにアノニマス側からはQアノンは蛇蝎の如く嫌われており、2018年8月5日に「断固として許すわけにはいかない。お前たちと一線を交えるつもりだ覚悟しろ。証拠も何もなく信じる愚か者だけがお前の味方だ。」とQアノンのフォロワーを晒すなどの敵対行動を起こしている。

Qアノンは、「世界は悪魔崇拝者で小児性愛の国際的秘密結社に支配されている。それはディープステイトやカバールの強い影響下にあり、彼らは合衆国政府を含めた全ての有力政治家やメディアやハリウッドをコントロールをしているが隠蔽されている。」、「彼らはグローバリストで中国を中心とした新世界秩序の構築が目的で、その中核はロスチャイルド家でサウード家(サウジアラビア王国の王室)ソロス家も結びついていて、彼らはクリントン一味やDSと結託して合衆国を支配している。」、「2016年トランプ大統領が当選し、彼の報復計画である『嵐』を阻止する為2020年にあらゆる不正を行いバイデンを大統領にした。」と主張している。

正直な感想としては厨二病が必死に考えたノートの中身そのもの或はパワポケシリーズや科学ADVシリーズもビックリのトンデモ展開の数々だと感じた。そもそもソロス家はジョージ・ソロス一代で成り上がったハンガリー系ユダヤ人で、リベラルの人権団体や民主主義団体を資金提供しているが世界支配は流石に無理だし、サウード家に至っては政権に対して批判的なジャーナリストの暗殺が杜撰でバレる、イランに支援されていたとは言え民兵組織に負ける、流行り病の時期に石油の値段を上げ支援していたアメリカに切り捨てられるダメダメな独裁王政国家がどう世界を支配するのか聞いてみたい物だ。

だが、未だに支持者が多いのも事実だ。というのも矢張り近年盛んに叫ばれているWoke的なLGBTQや有色人種に配慮した政策や支持する人物に対するカウンターカルチャーとしてQアノンが存在しているからだ私も過度なWokeに対して疑問を持っているが、だからと言って事実上の独裁政権を作っている民主主義の敵であるプーチン大統領を「光の戦士」側にしたり、「ドイツのフランクフルトにあるアメリカの選挙システムを巡ってCIAとアメリカ特殊部隊が銃撃戦をした!」などと言う連中を信じるほど愚かではない


日本Qアノン前史としての余命騒動とけものフレンズ炎上騒動


そして2020年大統領選挙の時期に太平洋を横断して日本に「伝来」したQアノンだが、なぜこの様な思想がアメリカならいざ知らず縁も所縁もない日本でうけたのだろうか。まず考えられるのは一部の保守系アカウントがQアノンの情報を拡散してしまったことだ。百田尚樹氏や加藤清隆氏や門田隆将氏や有本香氏などの大物保守系インフルエンサーがQアノンの情報を信じ切ってしまい、彼らの主張が虎ノ門ニュースなどの保守系ネットメディアを通じて多くの人間に拡散しそれを信じた人間が更に拡散する悪循環に陥ってしまったのだ。

また以外かもしれないが、ネットではこの様な極論が支持されやすい傾向がある。その代表例は余命騒動とけものフレンズ炎上騒動でこの2つは日本のネット社会において良くも悪くも非常に影響を与えたと私は考える。



まず余命騒動について解説すると、余命三年時事日記と言う2011年から自称余命三年の在日コリアンの男が左翼や韓国や在日コリアンが知られたくない情報を暴露するという形で始まったWEBサイトが、2016年に日弁護連等の複数の弁護士会が朝鮮学校を停止に反対する声明のカウンターとして2017年に特定の弁護士に対して大規模な懲戒請求を行った騒動だ。因みにその時の代表は始めた人とは別の人物らしく、その人物は2013年に亡くなっておりその後本ブログは残されたプロジェクトメンバーによって継続されいるようだ。

実はこれより前に、2015年に2012年から施行された新しい在留外国人管理制度で特別永住者以外は外国人登録証明書を在留カードに切り替える期限を故意に曲解した「在日コリアンは2015年7月29日から日本からでれらない」と言う趣旨の記事を拡散し、それが「全ての在日韓国人は不法滞在となり、強制送還の対象になる」と解釈させ入管のサイトをパンクさせたという前科がある。



確かに朝鮮学校は日本語使用の禁止や北朝鮮を支援する組織である朝鮮総連が関わっていたことや授業においては金日成や金正日を賛美する認可されていない教科書を扱ったり主体思想と言う北朝鮮の思想を扱う等明らかヤバイのは事実だが、弁護士を在日認定や懲戒請求するのも流石にヤバイのではないだろうか。そしてハングル版に移住したなんJ民やそれに便乗した左翼が余命信者や全然関係ない保守系動画投稿者のYouTubeやTwitterに対してBANを行うBAN祭りこと差別動画大量通報騒動を起こしていた。



