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デイヴィッド・ホックニー DAVID HOCKNEYとその芸術

来歴と作品


 1937年イングランド北部のブラッドフォードに生まれ。同地の美術学校とロンドンの王立美術学校で学ぶ。1964年ロサンゼルスに移住。アメリカ西海岸の陽光あふれる情景を描いた絵画で一躍脚光を浴びた。
 60年以上にわたり美術表現の可能性を探る試みを続け、現在はフランスのノルマンディーを拠点に、精力的に新作を発表している。2017年には生誕80年を記念した回顧展がテート・ブリテン(ロンドン)、ポンピドゥー・センター(パリ)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)を巡回し、テート・ブリテンでは同館の記録となる約50万人が来場するなど、ホックニーは現代を代表する最も多才なアーティストのひとりとしてその名を確立している。

 1961年に渡米、1964-67年にイギリスに帰国し、のちにアイオワ、コロラド、カリフォルニアの各大学で教鞭をとり、英米を行き来する。1978年には、ロサンゼルスに定住。イギリスと異なる、カリフォルニア特有の強く眩しい日差しと独特の洗練さを持ち合わせる「カリフォルニア・モダン」のスタイルは、ホックニーを魅了し、その影響は大きく、作品にも見られるもの。


IPAD制作

 2010年、再びデイヴィッド・ホックニーの作風を大きく変えたのは、iPadの発売だった。ホックニーはiPadが発売されてすぐに、作品制作にiPadを活用し始める。当時、画期的だったiPadの色彩調整機能を多く使用した。
 風景画を描くことが多かったが、その際に絵具の乾きや、変わりゆく日の高さの影響で、作品制作に苦労していた。しかし、iPadで色彩を調節できるようになったことで、彼の作品制作の作業は大きく変わっていった。


同性愛者として


1961年、当時まだ同性愛が違法だった時代に、デイビッド・ホックニーは自身が同性愛者であることをに公表します。そんな時代にあっても、同性愛者をテーマとした作品《We Two Boys together Clinging》(1961年)を制作しています。
この作品は、洗面台の前で2人の男性が情熱的なキスを交わしている様子を描かれています。制作背景として、ホックニーは、新聞記事として掲載されていた、登山事故で一晩中崖にしがみつく2人の少年の写真からインスピレーションを受けたといいます。
この作品はホックニーがロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートに在学中に制作したものです。この二人の青年が親密な関係が描かれた表現について当時の社会規範に反する「勇敢な表現」として、多くのメディアの注目を集めました。

We Two Boys together Clinging

日本から受けたインスピレーション

一九七一年十一月、ホックニーは初めて日本を旅行し、イギリス に帰国後の一九七二年、アクリル《画カンヴァスに降る日本の雨》および《富士山と花》を描き、更に翌年ロサンゼルスでは版画連作の「ウェザー・シリーズ」を制作した。 彼は自伝の中で、実際に日本を訪れた際、工場のひしめく風景にがっかりした一方、伝統的な美術には魅了されたと述べている。
 一九八三年二月、ホックニーは京都の国際「紙」会議に招聘されたことをきっかけに再び日本に滞在し、 同月二十二日には龍安寺を訪れた。 ホックニーの自伝によれば、この寺院の石庭を写真コラージュにしたことが「逆遠近法」の意義を発見するきっかけだったと いう。

「逆遠近法」の発明

 一九八〇年代、 ホックニーが制作した写真コラージュの連作は、当時革新的な視覚表現として世界的な注目を浴びた 。 通常、一枚の写真は一点透視図法の絵画と同様、焦点が一つしかなく、 静止した一瞬の時間しか示せないのに対し、複数の写真を組み 合わせることで、 人間の運動や時間の流れを表現しようとしたのである 。 彼はこの新たな視覚表現を理論化し、一点透視図法とは異なる表現を求める中で、独自に「逆遠近法」 という視覚のあり方を提示し、 以降の制作にも活かし始めた。
 ホックニーによれば、 まずルネサンス以来の伝統的な西洋絵画で は一点透視図法によって絵画空間が唯一の焦点に収斂し画面の枠が 規定されるため、観者の位置は画面の外の決まった位置に固定され、 それゆえ一瞬の時間しか示せず、描かれるモチーフも観者も凍りつ いたように動きがなくなってしまう。


この図録は1986年から88年にかけてワシントンD.C.の《International Exhibitions Foundation》によって企画され巡回したホックニーの写真展に合わせて刊行された図録で、ホックニーが1983年にロンドンのビクトリア・アルバート美術館で行なった写真についての講演から書き起こしたエッセイを収録している。




※ロサンゼルスから受けたインスピレーションについて、インタビューに答えるホックニー


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