留学生と移民というアメリカの強みは?

アメリカが世界最強だった理由はいくつかあるけれど、中でも大きいのが「世界中から人材が集まる」だったと思う。古くは日本人もフルブライト留学生としてアメリカに行き、優れた業績を上げてきた。ビジネスでも成功した人多数。こうした人材がアメリカの強さを支えてきた。

しかし、このシステムにほころびが生じている。原因は格差を放置したこと。
シリコンバレーには世界中から優れた技術者が集まり、巨万の富を得た。他方、ラストベルトと呼ばれる地域の人々は貧しいまま。シリコンバレーやニューヨークの人々を恨む気持ちが高まっていた。

その不満をうまくすくい上げ、大統領にのし上がったのがトランプ氏。移民の人々がシリコンバレーに集まったり、アメリカの大学へ留学するのを難しくする仕組みに変えるなどして、ラストベルトの人たちから喝采を浴びた。このとき、特に中国人留学生は目の敵にされ、アメリカに留学しづらくなった。

しかしこれまで、アメリカの論文には必ずといってよいほど中国人の名前が入っていた。なのに中国人を排斥したことで、そして中国も国をあげて優れた人材が中国国内で活躍できるよう厚遇するようになったので、アメリカにはろくに中国人留学生が行かなくなったもよう。

バイデン大統領になってから、外国人排斥はたぶん緩んだだろうけど、中国に対する姿勢は変わらず厳しいから、中国人留学生も減っているだろう。これはアメリカの強さの源泉の一つが失われたことにもなるように思う。

それに、ラストベルトの人たちの貧困はまだ解決していない。そんな中で以前のようにシリコンバレーやニューヨークの人たちばかり優遇し、お金持ちにするわけにいかないだろう。そうした動きは、アメリカの世界に対する人材吸引力を弱めることになるように思う。

人材が集まらないならアメリカの強みも徐々に失われていく恐れがある。アメリカの国力が落ちることは、日本の食料安全保障に影を落としかねない。アメリカの国力に余裕が失われれば、日本に構う余裕は失われるから。

留学生や移民を受け入れるシステムを、アメリカは続けられるか。国内のラストベルトの人たちの不満を和らげることができるのか。こうしたことが解決しないとアメリカの国力は損なわれ、ひいては日本の食料安全保障が揺らぐ恐れがあるように思う。

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