もの言うリーダー?目立つリーダー?

私は人の上に立つつもりがない(そもそも立たせてもらえないけど)。人の上に立ったら、ものが言えなくなってしまうから。 上に立つ人が意見を言うと、部下は意見を言わなくなってしまう。上司の意見と違ったらどんな目に遭うかと不安になるから。そうして、その集団はブレーキのない暴走車になる。

上に立つ人が意見を言わず、部下に好きなように意見を言わせる空気を作る場合、様々な視点から様々な意見が出てくるようになる。すると、決定的な過ちが起きなくなる。ブレーキが利くようになる。部下が意見を言いやすい空気を作るには、上に立つ人はあまり意見を言わないほうが良い。

しかし、ただ意見が百出するだけではまとまりがなくなる。ただの混乱に陥るだけ。そこで、上に立つ人には、「驚く」「面白がる」が大切になる。部下の意見の中でお!と思わせるものがあったら驚く。面白がる。すると、部下はそっちの方向でアイディアを練るようになる。

できればどの意見にも、どこか一カ所、驚いて見せるほうが良い。すると、また意見を述べようと思うようになるから。どの意見も驚き、面白がる中で、みなも感心するような意見が出てくる。上に立つ人は、そうした空気を読み、「みんなもこれが面白いと思っているようだね」と引き取る。

上に立つ人自らが驚き、面白がるようにすることで、会議に躍動感を設ける。出席するみんなが、なにかしら驚いたり面白がったりする空気を作る。すると、みんなが面白いと思うものが何か見えやすくなる。その面白いアイディアに沿って、さらにみんなの工夫を促す、ファシリテーターになる。

自分のアイディアが通った人は、やってみたくてウズウズする。当然、能動的に考え、動く。しかも会議の席でみんなが面白がってくれたのならよけい。上に立つ人は、みんなの「面白そう!」の空気でその人を後押しすればよいだけ。すると、プロジェクト担当者は嬉々として動くように思う。

上に立つ人は、自分が話すのではなく、会議の参加者に話してもらうことを重視したほうが良い。そして意見が出やすいように、自分は驚き屋、面白がり屋になり、会議で意見がどんどん出やすい空気を作ることに専心したらよいように思う。

そして、上に立つ人は自分が目立とうとしないほうが良いように思う。部下に目立ってもらえばよい。部下が活躍すれば自分も照り返される、月のような存在。部下に太陽になってもらい、自分は月になる。部下一人ひとりに太陽になってもらえばよい。たくさんの太陽に照らされる月。

部下が輝く結果、自分も反射で輝くけれど、自ら光ろうとしなくてよいように思う。部下を光らせること。くすぶっているなら、その話を聞き、その人の特徴や考えに驚き、面白がり、元気になってもらう。それが上に立つ人の役回りかな、と思う。

私はこうしてツイッターで意見を言わずにいられない人なので、人の上に立ってはいけない。人の上に立つ人は、部下を輝かせ、その反射で結果として光ることができる月になった方が良いと私は考えているから。上に立つ人が一番目立つ組織は、だいたいろくでもない。

私がもし人の上に立ったら、意見を言わなくなると思う。それよりは部下の意見を引き出し、面白がり、部下が輝く方法を工夫するようになると思う。それが必要な立場だから。でも私の性分だと、それはちとつまらない。子どものことならそれができるけど、私は言いたい派。

優れたリーダーの下では、「太陽」のような部下がたくさん輩出する。リーダーは何もしていないように見える。けれどそうしたリーダーは、太陽のような部下から敬意を受けている。その結果、リーダーは月のように輝く。リーダーが太陽の場合、部下は焼き尽くされ、砂漠になってしまう。

私は人を育てるのが好きだし、楽しいけれど、自分のところにとどめようという気がないし、とどめようにも上に立つ人間じゃないので抱えられない。みんな出ていくわけだけれど、みんないろんな場所で元気にやっていて、すげえなあ、と思う。私にはそのくらいがちょうどよい加減。

私は上司に恵まれてきて、まさに「月」のようにふるまう人が多かった。私みたいな暴れ馬でもおおらかに抱えることができる器の大きな人が多かった。上に立つ人はかくあってほしいなあ、と思う。

時折、「言いたいことがあるなら人の上に立ってから言え、人の上に立たなければわからない苦労がある」と言う人がいる。私はその意見、間違っていると思う。人の上に立ったら言っちゃダメ。上に立つ人は意見を言う人ではない。たくさんの意見を受け止め、交通整理する立場なのだから。

もし、出世した暁には思う存分好きなことをするぞ、と思っているなら、その人は暴走列車であり、部下を焼き尽くす「太陽」になってしまう。前漢の国を滅ぼし、自ら皇帝となり、わずかな期間で滅んだ王莽みたいな感じになる。

王莽は誰かの部下である間は、ひたすら隠忍自重し、人気が出そうなことしかしなかった。その結果、「この人がトップになってほしい!」という民衆からの支持を得て、前漢を滅ぼし、自ら皇帝に立った人物。しかし皇帝になってからはろくなことをしなかった。

「リーダーになってから好きなことをやろう、好きなように発言してやろう」は、ろくでもないリーダー。リーダーはむしろ意見を言わず、部下に意見を述べさせることが大切。王莽を倒し、後漢を成立させた光武帝もそうした人物。

「もの言うリーダー」は、だいたいろくでもない、というのが私の感覚。実務派で、この組織のリーダーは名前なんていうんだっけ?くらいの方が、組織は闊達に動く。今の日本は目立つリーダーばかりだけど、いぶし銀のリーダーがもっと増えないかなあ、と思う。

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