「終わりがあるから素晴らしい」
人生には、様々な苦しみがある。
いわゆる「生老病死」は「四苦」と言って、人間の大きな苦しみの代表的なものだ。
生きる苦しみ、老いていく苦しみ、病を得る苦しみ、そして、死ぬ苦しみ。
人間はどうしてこんなにも苦しい「生」というものを迫られるのだろうか。
昔、ある人物に言われた言葉がある。
「ゆうちゃん、人生のほとんどは苦しみだよ。人間の身体も、財産も、借り物なんだ。いつかはこの大地に返さなくてはいけない」
そのときは意味がよくわからなかったが、今になって、その言葉の意味がだんだんわかってきた。
確かにこの身体も、自分のものではない。
大いなる存在から、いっとき借りているだけのものだし、この身体でさえ自分のものではないとしたら、財産や地位、名声なども借り物であることは容易に想像がつく。
いつかは返さなければならない。
私たちが最期を迎えるそのときに、向こうの世界には何も持っていけない。
いつか私たちは、人生において手に入れてきたすべてを失うことになるのだ。
老いることも、病を得ることも、悲しく、辛いことだ。
人間は余りにも無力で、小さな存在である。
しかし、だからこそ人間は素晴らしい存在なのだとも言える。
美しい陶器があれほど珍重されるのは、その脆さゆえである。
桜があのように皆に感動を与え、愛されるのは、その儚さゆえであろう。
終わりがあるから尊く、美しいのである。
私たちは、脆く、儚い存在だが、それゆえに素晴らしい。
この限られた生を、せめて精一杯生きようではないか。
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