けものフレンズ炎上騒動とは9月27日にたつき監督がけものフレンズから外れてしまった所謂たつきショックが切っ掛けとなり、2019年けものフレンズ2放映後がピークとなった炎上騒動だ。けもフレアンチ界隈はふたば☆チャンネル等でたつき監督を外した原因とされるKADOKAWAやKFP等の制作会社、吉崎観音や細谷Pや木村監督等のけもフレ関係者に対するヘイト創作画像の他関係団体を反社会的勢力や売春斡旋組織呼ばわりしたり、一部の声優を枕営業したなどデマを流す等の度を越えた誹謗中傷を行っていた

中でもニコニコ動画を主な活動場所にしていたワイトキング氏が提唱した京都アニメーション放火事件をKFPの鉄砲玉による犯行とする陰謀論の拡散と言うけものフレンズを現実の殺人事件に無理矢理こじつけるというアニメ炎上史上前代未聞の問題行動を起こした

確かにけものフレンズ2は全体的なストーリーの質キュルルの異常なまでの優遇そして、イエイヌやビースト化したアムールトラや前作主人公であるカバンやPPPやマーゲイの扱いなどファンの望んでいた作品ではなかったことが多く、氷村ファネルの様な信者サイドの問題児の存在製作者サイドの作品に対する楽観視や主に細谷Pや木村監督による一期のファンの神経を逆撫でするツイート等けもフレ側の問題行動もあったが、それを免罪符に上記の行動は流石にダメだろう



これらとQアノンの共通点としては自分達が掲げる「正義の個人(トランプ大統領、余命、たつき監督)とその信奉者(Qアノン、余命信者、けもフレアンチ)が悪の組織(ディープステイト、弁護士連合会、KFPメンバー)と戦っている」と考えていることだ。特にけもフレアンチ界隈の寝言あき(ふたば☆チャンネルに現れた自称関係者で声優枕営業の言い出しっぺ)は日本版Qクリアランスの愛国者と言っていい。また、その親和性の高さからかけもフレアンチを兼ねたQアノンが出ており鼠草氏やククリーナ氏なんかが代表過去にはワイトキング氏も第45.5大統領ドナルド・トランプとアカウント名を変えて反バイデン活動をしていたことがあった


Qアノン及びその関係組織の起こした馬鹿げた事件



ここからはQアノンが引き起こした事件を解説していく。まずはピザゲートで、ワシントンDCにあるコメット・ピンポンなるアメリカ民主党を支持するピザ屋に対してオルタナライトの一部が「コメット・ピンポンの地下で全米から行方不明になった子供が悪魔崇拝の儀式や児童買春が行われている」などと言う陰謀論を流した事件で、NBAの選手も賛同してしまった。この時はQアノンがまだ出ていないが便宜上入れておく。

発端はヒラリークリントン陣営の1人の私的な電子メールが何者かのハッキングによって流失し、そのメール内に「ピザ、ホットドッグ」と言ったスラングがあったことで、それが、小児性愛や人身売買を示唆する暗号とネットで話題となったことだ。更にアメリカ民主党を支持する億万長者が小児性愛者で逮捕されたことがあった為ある程度信憑性が増した



そして2016年12月4日にこの陰謀論を信じ込み義憤にかられた1人の男が銃を持ってコメット・ピンポンの奥の事務所に侵入したが、誘拐された子供はおろか、そもそも地下室そのものがなかったということがわかり、愕然とした男は外で取り囲む警官隊に投降し裁判を受け有罪となった。その後男は裁判にて「自分の行いが以下に馬鹿げており無鉄砲なものなのか気が付いたと深く反省している



次はアメリカ連邦議会襲撃事件だ。バイデン大統領誕生を受け入れられないQアノンが連邦議会を襲撃した事件敷地内の銃撃戦で女性1人と警察官3人が亡くなった。事件の切っ掛けはバイデン政権に対する抗議集会で、その参加者の一部が暴徒化して行ったようで、しかもトランプ元大統領が煽動すると受け取られかねない発言をしてしまったようで、結果弾劾裁判となった。

日本でも安保闘争等でデモ隊が国会議事堂に突入したことがあるが、それとはわけが違う。と言うのもアメリカ合衆国の国体である合衆国憲法第一条では「人民が平穏に集会をする権利」があり、それは議会にも適応される。日本で例えるなら、皇居に暴徒が侵入して皇宮警察が殉職したレベルの事件と言っていいだろう。現にアメリカ連邦政府が襲撃されたのは1814年の米英戦争を除けば皆無と言っていい

それらの原因としてはバイデン大統領自身の認知症やウクライナゲート問題等があるが、一番大きいのは不正選挙云々の噂だろう。例えば「ウィスコンシン州で登録有権者数より投票数が多い」や「ミシガン州で死者一万人が投票数に含まれている」等がそれで、殆どがデマや勘違いだったりする。例えば、ウィスコンシン州の噂は締め切り前の古い数字で、ミシガン州の噂に関してはBBCによる無作為抽出の31件にて名簿の死亡日付より後に生存したり、親子同姓同名だったりが殆どだったりした。

