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乳幼期の発達支援で一番大切なこと

私は、幼稚園や保育園でキンダーカウンセラーや巡回相談員として活動することもある心理士(師)です。キンダーカウンセラーというのは、スクールカウンセラーの幼稚園版のようなもので、先生方が「気になる子」の理解のしかたや関わりかたについて助言したり、保護者からの相談にのるのが主な仕事です。

園でのその子の笑顔を増やすこと。
また、その子がよりよく成長できる方法を、発達心理学や臨床心理学の知見から提供したり、先生や保護者と一緒に考えたりします。

そんな私が、幼児さんの発達支援で何よりも大切にしていること。それは、


「その子の発達段階をきちんとアセスメントする(見立てる)こと」


です。

「なんだ、そんな当たり前のこと。わかってるわよ。」と、ここでページを閉じる方が多いのを期待しているのですが、幼稚園・保育園の現場には、

「一般に『良い』と言われている方法も、この子には効果がなかった」
「この方法を試して解決したけど、別の困った状況が出てくるようになった」
「療育の方針通り〇〇は伸びているけれど、気になっている△△は変わらない」

こんな悩みや状況を抱えている保護者や先生が、少なくありません。その原因は、この当たり前のこと「その子の発達段階をきちんとアセスメントする(見立てる)」ができていないことだったりします。

たとえば、A君。
言葉がゆっくりな子で、視覚優位だから絵カードで遊ばせるよう『専門家』から助言されたと、せっせと犬や車やコップなどの絵カードを見せて、単語を教えておられる先生。「で、この遊びを始めてから言葉は出始めましたか?」と尋ねると、「いいえ、それが全然…。」

 それから、Bちゃん。
「視覚優位な子なので、ダメなことを教えるときは、こうしています」と、両腕をクロスして大きく「×」を作って見せておられる親御さん。「でも、全然言うことを聞いてくれなくて。この子には視覚支援が効かないんです。」

私がお二人を観察させていただいたところ・・・

A君はまだ「誰かと一緒に遊ぶ」ことを楽しいと思える気持ちが育っていないように見えました。もっというと、「誰かと一緒に遊ぶ楽しさ」を知る以前、目の前にいる「人」を意識することも難しい発達段階にみえました。私は「まず、目の前の人(先生)に関心をもってもらうことから始めましょう。人と関わることが楽しい、嬉しいという気持ちをしっかり育てていくことが大切です。絵カードを登場させて役に立つのはその次の段階です」と伝え、具体的な方法を提案しました。

Bちゃんは、お母さんの「×」の動作は見ているのですが、従おうとはしません。まるでお母さんの注意を無視しているように見えます。が、私が遊びながら関わるなかで、実はまだ「いいこと」「わるいこと」を区別できていない、というか、理解できていないことがわかりました。

「〇=いいこと=もっとしよう、続けよう」「×=悪いこと=止めよう」という認識や行動は、多くの子どもは自然に身につけていくので先生や親御さんも意識することが少ないかもしれませんが、この部分を育てるのに、ひと工夫が必要なタイプのお子さんもいらっしゃいます。

と説明して、遊びの中でそれらの概念を育てる方法と、+αを提案しました。

どんなに素晴らしくて定評がある方法も、タイミングが「その時のその子の発達段階」に合っていないと、効果が出ないどころか、逆効果になることもあります。
特性を強めてしまったり、かえって発達を遅らせてしまったり、凸凹を大きくしてしまうことすらあるのです。

そして何よりも、時間の無駄です。

しかし、巷にあふれかえる情報の数々・・・。
最近、驚いたのは、書店の心理学書のコーナーに、私が発達領域の仕事に関わり始めた十数年前とは、比べものにならないほどのタイトルや内容、量の本が、所狭しと並べられていたことです。

本のタイトルは、発達障害を持つ子どもや大人の「伸ばし方」「育て方」「遊び方」 や「ほめ方」。「コミュニケーション」「就職」「指導」「勉強」「生活」のしかた、させかた。発達障害がよくなるとする「食事」や「サプリメント」。発達障害の「薬とのつきあい方」から「なおし方」にいたるまで。

私がこういった情報に接していつも思うのは、
「 もったいないな。いいことが書いてある本はいっぱいあるのに、これを〇〇な子に実施しても効果はない」ということです。
Twitterやブログなどのネット情報、おじいちゃんおばあちゃんの体験談、先輩ママ友からのアドバイスも例外ではありません。

子どもの発達は、千差万別、百人百様。例え同じ発達の特性を持っていても、それをサポートする関り方は一人一人違います。

いいはずの方法を試してみて効果がない時は「この子の発達段階に合っていないのかも?」と、いまいちど振り返ってみるのも、いいかもしれません。

*****ここからは独り言*****

発達に凸凹がある子どもさんは、本当は専門家に見守ってもらいながら育てるのが一番いいのですが、地域によっては専門家の数が少なかったり、相談機関に繋がるのが難しいこともあります。繋がっても一回きりで継続性がなかったり、数か月に一度と頻度が少なかったり。その間にも子どもは発達しています。一方で、専門家も色々です。新規参入事業者が多いのもあり、知識のバックグラウンドが怪しいなと思う助言をされている相談者に出会うこともしばしばあります。一番いいのは、行政主導で支援体制を整えてくれることですが、一朝一夕にはいかないようです。私にできることは何だろう…と常に考えながら、「今、自分にできること」に取り組んでいます。

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2021年1月に、オンラインでの相談が可能な「子育て・発達相談」部門を増設しました。子どもの発達が気になるけれど、身近に相談できる人がいない、相談機関に行きづらい、すでに支援を受けているけれど意見を聞きたい、どのようなことでもご相談いただけます。Zoom、Skypeに対応しています。

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* 見出し画像はよりさんの作品です。   

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