子どもに出会う機会がない若者(大人)たち

大学院生を食事に招いたところ、女子学生二人とも赤ちゃんを抱いたことがないという。当時赤ちゃんだった息子を抱いてもらった。おそるおそる。毎日食事に招いて、そのたびに赤ちゃんと触れ合うことになり。あるときふと、「実は子どもが苦手だったんです、どうすればよいのかわからなくて」と。

親類にも小さな子はおらず、子どもと出会う機会はなかったという。で、子どもという存在の得体が知れないので、どうすればよいかわからず、距離を取ってきたという。「でもこうして毎日接するうちに、かわいいと思えるようになってきました」。二人とも早くに結婚し、子どもも授かってる。

ウェブ飲み会で「親ガチャ」について話していたときも、若い女性が「子どもと出会う機会がない」と話していた。職場の女性の子どもと少し挨拶するくらい、お客さんの連れて来る子どもと少しすれ違うくらいで、それ以外には子どもと接することがないという。だから子どもを生みたいとも思わない、と。

考えてみると、これは少子化の大きな要因なのかも。年代を超えて子どもと接する機会が失われ、子どもとどう接したらよいのかわからない若者・大人が増えているように思う。だから逆に、変な目的で子どもに近づこうとする大人が悪目立ちする感じにもなっている気がする。

まだ赤ちゃんだった息子を連れて、私の祖母がいる施設を訪問したことが2回ある。赤ちゃんを見たお年寄りたちは、一様に目を輝かせ、顔をほころばせた。ムスッと怖い顔していたおじいさんまで、なんとまあ、好々爺といった表情に。そのとき、ああ、そうなのか、と気づいたことがいくつかあった。

・この世代のお年寄りは赤ちゃんが大好き。
・この世代はほとんどが結婚し、子どもと接してきた世代だから、子どもを愛おしく感じる人が大半らしい。
・こんなに嬉しそうな顔をみんながするのは、逆に言えば赤ちゃんに接する機会が、ほとんどのお年寄りでないらしい。
子どもが好きでも出会えない。

ほとんどの大人は、子どもから隔絶されている。接することがほぼない。子育てしてる親と祖父母と、教育関係の人間だけが子どもと接することができる。子どもは非常に限られた大人としか出会えず、大人になると、結婚し子どもを生まない限り、子どもと出会う機会はほとんどない。

動物園で子どもと接したことのない動物は、子どもを生んでもどうしたらよいのかわからず、育児放棄になることがしばしばだという。このため、今では子どもと接する機会を増やし、子育てする仲間の様子を学ばせるように飼育も変わってきているらしい。

子どもと触れる機会のなかった大学院生は、うちで赤ちゃんと触れる機会がなかったら、どうしていたのだろう?子どもと触れる機会がなかったら、子どもをかわいいと思うこともできない。どう接したらよいのかもわからない。ただ、怖いとしか思えなくなっても不思議ではないのではないか。

YouMeさんが通っていた育児支援室では年一回、同意した母子に限ってだけど、中学生に来てもらい、赤ちゃんを抱っこする機会を設けていた。中学生は赤ちゃんが喜びそうな手作りおもちゃを準備してくれた。中学生たちは、おそるおそる赤ちゃんを抱いたり、幼児とお話したりしていた。

たった一回。でもこのたった一回は、とても大きなことのように思う。赤ちゃんを喜ばせるためのオモチャ作りの間、赤ちゃんが喜ぶ顔を想像しながら作っただろう。赤ちゃんに実際に接して、泣いたりあやしたりした経験は、「次にどうしたらよいのだろう?」と考えるきっかけになるだろう。

そうしたら、赤ちゃんを抱いてるお母さんの様子を観察して「ああして抱っこすればよいのか」と、自然に学習することになるだろう。オモチャはこんなのが喜ばれるよ、と後輩に話して聞かせたり、抱っこはこうしたほうがよい、とアドバイスすることもあるだろう。後輩はそれを意識して対するだろう。

中学生くらいで赤ちゃんと接する機会があるかどうかは、とても大きいように思う。このイベントに協力してよいとする母子の同意は必要だが、それさえあれば、こうした試みはもっと行われてよいように思う。

子どもと接するコツ。決してこの距離から近づかない、という間合いを大切にすること。むやみに間合いをつめてくる大人には、子どももビビるし、親も警戒する。この間合いからは近づかないからご安心を、という距離を保つ姿勢が見えると、子どもも親も安心して接することができる。

グズってる赤ちゃんや幼児は、遠くからでも変顔して見せると、何だ何だ?みたいな感じでこっちを見てくる。そしたら視線をそらし、時折目を合わせてやはり変顔すると、機嫌が直ってくる。私は電車の中で時折こうした遊びをしてる。いかにぐずっでる赤ちゃん幼児を笑わせるかゲーム。

子どもは「同調」が大好き。赤ちゃんが驚いた顔をしたら、その顔を真似る。幼児が手を上げたら、自分も同じように手を上げる。動きを同調させると、子どもは面白がっていろんなポーズをとる。こちらも面白がって真似ると機嫌がすっかりよくなる。

こうしたコツは、子どもと接する機会が多いと自然に気がつく。いろんなテクを身につけると、子どもはとても面白い。怖い存在から、面白い存在に変わる。しかし接する機会が少なければ、苦手意識を持つのも無理はない。

日本は極端な少子化が進んでいる。その原因の一つに、赤ちゃんや幼児と接する機会がほとんどなく、そのために苦手意識を持つ若者を増やしているということがあるだろう。ならば、この点を改善するのは、若者にとっても、子どもたちにとっても面白いことになるのではないか。

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