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誰かが体験した奇談。其十一『顔』

友人から聞いた話『顔』


昔は、第五の壁と言われるくらいテレビはとりあえずつけているなんて家庭は多かった。我が家も昔はそうだったんだが、今は消えていることが多いな。
うちの息子なんか、テレビなんて全く見ようともしない。
大学生にもなって勉強どころかパソコンでゲームをしてるよ。ヘッドホンとマイクをつけて朝まで騒いでるなんてことがしょっちゅうだった。
聞いてみると、誰だか知らない人とオンラインゲームしてるそうだ。年上だと思っていた人が、実は中学生だったりしたなんて話も聞いたよ。
そんな息子が、ある日を境にあまりゲームをやらなくなったんだ。
どうしたんだなんて聞いても、むにゃむにゃとはっきりしたことは教えてくれなかったんだ。
どうしてだと思う?
ある日教えてくれたんだけど、顔が怖いんだそうだ。

ある夜、息子はいつも通りゲームを立ち上げて、パソコンのモニターでゲームを始めたそうだ。
ところが、その日はあまりうまくいかない。
それでもいつものメンバーもいるし、楽しいからと続けていたそうだ。
深夜になって、ふと、誰がに見られているような気がしたそうだ。
でも、部屋の中には誰もいない。
うるさい両親は下の部屋でいびきをかいている。
気のせいだと思って、下の台所で牛乳を飲んだりしてやすみやすみゲームをしていたらしい。詳しくは知らないけれど。
それでも、誰かに見られている気がする。
最近ずっとゲームばかりしていたせいかなと思い、早々に離脱することにしたそうだ。
で、インターネットを切って、ゲーム機の電源を落とす。
液晶モニターはぷつんと切れて、黒く部屋の中を反射する。
その時、顔が写ったんだそうだ。
モニターの右下にこちらをじっと見ている無表情の顔。
あっと思った瞬間、その顔もふっと消えたそうだ。
それが何なのかは分からない。知った顔でもない。
ただ、不気味な顔が浮かんでいた。

誰かに見られているような気がしたのも、モニター越しにこの顔が見ていたような気がしたらしい。

それから、息子はあまりゲームをしなくなった。その顔が出てきたのは一度きりだったそうだ。たまにやっても以前ほど面白くなくなったそうだ。

それ以来、息子はテレビも見ない。
意識的に、テレビのほうを見ていない気がするんだな。

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