培養肉はエコ?への疑問と、それとは別の期待

査読された論文ではないらしいけど、まあ、そうだと思う。
https://karapaia.com/archives/52322695.html
培養肉が話題になり始めた頃、これを推奨していた研究者に「エネルギー収支は?」と聞くと答えられなかった。「培養液を作るには相当のエネルギーを消耗しているはず。計算してください」と伝えた。

査読なしとは言え、ようやくエネルギー収支の視点が提出されたのはよかったと思う。これからは査読付き論文でも試算が出てくるだろう。
なぜ培養肉でかなりのエネルギー消耗があるかというと、すでに書いたように、培養液の作成に大きなエネルギーを要すると思われるから。

培養液は、微生物の混入が起きないようにしなければならない。培養肉には免疫細胞がないから、微生物が増殖するとあっと言う間に腐ってしまう。で、微生物の混入を防ぐには、通常、培養液だけでなく培養器の殺菌が必要。これには120℃で20分程度の加熱処理を行うことが多い。

この加熱処理でかなりのエネルギーを消耗することになる。培養肉をわずかばかり培養するために、かなりのエネルギーを消耗することになると思われる。言い換えれば、「培養肉は石油でできている」とも言いかえられるかもしれない。エネルギーの多くは化石燃料に頼っているのだから。

その点、ウシとかブタとか、生きている動物は優秀。どんなエサを与えるかにもよるが、無菌状態にする必要はないし、エサは自然にあるものを食べさせりゃいいし。省エネで育てることは可能。
まあ、今の畜産は、化石燃料で作った肥料で育てたトウモロコシ食わせてるから「石油でできてる」のだけど。

ともかく、培養肉の技術は、現時点では、従来の畜産よりエネルギー消耗の少ない画期的技術とは言い難い可能性が高いように思う。
ただ、私はそれとは別として、培養肉の研究は面白いと思っている。一般人もDIYラボとか言って、家で培養肉の実験ができるという。

専門家だけでなく、一般の人が独自の発想で培養肉の研究をすることで研究者の裾野が広がったら、場合によってはiPS細胞による臓器製造の技術に道を開くかも、と思っている。
現時点では、培養肉を立体的に製造することは難しい。血管がないために内部の細胞に栄養を送れないからだ。

もし誰かが独自の発想で、立体に培養肉を培養する方法を編み出したら、iPS細胞で臓器を造る技術に道を作れるかもしれない。培養肉が食糧問題を解決するとは正直思っていないが、楽しみながら培養肉の実験を続け、ブレークスルーする研究が生まれることを期待したい。

それまでは、コストが高いかもしれないけれど、できたお肉は食べてしまいながら、楽しんで取り組むとよいように思う。

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