不器用な先生 726
学生たちは曽根君の言葉の壮大な発想に惹きつけれているようだった。量として測り知れないことは思いながらも、その確信に満ちた言葉に魅せられるものが、あったからだろう
「どんなきかっけで、曽根さんはそんなことを思いついたの?」
このみが聞いていた。
「ぼく自身も、 『貧困と飢饉』を読み終わったときには、方向が見えてはいなかったんだけど… 荒川先生が宇野先生に合いに行くっていったときに思いだしたことがあったんだ。教養学部で、宇野先生の社会学の授業を受けていたころのことをね」
それを聞いて幸太郎が、何かを思いだしたようだった。
「もしかしたら社会調査のデーター集計の話があったときのことじゃことじゃないだろうか」
曽根君が頷いた。
「社会学の授業でそんな話があったかしら、わたしは憶えていないけど」
「ぼくも覚えていないが、曽根君と前島君が憶えているのは、その頃からある意識があったからじゃないだろうか。社会の多くの問題を解決するのどうすれば良いのか、常に考えていたからじゃないかと思うんだけど」
池田君の言葉には、このみへの慰めのようものが観えていた。当時の曽根君と幸太郎の気持を観察したような口ぶりだったが、それは池田君自身の気持でもあったのではないかとさえ思えるのだった。
「ふーん、そうなんだ。そのとき宇野先生はどんなことを言っていたのかしら?」
幸太郎が当時を思いだしながら話しだした。
「たぶんこんな話だったと、思うんだけど…」
幸太郎が語った宇野先生の話とは、以下のようなものだった。
聞き終わったとき須田君が言った。
「宇野ゼミとの交流の意味が、ますます大きくなった、そんな気がしますね」
学生たちと一緒に、ぼくも頷いていた。
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