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【おとなりさんちの話】子どもの居場所 ここから@小城市

私たちは困った時に「助けてほしい」と、どれだけ人に言えるだろうか。「こんなことを言ったら迷惑じゃないかな」「誰に相談をしたら良いんだろう」と不安に駆られたり、「どうせ話をしても解決しないだろう」と悲観的な感情になったりすることがあるかもしれない。そんな時に「この人なら話せる」「頼ってもいいんだ」と思える相手がいることは、きっと救われるような気持ちになるだろう。それは、大人もこどもも同じだ。

佐賀県小城市で活動をしている「子どもの居場所ここから」。どこにも頼れなかったり、繋がれなかったりする人が頼れるような先になりたいと奔走をしている。発起人の兵動(ひょうどう)さんは、自身がひとり親であることや、こどもの不登校、発達特性の悩みなどを抱えているものの、信頼できるような理解者に出会うことができず、苦しい思いをした背景がある。「学校にも行政にも理解をしてくれる人がいなかった時、本当に孤立してしまうんです。」とその辛さを話す。保護者さえも、どこにも頼れる先がない時、親子で行き場を失ってしまいかねない。だから、地域で「誰でもきていいですよ」と場を開くことを約2年前から始めたのだという。

発起人の兵動(ひょうどう)さん

この日も夕方の17時、地域の公民館の部屋を開けて、メンバーが集まる。皆さんそれぞれが、発起人の兵動さんの思いに共感をしていたり、自身も同じような悩みを持っていたりすることから協力しているようだ。

地元の公民館であれば無料で借りることができた

徐々に大人もこどもも集まってくる。来ている大人の皆さんは、メンバーの人の知り合いがほとんどなのだそう。悩みを持っていると、同じようなしんどさを抱える親に出会うことが多く、その時に「ここに来てみない?」とメンバーの皆さんが、声をかけているんだとか。他にも、住んでいる団地で、通っている習い事で、と各々がいるコミュニティで気になった人に声をかけているのだそう。だから、顔見知り以上の関係性でお互いのこどものことも知っていたりする。「最近はどうね〜」「⚪︎くん、新しい学校はどうなん?行けとる?」と声をかける姿が印象的だ。親子で来ることもあるし、中には親だけが話に来ていたり、こどもだけが遊びに来たりすることもある。

悩みを抱えている家庭、親の場合に、経済的なサポートも心強い。寄付でもらったものを渡すようにしているそう。
その場に来て、楽しそうに会話をする大人の皆さん。

中には、最初一人で来ていた人が仲間を連れてきたり、表情が明るくなっていったりする人もいたという。家に居て、出られずにいたけれど、ここに出てこられるようになった人も。そんな変化を見守りながら「次はこんなことをするから来てね」と絶えず、ここにいる「おとなりさん」は明るく声をかけているようだ。

一方で、その間にこどもたちには勉強の時間として場を開いている。名前の通り、宿題や課題をしに来ている人もいれば、「終わった〜」と遊んだり、たわいも無い会話をしたりするような自由な空間だ。まるで、学校の自習時間みたいだ。小学校中学年〜高校生まで幅広い年齢であるにも関わらず、学年の垣根を超えて、楽しそうに会話を楽しんでいた。時には、勉強を教えてもらうことでテストの点数が伸びた子もいるようで、「俺、この間の点数が⚪︎点伸びたんだよ!」と自慢げに話していた。

それぞれ、いつも来ていて、お互いを知る仲なんだとか

こちらの女子グループは高校生やボランティアで来ている大学生。それぞれが、まるで友だちのような関係になっているという。「毎回、来ると今日あった楽しかったことや面白かったことを話していることが多いですね〜」と教えてくれる。たまに進路相談なんかも。そんな、ゆるくてカジュアルな関係が居心地の良さをつくり出しているのかもしれない。

ボランティアとして関わる大学生。勉強を教えに来てくれているらしい。

敢えてスタッフの「おとなりさん」たちは、こうしたこどもたちの中に入らないようにしているという。「それぞれが、どうやら考えていることがあるようで。大人が聞いて話したく無いこともあると思うんです。」居心地の良い空気を壊さないようにと、様子を見ながら距離感を測っていることがうかがえる。ちょっとした時に「勉強は終わったと?」「おにぎりあるよ〜」と声をかけるくらいが丁度良いようだ。大人には大人の見える景色があるし、こどもにはこどもだから見える景色がある。そんな、それぞれの見え方を大事にしているのかもしれない。いづれは、自分たちだけでこどもの居場所をつくって=開いてもらえたらと思っているという。

誰にでも明るく関わる渡邊(わたなべ)さんも、大人とこどもで関わり方を調節しているように感じた。

それでも、常に「元気で過ごせているか?」を気に掛ける思いは変わらない。「もっと早くに気づいてあげられたら良かった」そんな風に思い返すこともしばしばあるようだ。気に掛ける皆さんのあり方はまるで互助会のようで、繋がり合っている人たちにとって、「おとなりさん」たちの存在はとても頼もしく写っていることでしょう。

「みんなちがってみんないい ここからいっぽはじめよう。」心強いエールをいつも送り続けてくれます。

代表・発起人の兵動さんとメンバーの皆さん

月に1回、こども食堂も実施しています。

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子どもの居場所 ここから
おとなりさん:兵動さん、地域のおとなの皆さん
おとなりさんち:牛津公民館(小城市牛津町柿樋瀬1100-1)
⚪︎子どもの居場所 週1回(月曜日)16:00~19:00
⚪︎学習支援 週1回(月曜日)18:00~20:00 小中高生、ひとり親家庭は無料
⚪︎ここから食堂 月1回(日曜日) 高校生以下 無料、大人200円

詳しくはこちら ▷ https://www.instagram.com/coco.ogi/

instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/

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小城市には、他にも素敵な「こどもたちのおとなりさん」がいます。
是非のぞいてみてくださいね。

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こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。

編集・書き手・写真 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)

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