更には一部のQアノン信奉者は「この事件を起こしたのはトランプ支持者ではなくANTHIFAの仕業だ」と明らかに無茶な陰謀論を展開している



ここからはアメリカの外へと移る、まずは日本版QアノンことJアノンの1つである神真都(ヤマト)Qによるワクチン接種会場の襲撃事件だ。ただこの団体はどうやら勝手に「アメリカ合衆国の元大統領であるドナルド・トランプから承認された17億人いるQのグループの1つ」を名乗っているらしく、本家Qアノンとどれだけ関係があるかはわかっていない。またもう1つのJアノン組織QAJFとは犬猿の仲のようだ。

この組織は反ワクチンであることが知られており、その思想も「人々は光と闇の銀河戦争から逃げ延びたレプティリアン等の悪の宇宙人によって構成されるディープステートに支配されており、解放されなければならない」と本家Qアノンとは別ベクトルでヤバイ連中で、例に漏れずワクチンを「人口削減の道具などと非科学的な発言をしている。

神真都Qは接種会場を何回か襲撃しており、2022年3月15日には東京ドーム、同年3月29日には新宿区立元気館、同年4月7日には渋谷区のクリニック等のワクチン接種会場を襲っていたようで、渋谷区の襲撃で神真都Qの発起人の1人である岡本市兵衛こと倉岡宏行が逮捕された



最後は一番新しいであろうドイツでおきたQアノン系統の組織が起こしたクーデター事件だ。前代未聞の行動を起こしたのはドイツ語で帝国市民を意味するライヒスビュルガーなる厨二臭い名前の組織で、彼らの思想も「第二次世界大戦後のドイツは主権国家ではなく連合国に作られた法人」やら「トランプが軍勢を率いてドイツ帝国を復興させる」など矢張り厨二臭い発言をしている。この組織はQアノンとの結びつきが特に顕著な過激派集団で2万1000人の信奉者がおり、2016年には警察官殺害事件を起こしている

主犯格の1人はドイツ貴族のハインリヒ13世で彼の血筋はカノッサの屈辱でお馴染みの神聖ローマ帝国の皇帝ハインリヒ4世によってドイツ中央部の城代(日本で言う代官)に任命されたハインリヒ・フォン・グライスベルグと言う騎士で、そこから分割相続され地方君主としての地位を維持した状態でナポレオンの時代を生き抜き、最終的にドイツ帝国成立後は諸侯制度が廃止されるまで構成国の1つになったドイツ革命後もワイマール共和国から居城や庭園や図書館は勿論、貨幣鋳造所や武器貯蔵庫や森林も保障されていたが、1945年にソ連軍によって財産が没収された

ハインリヒ13世は不動産経営で財をなしたが、「世が世なら自分が領主になれたのに」という意識があったのかQアノン系陰謀論にドハマりし、バイエルン州のネオ・ゴシック様式の山荘はライヒスビュルガーの拠点にしたり、所有する不動産の1つにはロンドンを拠点にライヒスビュルガーの資産調達を行っていた複数の会社が入っていた。因みにロイス家の現当主のロイス14世から「錯乱した老人で誤った陰謀論に取り憑かれている。」と距離を置かれていたようだ

逮捕者の中には右派政党「ドイツの為の選択」の元連邦議会議員や裁判官や弁護士等の他、特殊部隊出身者を含む現役軍人や元軍人といった人間がクーデターの重要な部分に含まれていたようだ。


おまけ 日本で起きた不正選挙騒動



おまけとして日本で起きた選挙管理システム不正騒動について話そう。時はまだQアノンが日本に伝来する少し前に戻る。なんと選挙システムの開発元であるムサシの筆頭株主が故安倍晋三元総理大臣であるという陰謀論が流れたのだ。発信元は森友問題の被告である籠池泰典被告で「我が国の選挙制度について、本来手で開票していましたが、いまではムサシという機械が使われいますね。そのムサシという機械の筆頭株主も、安倍晋三首相とも聞いております。竹中平蔵さんがそのプロデュースしたということも聞いておりますなどと抜かした



それが切っ掛けで不正選挙疑惑が主に左翼内で流行り、それがTwitterなどで拡散された。私が驚いたのは反差別で知られる左翼系ノンフィクションライターがこの陰謀論を拡散したことだ。そして今現在Twitterで「ムサシ 不正選挙」で調べるとこの様な陰謀論を未だに拡散している勢力がいた。当たり前だがムサシの筆頭株主は故安倍晋三元総理大臣ではないし、ユダヤ金融資本の支配下にはいない皮肉にも後にバイデン不正選挙を叫ぶ保守系インフルエンサーはこの陰謀論に冷ややかだっただろう

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