小中学校の内容侮りがたし

中学生で偏差値64未満の子(※)は、小学校の内容であやふやな部分が残っているリスクがある、と書いたら、意外に思われた方もいらっしゃったよう。偏差値64って、結構高い。小学校の内容「ごとき」ができないもんだろうか?と思われる方がいらっしゃるのも不思議ではない。しかし小学校の内容、侮りがたし。

私の許には旧帝大の学生がよく研究しに来る。で、濃度計算をしてもらうのだけれど、結構間違う。最初から間違えずに済んだ学生はこれまで2,3人しかいない。それ以外は全員苦労した。勘違いを回避するポイントを知らないと、よく間違える。そして、濃度は小学校で習う内容。

私の体感だと、旧帝大の学生は小中学校の学習内容をマスターできているけれど、それに達しない成績の学生は、小中学校の内容でどこかアヤフヤな部分を残している。しかし結構よい成績をおさめてきた学生は、小中学校の内容を見直すことをしようとしない場合が多い。これがもったいない。

私は中学校の時に数回、高校に入っても2,3回、大学生になってからでも1回は、小学校1年生から6年生までの算数をやり直している。「あ、これちょっと記憶が怪しかったな」というのが見つかったりする。もしこれをしていなかったら、私は京大に入れなかったと思う。

国家公務員試験のI種で3位の成績を取ったという同級生がいて、勉強方法を聞いた。「中学校の教科書が一番」と教えてくれた。え?国家I種って難しいって聞くけど?と重ねて尋ねても、同じ答え。騙されたと思ってやってみたら、本当だった。中学校の内容でほとんど解ける。

小学校、中学校の内容をみんな軽く見過ぎ。完全にマスターせずに終わっている人、結構多い。習った当初は完璧に理解できたとしても、時間が経つ間に忘れている人は結構いる。しかし特に数学は、小中学校の内容に抜け落ちがあると成績が伸びない。

私は、小学校6年生の3学期、6年間の学習内容(算数だけでよい)を振り替える授業をしたらいいんじゃないか、と思う。成績の悪い子は、難しいと思ってやりたがらないかもしれない。しかし、いざ取り組んでみると、6年生にもなると、「わかる!」に変えやすい。

生活体験の中で速度や濃度のことを味わったことのない子は、習ったときになんとかやり過ごしただけで、全然覚えていない、という子も結構いる。分数で通分するとか、約分するとか、そうした約束事もあいまいな子が結構いる。それを6年生の最後に振り返ると。

中学校でつまづくことがかなり減るように思う。いざ中学生になると、「小学校の内容をやり直すの、恥ずかしい」と思う子が多い。そんなこともわかっていないのか!と笑われそうだと考えて。でも、私は、小学校の内容はかなり大切だと思っていたので、やり直すことにした。正解だった。

小学校の内容をやり直すにあたっては、教科書が最適。教科書は、復習にはとてもよくできている教材。ムダがない。算数の教科書を1年生から読み直すと、小学6年生ともなると、「わかる、わかる。初めて読んだときは難しかったのに」と思うだろう。わからずにいた個所も理解できるだろう。

そして、卒業する前に「中学生になっても、時折小学校の教科書を読みなおすといいよ」と伝えておくと、なおよいと思う。小学校の内容をやり直すことは恥ずかしくない、むしろ成績がどこまでも伸びる子は、小学校の内容をおろそかにしていないんだよ、と伝えるとよいように思う。

私が主宰していた塾は、偏差値の低い生徒が多かったので、小学校にまでさかのぼって学習し直す子が多かった。分数のあたりでアヤフヤな生徒が非常に多かった。速度や濃度の問題も、偏差値64以上でないといい加減な子が結構いた。小学校の内容を間違えない子は、うちの塾では少数派だった。

ましてや、中学校の内容を完全にマスターできている子は少ない。中学校の内容を完全にできていないと、旧帝大に合格する学力はまず望めない。かなり成績の良い生徒でも、中学校の内容を復習したことがある、という子は少ない。成績が今一つ伸び切らないのは、そこに原因があるように思う。

