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「ほどよい母親」になるために大切なこと

過去の記事『完璧じゃなく「ほどよい」存在でいてあげるということ』で、精神分析家で小児科医であったドナルド・ウィニコットの「ほどよい母親 good enough mother」をについて書きました。
 
その記事へ、子育て中の母親の方から、「ほどよい母親」について具体的にどうしたら良いのかもう少し詳しく知りたい、というコメントがありましたので今回お答えします。
 
 
まず簡単に前述の記事のおさらいから。
 
子どもにとっての養育者である母親には、
対象としての母親」と「環境としての母親」の2つがあります。
 
前者は、一人の人物という対象として認識される母親。
後者は、当たり前すぎて存在を認識されない母親。
 
身の周りのことや家のことをいつもやってくれるので、子どもから気づかれにくいのが「環境としての母親」部分。
母親が失敗したり、調子が悪かったりすると、「対象としての母親」として認識されます。
 
完璧な「環境としての母親」であり続けることで、子どもは母親の存在に気づかずに万能感から抜けられません。
そこで完璧な母親ではなく、「ほどよい母親 good enough mother」が良い子育てに必要だとウィニコットは言います。
 
 
では「ほどよい母親」になるために大切なポイントは何かについて。
個人的な考えを書きます。




ウィニコットは、「ほどよい母親」になれない例を下記であると言っています。
 
・自分に没頭しすぎて子どもに関心を向けられない母親。
・子どもに没頭しすぎて関心を向けすぎる母親。
 
両極端ですよね。
無関心
過干渉
 
 
話が変わりますが、私は長年ひきこもりの相談をしていました。
ひきこもり状態にあるご本人と関わる機会が多くありました。
 
ご本人から親に対する不満の声を聞くこともよくあったのです。
下記の2つが多かったです。
 
・「親は親自身のことしか考えていない」
・「親が自分のことに干渉しすぎる」
 
私は乳幼児期ではなく、大人になった年齢の人を対象とした臨床をしていましたが、上記ウィニコットの「ほどよい母親」になれない例と共通する課題が浮かび上がります。
 
 
結論を先に書きますね。
 
「ほどよい母親」になるために大切なことは、親が自分自身を大切にすることだと思うのです。
 
完璧な親が完璧ではない親になろうとするのは、なんだか難しいですよね。
 
意図的に失敗する?
わざと手を抜く?
 
不自然なことはしにくいですから。
でも、子どものことだけ大事にするのではなく、自分のことも大事にすることなら自然です。
 
自分を大切にすることができると、遊びに行きたいときには親だけで遊びに行けますし、体調が悪ければ家事を休むことができます。
 
そうすると、環境としての母親から対象としての母親として認識されるのです。
 
さらに言えば、家族成員のそれぞれが自分を大切にできるようにすることが理想的だと私は考えます。
父親、子どもたち、それぞれが自分を大切にする。
 
自分の好きなことをする。
自分の時間を楽しむ。
自分の人生を楽しむ。
 
家族成員の中には、当然母親も含まれます。
母親自身の人生を楽しむ。
 
子どもは家の中で自分が中心だと思って育つと万能感が抜けません。
他人の人生を認識することは成長につながるのです。
 
たしかに子どもにとって、自分を一番大切に扱ってもらう大事な時期はあります。
そこで満たされない思いが強く残ると、「親は親自身のことしか考えていない」という思考になります。
 
そのフェーズをクリアしたのであれば、親自身を大事にしてかまわないのです。
 
 
一方「自分に没頭しすぎて子どもに関心を向けられない母親」についても、逆説的ですが、やはり自分自身を大切にすることが必要だと考えます。
 
人を大切にするためには、まず自分自身を大切にできている必要があるからです。
自分を大切にできて初めて、人に関心を向けられて大切にできる。
 
これは言うほど簡単ではなく、根深いものかもしれませんが、今回そこまでは言及しません。
 
 
再び、ひきこもりご本人の話に戻ります。
 
ひきこもりが続くと、家の中はだんだんとご本人のペースに合わせるようになっていきます。
常に家族はご本人のことを気づかい、ご本人中心の家になります。
 
ご本人たちの話を聞いていると、このようなことを聞くことがありました。
親が楽しそうにしていると安心する
 
家族が暗そうにしていると、自分の存在のせいだと思って辛いのだそうです。
でも家族が自分自身を大切にして楽しそうにしていると救われるようです。
 
何度もこのような声を聞いたわけではありませんが、何人かの人から聞いたことがあります。
もちろん、自分に注意を向けてほしいフェーズはあるでしょうが。
 
このような気持ちは、とても自然で健康的だなあと思います。
こういう声を聞いた時に私自身がほっとしたものです。
「ああ、この人は大丈夫だな」って思うのです。
きっかけ作りと家族の環境調整をしてあげると、動き出せるなと。
 
 
家族成員それぞれが自分のことを大切にできるようになれることが理想だなとよく思います。
 
 
 
今回は、ウィニコットの「ほどよい母親 good enough mother」について、改めて何が大切なのか個人的な考えを述べました。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
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小林いさむ|公認心理師

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