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苦手なことを幼稚園や保育園や家だけで何とかしようとするのが難しい理由|運動発達の視点から

noteで「発達ステップアップレッスン」を書かれている長尾まさ子先生の記事を拝見し、思わずつぶやいた以下のツイート。

私の専門は心理学なので、子どもたちの姿を発達心理学や臨床心理学の視点から見て、その子の困り感や問題(といわれる)行動を紐解き、解決に向けて取り組むのが仕事なのですが、子ども、特に乳幼児期の運動の発達は、脳の発達と深くかかわっていることを思うと、「運動発達」も自ずと観察の対象となります。

☞ 運動発達の大切さ

運動発達というのは、いわゆる「運動神経がいい、わるい」とはまた違うものです。
乳児さんであれば、はいはいやおすわり。つかまり立ち。歩き始めた時期や様子。

幼児さんになってくると歩き方や走り方。ダンスや手歌遊び。クレヨンや鉛筆の持ち方、はさみの使い方や糊のつけ方。

昼食時は、年齢関係なく重要な観察時間です。噛み方や飲みこみ方、スプーンやフォーク、おはしの使い方。そのほかにも、私は口の周りの唾液の様子、くしゃみのし方、「おはよう」の時のおじぎの仕方などにも注目します。

子どもたちのこういった動作から、体の動き、バランスのとり方、利き手や非利き手のつかい方、腕や手、指の発達の状況を見立てて(アセスメントして)行きます。

改めて思うのは、全国の保育園で導入されている「リズム遊び」はほんとうによくできているプログラムだということです。あれを0歳から、日常的に、一つ一つの動きに丁寧に取り組むことをしていれば、年長になってから「あれ?この子の運動発達・・・」なんて気にしなくてよくなるのではないか。と個人的には思っています。

☞ 苦手なことを幼稚園や保育園だけで何とかしようとしない方がいい理由

さて、長尾先生の記事の話に戻りますが、写真で取り組んでおられるのはおそらく「リズム遊び」の中の「ワニ(両生類のハイハイ)」の動きではないでしょうか。これ、大人がやろうと思うと本当に難しいです。さいたま市さんが、YouTubedeで正しいやり方の動画を挙げてくださっていました。

この動きを、このピアノの音楽に合わせて、保育園、幼稚園ではクラスのみんなと、他学年と合同で取り組みます♪

多くの子どもは楽しみながら難なく取り組めますが、中にはこの動きが苦手なお子さんがいらっしゃいます。

しかし、保育園、幼稚園で「この子はワニの動きが苦手だな」と気づいても練習してもらうのは、至難の業です。

なぜなら、子どもは自分が苦手な動きを、決して自ら積極的にしようとはしないからです。むしろ避けます。得意な動きのリズムには積極的に参加しますが、苦手な動きのリズムの時は壁の花になっていたりします。なので、ずっとできないままです。

先生が苦手だからと練習させようとするとどうなるでしょうか。
「人と自分を比べる」力や「うまい、へたがわかる」力がついている子は、「自分はみんなみたいに上手にできないから、やらない」「やりたくない」となります。

そんな環境で練習させても、子どもには苦痛なだけです。楽しみながら取り組めないだけでなく「自分はできないからやらされているんだ」という劣等感や自己肯定感の低下に結びついたり、「自分はがんばっても〇〇君みたいに上手にできない」という心の傷になってしまうこともあります。

☞ 苦手なことをお家で何とかしようとしない方がいい理由

お家で取り組まない方がいい理由は、ズバリ「親が頑張りすぎてしまう」ことが多いからです。親という立場で、長尾先生が書かれているような「できない大人」になりきるのは、なかなか難しいことです。

ワニであれば、「手、もっとちゃんと開かないと!」「その足、違うよ?ひざはもっと曲げて。横に出すのよ」など(自分ができていないことは棚に上げて)指導しようとしてしまうことでしょう。

何よりも、お家は子どもにとって、ほっとできる、安心、安全な場所であってほしいのです。発達に偏りがある多くの子どもは、保育園、幼稚園で、めいっぱいすぎるくらい頑張って帰ってきているからです。

☞ 療育に期待できること

以上、幼稚園や保育園や、お家でだけで「苦手なこと」を何とかしようとするのは難しい理由を書いてきましたが、多くの子どもは「自分のことを理解してくれている大人」と一対一なら取り組むことができます。
例えば、この記事に出てきたC子ちゃんのように、

「一対一での丁寧な説明や、促しが有効」

だとわかった子どもは、個別や少人数でかかわってくれる「療育」で、ぐんぐん伸びる可能性を秘めている子なのです。

そんな子にとって、療育は、身の丈以上にがんばらなくていい、ほっとできる、楽しい、自信がつく場所になります(その子に合った療育であることが前提ですが)。

お家は、療育ほど素晴らしい場所になる必要はないのですが、少なくとも、「家でまで頑張らないといけないの?!」という環境にはなってほしくないのです。今後、自立までの長い時間を過ごす、唯一の場所ですからね。少しでも居心地が良い場所であってほしいものです。

☞ 「できないことを練習させる」のはいいこと?

ちなみに、運動発達には順番があります。親が「みんなができるんだから、あなたも練習すればできるはず!」と、ワニの練習をさせようとするのはNGです。その子が今取り組める課題(身体の動き、運動発達の段階)や、興味関心があることから発展させてゆくことが大切です。そのためには、専門家に「観察」してもらい、適切な療育につながれるのが理想です。
簡単には療育に繋がることができない!という地域にお住まいの場合(※)は、お家や園で、無理がないところからの取り組みや、働きかけが大切、ということになります。

(※)発達支援の地域差については、こちらの記事に書いています。


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