佐賀県“子どもの居場所立ち上げサポーター”がメディア「こどもたちのおとなりさん」に込めた想い
佐賀県子どもの居場所立ち上げサポーターとは
だれかに頼ることは悪くない。頼り先を増やすことは自立への一歩。
ここで、子どもの居場所になぜこだわるのかと思った人もいるかもしれない。立ち上げサポーターとして今考えていることを少し伝えさせてください。
唐突だが、だれかに「頼る」ということにどんな印象を持たれるだろうか。私の場合、親も先生も「そんなんじゃ大人になれない」とか「頼ってばかりいないで」とかよく言っていた記憶がある。つまり、良いことではないのだとずっと思っていた。でも本当にそうなのか、という問いに立ち返りたい。
この考え方は、脳性まひの障害を持ちながらも小児科医として勤務するほか、様々な当事者と共同研究をされている熊谷晋一郎さんのものだ。障がいの有無にかかわらず、私たちが一人でできることには限界があって、だれかに頼れる先があること自体が「日常」をつくっているということに気づかされる。そして、不完全だからこそ支え合おうとする、そのかかわり自体が「ありがとう」「うれしい」「よかった」のような心の豊かさにつながっているのかもしれない。
だれもに頼り先があれば「できなからダメだ」ではなく、「だれかと一緒に解決しよう」「このままでも大丈夫」となるはず。しかしながら、特に子どもたちを取り巻く現実を見てみると依然として厳しそうだ。
このデータは生活への満足度や自殺率から算出されている結果だが、児童虐待件数・不登校児童数・発達障害のある子どもの割合なども過去最高なものとなっている。これが直接的な困りと必ずしも結びついていない場合もあるとは思うが、「こども」の自尊感情の低下(自分はだめだ)や孤独感情(自分はひとりだ)は、複合的な要因によって強まってきているのではないだろうか。
だれもが子どもの居場所になれば、もっと生きやすくなる
佐賀県では子どもたちにとって、家庭でも学校でもない、気軽に立ち寄れて
”ほっと“できる場所、地域の子どもと大人が出会える場所のことを「子どもの居場所」と称し、取り組みを後押ししている。
子どもの居場所立ち上げサポーターは、そんな居場所に興味のある人の背中をそっと押す役割を担っている。実際に地域の皆さんの声を聞くと素敵な想いばかりで、ふと涙ぐんでしまうこともあるほど。しかし、やるからには子どもたちがたくさん来る状況をつくらなくちゃいけない気もしてしまうようで、「お金がないからな」「自信がないし」という声も幾度か聞いていた。そこで2022年度に開催をしたのが、すでに子どもの居場所をやっている人の話を聞く事ができるリアルイベント「子どもの居場所なんでも相談会」だ。
県内の4地区「子どもの居場所」をしている方々に、ご自身がどのように捉えているのかを聞いてみた。
見ての通り、それぞれが子どもの居場所に様々な思いを馳せながら、ご自身の見たい景色を描いていることが分かる。どれが正解なんてもちろん無い。居場所をしている「想い」やその先にある「願い」こそがだれかの日常を彩ったり、救うものになるのかもしれない。そう思うと、子どもの居場所は “なにをするか(do)"ではなく、“どうあるか(be)”が最も重要で、かけがえのないものような気がしてくるのだ。
こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を
2023年4月こども家庭庁が新設されて国が「こどもの声を聴こう」と、こどもや若者の権利を守るための考えや姿勢を示し始めている。そして既にお伝えした通り、子どもの居場所は地域の一人ひとりの素敵な、まさに自ら「こどもや地域の声を聴こう」としている場所であり、人がいる。
だから、もっとその想いやその人を地域のこどもたちや大人の皆さんに知ってもらいたい。だれもが頼っていい人や場所が、すぐそばにあることを日常の支えにしてほしい。
メディア「こどもたちのおとなりさん」では、佐賀県で暮らすこどもたちにとっての ”おとなりさん” となるような「ひと」や「けしき」をお届けしていきます。
Instagramでは写真を、noteでは文字を中心とした読みもので「こどもたちのおとなりさん」を発信していきます。
▶︎アカウントはこちら https://www.instagram.com/kodomo.otonarisan/
こどもをまんなかに、ほっとできる瞬間がそばにある社会を皆んなで緩やかにつくっていきませんか。
編集・書き手 : 草田彩夏(佐賀県こども家庭課 地域おこし協力隊)
写真協力 : 小野真由美・藤本幸一郎
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