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♡Hazuki♡
2022年7月12日 00:20
「遠くに行きたい」いきなりコーヒーカップを置き、彼女はいつもの笑顔でそう言った。ひと呼吸置いて、さらにリズミカルに言葉を続ける。言葉はどんどんコーヒーカップの中に飛び込み、茶色い飛沫を上げながらテーブルに散らばる光景は、彼女が楽しくなった時によく現れる、羅針盤を失った頭の中を覗くようだ。せめてでも、白のテーブルクロスが引かれていたら、彼女の思い描く未来が分かりやすかっただろうに。
2022年7月5日 13:09
暗く深く広がる闇の中で、私はいつも彷徨い途方に暮れている。雨が降っても逃げる場所はなく、ただ天から落ちてくる無数の愛撫に頬を差し出すだけ。この赤黒く生温い塊は、間もなく冷えて大地の一部になるだろう。主よ、これか赦しなのか?下草に覆われ、私の形が消えてしまう前に、もう一度あなたの腕の中で息がしたい。雨音に消されてしまう程の私の小さい鼓動を、木々を揺らす風に乗せるから。気が付いて欲し