都構想の焼き直し 地方による許認可権限の奪取

なぜ維新はのしてきたのか?

答えは簡単なような気がして。
大阪に元気がないから。堺の商人から連なる、400年を超える商都としての誇りが、今世紀に入ってからガタガタ。これといった成長産業も見当たらず、元気がない。その中で唯一気を吐いている維新に人気が集まる格好のように思う。

もともと大阪は、政治なんかどうでもよい、という土地柄。それだけビジネスに自信があったから。江戸時代には、政都としての江戸があったとしても、商都として大阪が君臨していた。日本全国のコメはいったん大阪に集められ、売買されていた。明治維新後も、大阪は産業が集積する大都市だった。

85~90年のバブルでも、大阪は「東京になんか負けるか!」という、アンチ巨人、アンチ東京としての矜持(ほこり)を持っていた。ところが90年代に徐々に衰退、2000年代に入ると目立った産業がない状態に。お笑いの吉本だけ元気だったけど、これも東京に進出しちゃったり。大阪、自信喪失。

そんな中でひときわ目立つ維新の活動が、大阪人にウケたのは、想像に難くない。でも、政治なんかクソくらえ、商売の邪魔だけはせんといてくれ、というかつての気概を失った上での現象と考えると、政治勢力である維新を応援する声は、大阪の断末魔の悲鳴にも思える。

では、維新の力で大阪は元気になるかというと、そんなことは残念ながらないように思う。万博やカジノの誘致も、国からの投資、補助をアテにしたもの。かつての大阪からだと考えられない。通天閣も自前で建てたという大阪人の気迫がなく、他人の懐をアテにした振興策ばかり。これじゃ「地方」と同じ。

また、維新のトップは徹底して安倍晋三氏にすり寄るという姿勢。それにより東京からのおこぼれにあずかるという政治スタイル。いわば、巨人の付き人になった阪神のイメージ。かつての大阪から考えるとあり得ない構図が、維新によって形成されている。それだけ大阪に覇気がないということか。

維新の目玉政策である大阪都構想も、名前は威勢がよいが、単に市と府の二重行政解消という、地方の問題にフォーカスあてた話。都という国を相手取るような看板掲げて、内容は地方の問題でしかないことを手がけるという。看板大きい、やることちっちゃい。どないしてん、大阪?と首を傾げる。

さて、ここで維新に献策しようと思う。都構想は、次のように焼き直すと、大阪は内発的な元気を取り戻し、商都として復活するきっかけを得られるかもしれない。
それは、都構想を、国からの許認可権限の奪取として構想し直すこと。

大坂が商都としての元気を失った原因に、許認可権限の東京一極集中がある。戦後、日本は幾度も大きな経済事件が起きているが、潰されているのは大阪に本拠を置く企業であることが多い。安宅産業、イトマンもしかり。なぜ大阪企業が狙い打ちで潰されるのか?

それこそ、許認可権限が東京一極集中してるから。東京に本社を置く企業は、官僚のいる霞ヶ関から質問をよく受ける。今度、こんな規制を始めようと思うのだけど、ルールに不備はないか、と。当然、尋ねられた企業は、自分たちが比較的守りやすいルールにしてもらおうと説明を繰り返す。

大阪に本社がある企業はこんな説明の機会がない。官僚も悪気はないのかもしれないが、電話一本ですぐ現場の事情を教えてくれる在京企業につい質問してしまう。この結果、在阪企業には寝耳に水、守りたくても守れない規制が始まり、万事休すになりやすい。

経済事件にしても、みせしめに潰す企業をどこにするか選別する際、許認可権限をもつ官僚が住んでる東京の企業より、大阪の企業の方が心理的にラク。東京から見れば大阪は地方。このため、大阪企業は経済事件のみせしめに潰されやすい傾向がある。

昔々、大阪府知事と「本社は大阪に置き続ける」と約束したはずの松下電器、現在のパナソニックがついに東京に本社を移すことになった大きな理由も、東京に許認可権限が一極集中してるのが大きいように思う。かくして、東京に産業、人、カネが集中する構造。

しかし東京はブラックホール。全国から人を飲み込んでは、少子化を進め、人口を減らす大きな原因。地方から人とカネと企業を吸い上げ、地方を枯らす原因でもある。日本にイノベーションが起きにくい大きな理由の一つに、許認可権限の東京一極集中があるように思う。

もし都構想を、「地方都市による許認可権限の奪取」として焼き直せば、地方再生のみならず、日本再生の足がかりになる可能性がある。
大阪、福岡、広島、名古屋、仙台、札幌に州都を置き、経済産業省、厚生労働省の許認可権限を各州都に譲渡させる。

許認可権限は、各州都ごとに独自に定めてよいものとし、国として必ずしも統一させなくてよいことにする(10年後には全国一致させることなどの前提を置いた上で)。こうすると、各州の実情に応じた許認可を行うことにより、地方産業を振興させやすくなる。

地方企業は、わざわざ東京まで出向かなくても、比較的近い位置にある州都にさえ顔を出せば、自分たちも遵守しやすい規制づくりをしてもらえる。東京企業ばかり栄えて地方産業が潰される、という問題も軽減できる。各州が独自の産業振興策を打ちやすくなる。

このように、都構想を、国の許認可権限の奪取という内容に焼き直すなら、維新は真の意味で維新を起こせるかもしれない。明治維新は中央集権に向かう改革だった。しかし現代日本は、中央集権が行き過ぎて人、カネ、企業が東京というブラックホールに飲み込まれるままの構造になっている。

新たな維新を行うなら、明治維新とは逆。北海道、東北、関東甲信越、中部、近畿、中国(この場合、広島が州都か)、四国、九州のそれぞれの州都に経済産業省、厚生労働省の許認可権限を移し、地方分権化をはかるという逆方向の維新。これなら、地方が息を吹き返す。

大阪が元気を失った原因も、許認可権限の東京一極集中が大きいと考える。大阪の内発的な振興を考えるなら、都構想を許認可権限の奪取と焼き直すことが大切なように思う。大阪の人達、そんな風に維新にけしかけてみてはいかがか。大阪を真の意味で元気にするために。ひいては日本を元気にするために。

もちろんこの献策は、維新に限ったものではない。この献策を採用するなら、どこの党でも構わない。地方のために、ひいては日本のために、こうした政策を進めてくれる政党が出てきたら面白いな、と思う。

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