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「口が立つ子」を納得させるために説明を続ける対応をしていると…

私は、臨床心理士・公認心理師として幼稚園や保育園を訪問し、先生や保護者の相談に乗る仕事をしています。仕事をする中で、言葉を操るのが得意な、いわゆる「口が立つ」お子さんに出会うことがあります。

大人が何を言っても「ああ言えばこう言う」ので、先生も保護者もタジタジですが、このタイプのお子さんに関わると、更に言葉で説明(対抗)しようとがんばってしまう大人が多いように思います。

しかし。

それをすると、子どもはますます言葉を覚えていきます。
それも、理屈に対抗するための言葉を、増やしていってしまうのです。

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貯まっていく、(屁)理屈の貯金


このタイプのお子さんは、年少組(3歳児)からすでにそういった傾向が見られます。大人が納得させようと説明を続けると、幼児期から「理屈には、理屈で対抗する」というコミュニケーションのパターンを身につけていきます。

そうなると、大変なのは・・・

そう、思春期です。
お父さん、お母さんが、力でも口でもかなわない。
そんな親子関係をつくってしまう土台は、幼児期からすでにできあがっていたりします。
気をつけましょう。(自戒を込めて)

「じゃぁ、子どもを納得させるには、どうすればいいのですか?」
という声が聞こえてきそうです。私の場合、そういった相談を受けたときは、お母さんやお父さんのコミュニケーションパターンを変える方法を、具体的に助言しています。お子さんの発達段階、親御さんの性格やその他諸々の要因で、正解は一つではなくケースバイケースとなりますが、共通する姿勢は「納得させなくていい」です。

「納得しないと先に進めない」「答えをもらわないと気が済まない」というのは、「こだわり」や「衝動性(待つことができない)」といった気持ちのコントロールの苦手さが関係していることがあります。
大人が「納得するまで説明」することは、それらを治めるどころか増長させてしまうことに繋がります。

「何かようわからん」「正解はないのかも」「今はわからないけど、いつかわかるのかも」という曖昧な状況もあるというこを知ってもらうこと、曖昧な状況に慣れてもらうためにも、時には「曖昧な対応」をすることが大切になってきます。

とは言え、きっちり答えることに慣れてしまっている保護者は、どうしていいかわかりませんので、相談の中で「最近あった出来事」「答えに困ったやり取りを」を例に挙げてもらって、具体的な返事、言葉かけを一緒に考えていくことになります。

いずれ、やってくる思春期の関り辛さ。
「実は、親自身が幼児期からせっせと種を撒いて、育てていた」
なんてことにならないように、幼児期から気を付けておきたいものです。

ちなみにこれは、幼稚園や保育園の先生の、園での関りにも同じことが言えます。
真面目な先生ほど、陥りやすかったりするのでご注意を・・・。


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