俺のブックオフ偏愛履歴
みんなブックオフに行ってるかい?
そこは人生のいかなるフェーズにも開かれてる寺子屋みたいなものだ。
俺は小学生からブックオフに通い詰めてる。
最初は狂ったようにマンガを読んだんだ。
マンガの上に座ってマンガを「座り読み」してた。
クソったれな小学生だった。あの頃の自分に出会ったらゲンコツのひとつでもいれてると思う。
でも、そのおかげで世の中に色んなマンガがあることを知った。ドラゴンボールから少女マンガまであらゆる漫画を読んだ。
子どもにとって多様性っていうのは世界の複雑さをそのまま直に受け取るチャンスなんだ。
中学生くらいになって、文庫本コーナーに寄ることになったな。小説なんかを読み始めたんだ。
小説はベストセラーの面白そうなやつが100円とかで売っていてよく買っていた。
1週間は一冊の本で時間が潰れたから安いもんだった。
当時は簡単そうな本を選んで読んでたけど、相当つまらないものでも全部読み切ってた。
子どもの頃の100円は今の1000円に等しい。
今では小説の冒頭がつまらないと思った瞬間に読むのをやめてしまう。
大人になるって期待がなくなることなんだよな。
時間もないし期待もない。
あの頃本を買うとなんだか誇り高い気持ちになった。
物を買うって行為もそこまで経験がなかったから、レジで金を出すだけでも楽しかったのかもしれん。
雑誌もよく買った。
美容系というか、「イーエルオー」っていう、若者向けのファッション誌を買ってた。
これ、一見おしゃれ雑誌なんだけど、際どいグラドルの写真やら、コンドームの付け方やら、デートの仕方やら、ワックスのおすすめやら、とにかく若者の欲望のすべてが載ってる雑誌だった。
あれってまだ刊行してるのかな。
このおかげで、女の子の気の引き方やら、魅力的な男はこうあるべきなのかという全く見当違いの常識を手に入れた。
例えば、萌え袖男子はモテる、とか。
俺が萌え袖なんかやっても別にモテんだろ。
読者モデルのかっこいい男がやるからかっこいいわけで。
普通の中学生がやったところで、服のサイズミスった奴にしか見えん。
それで、高校になった。
高校は部活が猛烈に忙しくてプライベートがほぼなくなってしまったから、ブックオフからは足が遠のいた。
あぁ、愛しのブックオフ。
いわゆる、カップルの「距離を置こう」ってやつをしてしまった。
大学生になる。
この時期はめちゃくちゃに通った。
まじで店員の名前と顔が一致して、何の本がどこにあるのかすら把握するレベルで通ってた。
大学の最寄りにブックオフがあったから、空きコマはずっとブックオフにいた。
図書館だと集中できないのに、ブックオフの立ち読みは集中できるのはなんでなんだろう。
立ち読みとか厳しすぎる環境なのに、妙に落ち着くから不思議だ。
講義の本も買ったし、趣味として読む物の幅が広がった時期。
社会学、哲学、心理学、自然科学、人類学、宗教学、歴史、経済、政治、、、
とにかくめちゃくちゃに買ってた。
あんまり分からんくせに。
とりあえず岩波文庫は名著みたいな感じで買いまくった。バカの典型。
まあ、それでもなんとなくの知識は付くから、かなり嫌なタイプのインテリア崩れになった。
なんでも分かってるような話し方になって、ある概念、社会学だったら社会全体を説明できるような概念を覚えて、それを実際の生活であった出来事に当てはめてその解釈を語ったりもしてた。
激痛な時代。
ただ、乱読の時代はあってよかった。小学生の時に感じた「世の中は広い」って感覚を大学生になってまた感じることができた。
そこには、世の中の出来事を自分なりに位置付けたいっていう欲求がすごいあった。
大学生になると、自分と周囲の人間との関係性や、自我について色々悩みがあったから、その答えをくれる場所がブックオフだった。
書店っていうのは綺麗で本の在庫管理も完璧だから本も探しやすくて便利だ。
だけど、整備されすぎた街って感じで、何かこう、予定調和で安全でハプニングのないイメージがある。
それに引き換え、ブックオフはジャングルであり、スラムであり、偶発性の温床なんだ。
有象無象の本の山をかき分けて、自分のこころに響く本に出会う場所。これからも通い詰めることになるんだろうな。
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