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【読書感想】 後妻業


黒川博行著 2014年刊行
出版後に高齢男性が次々と殺される類似の事件が起こり話題にもなった。
タイトルにもなっている後妻業とは

「妻に先立たれたり、離婚したりして一人身になった資産家の高齢男性に遺産目的に近づき、言葉巧みに内縁の妻となる、もしくは結婚し、その後に遺産を奪い取ったり使いこんだりする女性」

https://www.worldprintmakers.com/marriage/second-wife.php

最近では“頂き女子”なんてものがニュースになっており、どちらもお金目的に男性に近づくことは同じだが、後妻業の方がより計画性の高い犯罪と言えるかもしれない。

作者の友人の父親が被害にあったことから執筆されたため、被害にあった時の怖さみたいなものが伝わってきた。


あらすじ

妻に先立たれた後期高齢者の耕造は、六十九歳の小夜子を後妻に迎えていた。ある日、耕造は脳梗塞で倒れ、一命を取り留めるも喋れない状態に陥る。
耕造の遺産を狙う小夜子は、結婚相談所を経営する柏木と結託し、早急に耕造の金庫から銀行の総合口座通帳と銀行印を奪い取り、三千九百万円をあっさり手にした二人。数日後、耕造の容体が急変する。
さらに、公正証書遺言を盾に、遺産のほぼすべてを相続すると耕造の娘たちに宣言する。

感想

物語は中瀬耕造が倒れる場面から始まる。その後は耕造の娘たちが後妻業に振り回されることに、後半は興信所の本多が小夜子について調査を進めていく展開になり、どんどん盛り上がっていった感覚でした。
特徴的なのは関西弁での掛け合いで非常にテンポがいい。登場人物はほぼ悪い奴なのだが会話が面白いのでゲスさが上手く中和されている。
特に小夜子と柏木のゲスさがひどく会話もこんな感じである

「爺は勃ったんか」
「勃つわけないやんか」
「倒れる前の話や」
「あいつ、スケベやねん。勃ちもせんくせにちんちん触ったったら、えらい興奮して、わたしのパンツ脱がそうとする。せやから、一回、一万円であそこをみせたるんや」
「あんた、金とって見せてたんか・・・・・・」
「あたりまえやんか。女のいちばん大事なとこをタダで拝もうなんて甘いわ」
「ええ根性やの」

「後妻業」36p

ひどい内容だが面白く読めてしまう。これも本作の魅力だと思う。

文庫版で479pだったけどスルスル読める。
興信所の本多が後妻業をビジネスにしている小夜子と柏木について調べていくミステリー的な展開と後半のハードボイルドな展開がうまくマッチして読みごたえがあった。


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