特に高校数学についていけない原因は、小中学校の算数・数学の内容をアヤフヤにしたままだからなのが大きな原因ではないか、と考えている。高校生になってから中学校の内容に取り組んでみると、あれだけ難しいと思っていたものが、案外理解できるようになっていることに驚いたりする。

中学生の時には体験の蓄積がなさすぎて理解できなかったけれど、高校生になってからだと理解できたりする。私のもとに、中学校では学年最下位クラスだった高校生が来ていた。授業態度がよかったので内申点がもらえ、高校に進学できたけど、成績は案の定メタメタ。

分数から怪しかったので、そこからやり直した。小学校の内容は短期間に終えた。さすが高校生。しかし中学校の内容に入り、因数分解で足踏み。中学校の内容ができない自分に悔し涙を流していた。けれど、そこを打破してからは一気に中学校の内容を終えることができた。

あとはその調子で高校の内容も復習し、在学中は勉強で苦労することがなくなった。小学校の内容を復習すると、とても有効。これで成績が伸びなかった生徒は、私が指導した中ではいない。つまづいたところからやり直すの、とても有効。

小学校、中学校の内容を侮るなかれ。国家一種の試験が中学校までの内容でパスできるということが、その重要性を物語っている。ちなみに私は国家一種(農芸化学)で10位だった。悪くない成績。でも学んだのは、中学校の教科書。ひたすら繰り返し読みこんだ。

まあ、私が受験生だったのは30年前、公務員試験も20年以上前。内容が大きく変わっているから、私の学んだ内容をそのまま適用はできない。ただ、子どもの指導は続けていて、やはり小中学校の内容をアヤフヤにしていると後で伸び悩む、というのはよく感じること。その点に十分注意すると。

子どもはかなり伸びると思う。
また、大人も学び直しすると楽しいと思う。中学生の時には難しい、理解できないと思っていたことがあっても、小学校の内容から順にやり直してみると、スルスル理解できて快感。すっかり忘れていたのに出会うのも新鮮。

政府がリスキリングというのを言っているけれど、この小中学校の復習って、とても有効なのではないかと思う。高校の内容はやらなくていいことが大半だけど、中学校までの内容は、いろんな分野の基礎になっている。小中学校の内容の学び直しをするの、かなり役立つかもしれない。

ちなみに、私は京都大学に合格するまで、教科書以外をほぼ使用していない。友人は難しそうな参考書や問題集に手を出していたけれど、「自分にはそんなゆとりはない」と考え、小学校から高校までの内容を、教科書で何度も何十回も何百回も繰り返して復習する、というのを徹底した。

小中高の教科書の内容を完全にマスターすれば、旧帝大に合格できる。というのは、私自身の体験。昨今の受験では応用力を見るというから話がややこしいけれど、応用力を身に着けるためにも、基礎が重要だろうから、基本的には考え方は同じでよいのかな、と思う。

有名な予備校講師が勧めた参考書や問題集に手を出して、小中の内容を復習しなかった人は、成績が伸び悩んでいた。私は復習をみっちり行い、点数のとりこぼしをなくしただけ。それで成績が上がった。まずはとりこぼししない、ということが大切なように思う。

ただまあ、昨今の受験では応用力が問われるということなので、これへの対策は、私も分析を進めておきたいと思う。でも、今のところはそこらへんを調べていないので、このへんでやめておく。とりあえず、小中学校の内容をナメないで!ということで。

※母集団は大阪市の公立中学。

追伸
6年生の3学期での振り返りを提案したけれど、授業スタイルではなく、自習が望ましい。先生は見守り、質問があれば答えるスタイル。さっさと振り返りの終わった子は、まだの子に教える形。教えることはとても学びになるし。これをやると、相当の子どもが小学校の算数の取りこぼしがなくなるかも。

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