百田氏の発言

こんなことは普通私は言わないが、こんな発言続けるようなら社会から姿を消していただきたい。女性を何だと思っているのか。命を何だと思っているのか。

https://news.yahoo.co.jp/articles/22d672b990da7640b39be86c60e4eef486105057


日本の「保守」と呼ばれる中の一部には、こうした意見が少なくないらしい。以前、仕事でお世話になったことのある人から久しぶりに電話があって、今は日本会議で楽しく活動しているという。私は日本会議のリアルな話が聞けると思って、いろいろ興味深そうに質問を繰り返した。


で、どうやら浮かび上がってきたのは、定年退職して、妻や娘、嫁などから総スカン食らって腹を立てている高齢男性の慰めの場となっているらしい、というのが見えてきた。「今の女性は貞淑さが足りない、我々はそれを取り戻すべく、運動しています」と胸を張っていた。


どうも、家族のために一所懸命に働き、定年退職したら「あなたのおかげで私があります」と、妻や娘、嫁などから感謝され、尊敬される余生を送れると思っていたらしい。ところが「あ、そう」くらいの扱いを受けて、不当だ!俺はもっと尊重して扱われるべきだ!と怒っているらしかった。


別の、経営者が集まる会合で講演する機会があった時、似たような憤懣をぶつけられたことがあった。今の若い女性はけしからん、と怒っていた。自分に対する敬意が足りない、と。お金もあって社会的にも敬われる自分が、家族から尊敬受けないことに不満らしかった。


どうも、日本で「保守」を名乗る中の一定数で、「金も名誉もある自分がなぜ妻や娘、嫁から尊敬を受けられないのか」という日常の不満から、「保守」という看板のもとに「女性は貞淑であるべきである」という主義主張を政治運動として掲げるようになっているケースが少なくないらしい。


で、私はズルいから「そうですか、ほう、そうですか」と興味深そうに聞くから、データとしてかなり収集できたように思う。そして、その人たちには申し訳ないけれど、「そりゃ妻や娘、お嫁さんから拒否されて当然だわなあ」と、内心思わざるを得なかった。


結局はその人たちは、「家族のため」と思って働いたのかもしれないけれど、「お金さえ持って帰れば尊敬もされ、感謝もされる」と、浅はかな考えを持っていた気がする。でもそれ、女性の立場になって考えれば、札束で頬を叩かれているようなものではないだろうか。それで心を勝ち得るとは思えない。


女性に敬意を抱かず、常に下に見、昔で言う下女のように考えているのがわかるから、妻や娘、嫁から総スカンを食らうのだろう。自分の考え方、生き方、ものの見方に原因があって起きることなのだが、それを「女性が貞淑さを失った」と一言言えば、自分が正義に変わると信じているらしい。


しかし、そんな考えで、女性を何と思っているといえるのか。自分の母親まで、札束で頬を叩かれたら頭を下げ、尊敬し、感謝する人間だと考えているのか。自分の妻を、娘を、嫁を、そんな人間だと考えているのだろうか。そんな人をコケにした話はない。


そうした男性からしたら、「家族のためを思って身を粉にして働いてきたのだ」と言うだろう。実際、そうした人からそうしたフレーズを何度も聞いたことがある。そう思ったのは事実だろう。しかしこれまでも私は書いてきたが、「あなたのためを思って」はだいたいろくでもない。


「家族のためを思って」というフレーズには、大概、陰に陽に、意識してか無意識か、「期待」がある。家族のためを思って、あなたのためを思って何かをしたら、その見返りはきっとある、と、どこかで期待している。そしてその期待が裏切られると勝手に落胆し、失望し、そして怒る。


「あなたのためを思って」シリーズは、だいたい、「なのにあいつらは感謝もしない」と怒る感情とセットになっている。本人は「そんな期待などしていない、無償の愛だ」というのだけれど、無償の愛にしては怒っている。結局、期待した反応がないから怒っている、としか私には見えない。


本人からしたら、尊敬と感謝なんてお金のかかることじゃないんだし、何より実際に世話になったんだから感謝することくらい当たり前じゃないか、といういい分なのだろう。しかし札束で頬を叩かれた場合、私は、心の底から感謝はムリがあるように思う。内心は唾棄したい思いが湧き上がるだろう。


家族でいるということは、互いの敬意がなくてはならないと思う。けれど、お金を渡しているという自分の優位を信じている時点で、相手を軽んずることになっているということに気がつかないらしい。「お互いさま」ではなく、「金を払っている方が優位なのは当たり前だ」という考え方。


まさにこの考え方が、札束で頬を叩く行為だと気づいていないらしい。それが相手の尊厳を傷つけ、深く恨まれることになっても当然だということに気がつかないらしい。もし自分がそれをやられたら、たぶん歯噛みして悔しがるだろう。そのことに思い至っていないらしい。


百田氏の今回の暴言(いくらSFの話だとごまかしてもムダ)で、そうした日本会議に参加する高齢男性たちの話を思い出した。みんながみんなそうではないと信じたいが、そうした人たちは、女性の敬意を得ることは難しいだろう。そして拒絶され、結婚してもらえなくても当然だろう。


私が思うに、百田氏は日本を滅ぼしたいのだと思う。SFとごまかしたところで、日本の一定数の男性が、このような考え方を持っていることを明らかにしてしまった。ごく最近も、Facebookで似たような発言を別の人から私は目にしたばかりだった。どうも、こうした男性は少なくないらしい。


もし、たまたま結婚しようと思った男性がこうした考え方だったとしたら?あるいは舅がそんな人だったとしたら?女性は怖くて結婚をためらうだろう。百田氏が愚かでないならば、そこまで計算に入れたうえで発言している可能性がある。つまり、日本で結婚する人を減らしたいのだろう。


そして少子化を進めたいのだろう。百田氏は口では少子化を食い止めるため、と言っているが、その実、少子化を進めたいがための暴言と考えると、百田氏は実に見事に戦略的な発言をしているのだと言える。


もしそうではなく、百田氏が少子化を食い止めるつもりで本気で言っているなら、愚かである。百田氏が賢くて少子化を進めたいのか、愚かで少子化を停めたいのか、そのどちらかなのだろう。そのどちらにしろ、ろくでもないことは確かだ。


追伸

厄介なのは、恐らく百田氏は批判が来ることも承知の上で、「そうだそうだ!よくぞ言った!」と共鳴するおじさんたちの発掘をするのが狙いだろう、という点。そのおじさんたちも鼻白むような批判が来なければ、百田氏はむしろ味方を増やすことになるだろう。

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