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こどもを観察するとどんなことがわかるのか?私のミスが功を奏した話

私は、キンダーカウンセラーとして幼稚園(や保育園やこども園)を訪問するとき、気をつけていることがいくつかあります。一つは服装です。子どもたちと遊びやすい、汚れてもいいような恰好で行きます。そしてアクセサリーは一切つけないようにしています。幼稚園にはいろんなタイプのお子さんがいらっしゃるので、少しでも危険がないようにとの配慮からです。

しかしある日、私はうっかりミスをしてしまいました。

髪をまとめるのに使っていたヘアクリップを、外し忘れてクラスに入ってしまったのです。

手指の巧緻性0|キンダーカウンセラー|巡回相談

その日は5歳児クラスを見る日でしたが、先生から「気になる子」として名前が挙がっていたC子ちゃんがさっそく私に近づいてきてくれ、「これなにー?」「どうするのー?」と、私の髪からヘアクリップを外してしまいました。

取り上げようかとも思いましたが、見守っていれば危険はないと判断し

「これはねー、こうやって(クリップ部分を開いて見せて)、髪につけるんだよ」

手指の巧緻性1|キンダーカウンセラー|巡回相談

とC子ちゃんに説明しました。C子ちゃんは、初めて見た!という表情で目をキラキラさせて、私の真似をしてヘアクリップを開こうとしますが、なかなかうまくいきません。

すかさず横から入ってきた、しっかり系の女子が「C子ちゃん、何やってるの?こんなの簡単じゃん、ちょっと貸して!ほら!」と、いとも簡単に親指、そして人差し指と中指の3本を使ってヘアクリップを開き、私の髪につけてくれました。それを見ていた、他の女子たちも「なになにー?」「うわー、かわいい!」「うちのお母さんも持ってるよ、これ!」と次々とヘアクリップを自分の髪に、お友達の髪に、私の髪につけて遊んでいました。

C子ちゃんは・・・何も言わず、面白くなさそうな表情でうつ向いてしまいました。

しっかり系女子が去った後、私は、C子ちゃんに「ここに、親指あててごらん。こっちには、人差し指と中指だよ。そして、ぐいっ!って、真ん中に向けて力を入れたら、できるよ」と実際にやって見せながら、「やってごらん?」と再挑戦を促しました。

しかしC子ちゃんは指の力が弱いらしく、3本の指では開かないことがわかったので、

「よしっ!じゃぁ全部の指で握るみたいに、してみようか!」と、クリップ全体を握るような形に変えて挑戦させると、開くことができました。

手指の巧緻性2|キンダーカウンセラー|巡回相談


その時の、C子ちゃんの嬉しそうな顔は、今でも忘れられません。

その後、何度も何度も挑戦して、最後は私の髪に、上手にヘアクリップつけてくれました。

C子ちゃん「これ、いいなー。かわいいなー。」
私「今度お母さんに言って買ってもらったら?C子ちゃんにも絶対似合うよ。」
C子ちゃん「でもお母さんがダメって言うー」
私「百均のなら買ってくれるんじゃないかなー。先生からもお願いしておくね」
C子ちゃん「うん!(嬉しそうな顔)」

こんなちょっとしたやり取りですが、C子ちゃんについて、どんなことがわかるでしょうか?

一番は、
「手の指の発達度合い(器用さ)」です。
C子ちゃんは、年相応の手指の発達に届いていませんでしたが、
「一対一での丁寧な説明が有効」でした。また、
「その子に合ったやり方を提案する」「成功するまで挑戦する力」を持っていることもわかりました。

また、同じクラスの他の子には易々とできてしまうことができないため、お友達には悪気がなくても「馬鹿にされたと感じる場面が多い」かもしれません。そういった環境では「劣等感が育ちやすい」ことには、配慮が必要です。

また、女子同士が、一つの話題に合わせてキャッキャしたコミュニケーションを楽しむ「ガールズトークの雰囲気は苦手」なようでした。

苦手なこと、できないことに関しては、
「一対一での丁寧な説明や、促しが有効」でしたが、
「励ましに応じる力がある」子で、
「成功体験を誇らしく思える」心も育っていること。成功体験をすると「もっと頑張ろう!」とさらに頑張る気持ちが育っているので、「更に上を目指した挑戦ができる」子どもだということも、わかりました。

この日、ヘアクリップを外し忘れたのは私のミスでしたが、逆に普段から教室にあるものだと、C子ちゃんもここまで夢中になれなかったかもしれません。

このミスのおかげで、私はC子ちゃんにはどんな発達の特徴があって、どんな関りが有効か、というたくさんのヒントを得ることができ、先生にも伝えることができました。

結果、オーライ。


ちなみに、こんなささいな日常の出来事の「観察」も、幼稚園や保育園の先生方がしようとするのは、なかなか大変です。先生のお仕事は、クラス全体を見ながら、日課やその日の予定をすすめたり、お弁当や給食を食べさせたり、子ども達と遊んだり、トラブルの介入をしたり、と枚挙にいとまがないからです。

たまに行く(たまにしか行かない)、私達キンダーカウンセラーや巡回相談員だからこそ、できる対応や観察。そんな私達をめいっぱい活用してくださいね。

そんな気持ちで、地域の子育てをサポート、応援させていただいています。

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