自分ばかり見て相手が見えていない

明るく楽しそうだと人は寄ってくる。はずなのだが、妙にテンションが高いと周囲は引く。なぜか。
たぶん、こちらの様子を見てないから。こちらを見てないから次の展開が読めない。読めないと何をするやら分からない。だから不安になるのだろう。

相手を見ない明るさは引く。だとすれば、明るさは人を引きつける力とは必ずしも言えない。では、どうすればよいのだろう?
一つには、相手を見たら嬉しそうな顔をすること。そしたら、自分に好意を持ってくれていることが分かり、相手も嬉しくなる。

二つに、相手の話すことに一喜一憂する。相手が嬉しそうなら自分も嬉しい、相手が悲しそうならオロオロし、怒っていたらそっとし、寂しそうなら何も言わずにそばにいる。相手に合わせて、相手によかれと思われる反応を見せる。すると、その優しさに相手は惹かれる。

いくら明るく楽しそうでも、相手の存在に頓着しないのは、相手を無視しているようなもの。たとえあなたがどんな存在であろうと、相手を認めない対応は相手を不安に陥れる。
あなたがいるから楽しい。あなたといると嬉しい。あなたが嬉しそうだと嬉しい。悲しそうだと悲しい。それだと。

人は好意を持つのだと思う。関係性こそ大切。あなたがどうあるか、ではなく、相手を見て、相手との関係性を大切にする気持ちが、好意を呼び起こすものなのだと思う。
自分がどう振る舞うべきか、を意識しすぎると、相手が見えなくなり、自分だけ見てしまう。これでは相手を無視してるようなもの。

ネコのことが大好きな姉妹がいて、よくなでてやり、抱いてやり、エサも上げていた。しかしその姉妹がネコを呼ぶ声が聞こえると、ネコは慌てて逃げるようになった。
他方、よその家のネコということもあって世話なんかしたことのなかったのだが、なぜかネコは私に懐いた。なぜなのだろう?

観察すると、姉妹は子どもであるということもあって、ネコの都合なんかお構いなしだった。自分のなでたいときになで、抱きたいときに抱き、エサを上げたい時に上げていた。
私は、ネコが放っておいてほしそうな時は放っておいた。なでてほしそうな時はなでてやった。ネコの様子で対応を変えた。

すると、ネコにとっては、自分の様子を見てくれてると感じたのだろう。だから懐いたのかもしれない。

いくら明るくても、楽しげでも、相手を見ないテンションの高さは、いわば、ネコの都合を考えないでオモチャにするのと同じなのかもしれない。

人付き合いに悩む人は、自分がどう振る舞うべきかに悩むのはやめて、まず、目の前の人を観察し、相手によかれと思われることを、無理なくやれる範囲でやればそれで十分。相手にどう見えてるかなんて気にしない。どうせそんなことは考えても分からないのだから。

高校に入ってから剣道始めたのに、相性がよかったのだろう、メキメキ強くなった後輩がいた。しかし自分がなぜ勝てるのか、言語化できていなかったのだろう。スランプに陥ると、体の動きがてんでバラバラ。誰にも勝てなくなった。かつての自分の動きを取り戻そうとして、余計にぎこちなくなっていた。

私は後輩にアドバイスした。相手を見ていない。自分の動きばかり意識して、相手が見えなくなっている。相手が攻め気で間合いを詰めたら外せ。相手が反応の遅れそうなタイミングで間合いを詰め、打て。当たり前のことしか言ってないのだけど、それで1日で調子を取り戻した。私は勝てなくなった(笑)。

自分の動きばかり意識していたから、相手が見えなくなっていた。間合いという指標で、相手を見る方法に気がついた途端、体は無意識に操縦権が移り、自在に動くようになったらしい。
自分を意識しすぎるとぎこちなくなる。相手を見て対応するようにすると、柔軟になる。これもコツの一つなのかも。

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