傾聴は全身を使って全てを受け止める事です
コーチングをしていれば「傾聴が大事」とか「聴くスキルが必要」とか聞くと思います。コーチングセッションはどれだけ傾聴出来るかで質が変わります。しかしこの「傾聴」というのはとても大事なのですが、それを実行するのは難しいのです。一般的に、普段ほとんど人が傾聴をしない聞き方をしているので、自然体で傾聴が出来ない状態になっています。
どうしても人の話を聞いている時に、自分の頭の中で思考を始めてしまいます。
「それってこういう意味かな?」
「私だったらこうするけどなぁ」
「どんな質問をしようかな」
等々。
さらに言うと傾聴というのは「聴」という文字がありますが、「聴く」だけではありません。耳以外でも聴く事が必要です。
傾聴は全身を使う
傾聴は耳で聴くだけはありません。全身を使って聴く必要があります。別の言い方をすると全身を使って相手の情報を受信するという事です。
傾聴を分解すると次のようになります。
耳を使って、聴く
目を使って、観る
身体を使って、感じる
です。非言語(ノンバーバル)の情報の受信機能である、観る(Seeing)・感じる(Sensing)がとても重要で、言語だけは伝わってこない情報を得る事が出来ます。
言語(バーバル)情報は、相手の言語のアウトプット能力に依存します。言語化するのが得意な人であれば、言語情報の信用度は高いですが、言語化するのが不得意な人であれば、言語情報の信用度が低いです。
そして言語情報は「嘘」や「間違い」を伝える事が出来てしまいます。元気ではないのに「元気です」とか、大丈夫でないのに「大丈夫です」と言語で伝える事が出来てしまうので、情報としてブレが生じます。
(よく仕事場でも無いでしょうか。明らかに雰囲気がダメそうなのに聞いてみると「大丈夫です」と答えるケース。この「大丈夫」には「大丈夫」という意味が欠落しています)
一方で、観る・感じるで得た情報は、なかなか誤魔化しにくい為、情報としての信用度は高いです。もちろん「装う」事は出来ますが、装う事が出来る人はかなり高度なスキルを持っている人になります。言語での「嘘」に比べると簡単ではありません。
つまり、クライアントの状況をしっかりと認識する為には、言語の情報を耳から受信するだけじゃ、不十分で目からの情報、身体全体で受信する情報も使って傾聴する事が必要になります。
メモを取るのもNGです
コーチングセッション中にメモを取る派ですか?取らない派ですか?
私はメモを取りません。理由は傾聴の質が落ちるからです。
メモを取る事によって、脳が記憶する代わりに紙が記憶する事が出来るでしょう。一方でメモをするという行為を脳に処理させるので、その分、脳がクライアントの情報を聞き取るという能力が落ちます。記憶を優先してクライアントの貴重の情報を捨てるのは本末転倒です。クライアントがせっかく発信した情報をしっかり受信する事が重要です。
メモをとっている人にとって、メモを取るなというのはかなりの恐怖心に駆られるでしょう。かくいう私もそうでした。最初のうちは如何に素早くより多くの情報をメモするかをという事をしていました。そんな状況の中、「メモは取るべきでない」という話を聞き、一度メモを取らないという事を実践してみました。実際やってみると分かるのですが、きちんと傾聴をすればメモを取らなくても問題は起きないのです。むしろ、メモを取っていた時よりも受け取れる情報が多くのなるので、より深いセッションがする事が出来る様になりました。
傾聴するとは、全て受け止めるという事
傾聴は100%に近い脳の処理で相手の情報を拾う事です。出来る限り100%に近づけるように受信に集中する事が出来るかどうかが肝です。
前述したように受信した情報(例えば耳で聞いた言語情報)を同時に脳内で処理している(例えば「自分だったらこうするのになぁ」)という事は、既に脳を別の事に使っています。その別の事に使っている分、相手の情報を取得する処理能力が減るわけです。
そういう事を一切しない事が重要です。
ではどうすればいいか。それは「受け止める」までを行ってそれ以降の処理をしなければいいのです。そして受け止め終わった後に、それを処理すれば良いのです。
もちろん現実的には脳の処理を100%を受け止めるというのは不可能ですが、気持ちとして「脳の処理を100%相手に向けて、受け止めるのだ」という気概が傾聴を成功させます。
傾聴が出来れば、クライアントを深く理解する事が出来るので、その情報に関心を持って接すれば、深いセッションが可能になります。
コーチの傾聴の度合 = クライアントが聴いてもらってるという感覚の度合
傾聴は自分独りでは成立しません。必ず「相手(クライアント)」がいます。コーチの傾聴の度合によってクライアントはどう感じるのでしょうか。
クライアントが聴いてもらってるという感覚の度合
= コーチの傾聴の度合
クライアントの「聴いてもらっている」という感覚と、コーチの「聴いている」とは鏡の関係です。コーチが100%傾聴していれば、クライアントも100%聴いてもらっていると感じします。コーチが80%傾聴していれば、クライアントも80%の感覚で聴いてもらっていると感じします。(言わずもがなですが、コーチが全く話を聞かなければ、クライアントは「全く聞いてもらっていない」と感じします。
傾聴は信頼関係を構築につながります。特に100%に近づけば近づくほど、クライアントは「ものすごく聴いてもらえている」と感じ、それがコーチへの信頼に繋がります。一定のライン(感覚的に80%くらい)までは、クライアントとしては「コーチなんだから当然すべき」という感覚でいると思います。しかし、そこから先の100%に近づける事で「ここまで熱心に聴いてくれるんだ」というポジティブな感覚に変わります。
傾聴は、相手の情報をしっかり受け止める以外にも、このようなクライアントの状態をよくするという効果もあるので、全力で傾聴はしていきたいところです。
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