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Issue #04 | 食品ロス

地域・社会の課題を考える「Issue」。

今回のテーマは、「食品ロス」です。


下記のような定義がされている「食品ロス」。

まだ食べられるのに廃棄される食品のこと

出典:消費者庁web(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/education/)


日本における「食品ロス」の実態はどのようになっているのでしょうか。


日本における「食品ロス」は、推計年間570万トン。

毎日1.5万トンの「食品ロス」が出ているといいます。


その内訳は、

・規格外品や売れ残りなど事業系ロスが309万トン

・食べ残しや過剰除去など家庭系ロスが261万トン

と、事業系・家庭系がおよそ半々となっています。


「食品ロス」と聞けば、“もったいないから良いことではない”ということは直感的に分かるかと思いますが、

・日本の食料自給率(カロリーベース)は4割弱のため輸入に頼らざるを得ないにもかかわらず、多くを捨てていること。そして、日本では食余りが起きている反面、世界では、8億人以上が飢餓に苦しんでいること。

・「食品ロス」が発生するということは、ゴミとなるということで、ゴミ処理コストという面では行政財政にマイナスであり、また、焼却に伴う環境負荷にもつながること。

と、国・世界視点で見ても様々な問題が生じていることがわかります。


少し前(2014年)の記事ではありますが、一般社団法人産業環境管理協会の記事に問題の実態が視覚的に分かりやすくまとまっていました。
一般社団法人産業環境管理協会web:https://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-4.html


多くの弊害が生じているにもかかわらず発生し続ける「食品ロス」。
この問題の背景をリディラバジャーナルの特集記事からさらに深堀りしてみました。


食品流通のサプライチェーン(生産→加工→小売→消費)を追っていくと、そのところどころで複雑な発生要因が存在しているとわかります。


(生 産)
特にも農業の生産現場では、規格外品が5-10%程度発生。また、畜産業や水産業など他の1次産業と異なり薄利多売モデルであることから、市場価格維持のための廃棄が発生。
※生産現場でのロスは、「食品ロス」統計に含まれていない。

(加工&小売)
食品業界の業界ルール「1/3ルール」「先入れ先出しルール」による廃棄。そして、事業ゴミの処理費用が、「焼却<リサイクル」というケースが一部の自治体において生じている実態。コンビニ業界特有の「コンビニ会計」の存在。

(消 費)
食べ残しや過剰除去、直接廃棄により発生する廃棄の発生。


ここまで、見てくると課題ばかり…となりますが、

では、国や民間は何もやっていないのかというとそんなこともありません、!


政府においては、「食品ロス」削減に向けた普及啓発運動や食品リサイクル法といった法整備が。また、民間においては、食品リサイクルを通じた飼料化・肥料化・エネルギー化やマッチングアプリなどの事業化や、NPO等によるフードバンクの取り組みが。それぞれ行われてきました。



【所見 -あり方を考える-】


「食品ロス」は、生産・加工・小売・消費と多種多様な関係者が存在し、経済・伝統・・の力学によって生じているまさに社会課題です。


生産現場の廃棄を禁止すれば、加工・小売に係る食品業界の業界ルールを禁止すればと頭で考えることは簡単ですが、経済の実態を反映した結果が今ということを考えるとまさに“言うは易く行うは難し”です。


この課題解決に必要なのは、消費者である私たち1人1人の意識変化であると考えます。環境への配慮を重視する/「食品ロス」を疑問視する消費行動が広まれば、市場も変化を迫られます。この、意識変化に必要なのは「教育」ではないでしょうか。


とはいえ、極度に分業が進み・ものが溢れる現代において、食べ物のありがたみを実感することは多くの方にとって少ないです。


「生産の現場に触れる」この経験こそが、長期的に、食べ物に対する意識を変え、消費者行動を変えることになるのではと。


その点において、企業の福利厚生としての農(生産の現場)に触れる機会の創出は、大いに可能性があると感じます。

担い手が減少し、耕作放棄地が増加する農業の問題。耕作放棄地と企業をマッチングし、企業従業員が現地の農家さんの指導・管理の下、農作業を行い・収穫した作物を消費する。

企業従業員にとっても、ただただ作業をするだけでなく、食べ物に対する意識変革に加え、健康増進や社内コミュニケーション、家計消費の1/4を占める食費の負担軽減など多くの価値があるはずです。

現状、企業が田畑を所有するということはまだまだハードルが高いため、また、スキルや管理の点でも、実現に際しては、現地の農家さん・農業団体との連携が不可欠です。この、現地の人との関係構築は、「第2のふるさと」としての関係人口創出にも寄与しうるのではないかと考えます。


少し、ベクトルが異なりますが、ロシアの都市住民の多くが所有する「ダーチャ」の伝統も面白い1つの人と食べ物との距離感のあり方ではないかと感じます。



<参考文献>

▷リディラバジャーナル

・intro【食品ロス】年間621万トンの真実
 https://journal.ridilover.jp/topics/1

・no.10 廃棄を見ている人からの‟声”。広がる消費者とのギャップ
https://journal.ridilover.jp/issues/21?journal_user=journal_user_7243&journal_token=20220817112919IsoxyJYZpf2hCWb1D3

▷内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html

▷西日本新聞:
ロシアの自家菜園を訪ねて 1年分の食料 自給自足 野菜、果物…兼業農家並み
https://www.nishinippon.co.jp/item/o/40348/


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