『賢治と鉱物』、『少年宇宙』
『少年宇宙』という漫画がある。
トイズ・ヒルという不思議な街の外れの水晶林には光の粒子が降り注ぎ、ゼンマイ仕掛けの少年たちは流れ星を網で捕まえてお茶に入れて飲む。
緑柱石を拾い、紫水晶の香りを嗅ぐ。
その美しい世界観は幼い僕を魅了し、以来鉱物にそこはかとない憧れを抱いていた。
鉱物は静かさの香りがする。
しんと澄んでいるような、
少し寂しいような、
冬の夜の紫色の空気に似た匂いがある。
それは銀色夏生の言葉にも似ている。
賢治には、世界がどんなふうに見えていたのか
それはきっとトイズ・ヒルのような
まさにイーハトーブだ。
彼にしか見えない世界。宇宙。
そこでは空の色はオパールで、ターコイズで
鉱物の、宝石の冷たさと静かさ、
美しさがどこにでもあって
本当は誰にでも見えるのに
今でも彼にしか見えていないのだろう。
それをフルカラーでほんの少し垣間見ることができたように感じた。
宝石、というと磨き上げられて透明感のある輝きを思うが
この本に載っているのは「鉱物」であり
それは思いの外大地のようだ。
大地の欠けら、地球の破片であるのだから
それが空や炎と同じ色をしているのは至極当然のように思える。
ところで
最近鉱物に関する忘れられない短歌に出会った。
なんと、オパールというのは蛋白石とも言い、元々骨やら樹木やら貝殻だったそうだ。
最後に僕が好きな賢治の鉱物の表現を引用しておく。
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